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2023年6月の7件の記事

2023-06-23

はりまや橋と高知県立牧野植物園

高知市中心部の観光名所「播磨屋橋」といえば、昔は「日本三大がっかり名所」という不名誉な枕詞がついていたものだった。
確かに、「えっ! これが有名なはりまや橋?」という粗末……いやごくごく質素なものだった。橋もコンクリートむきだしだったような記憶があるが、よく覚えていない。
それが、来るたびに周辺の整備が少しずつ進んでいるように見える。

はりまや橋

以前は、ちょろちょろと水が流れているのか流れていないのかわからない水路の両側に、建物の裏側がぎっしりと並んでいたこの場所も、すっきりとした。
橋の朱塗りも鮮やかである。大通りをはさんだ反対側も整備され、地元の人にまじって観光客が行き来している。

とさでん交通

高知市といえばこれ、路面電車である。以前は土佐電鉄の軌道線だったが、今ではとさでん交通として存続している。
後免町から伊野まで、単一路線の路面電車としては日本最長である。そして、東京都電6000形を思い出させるこの電車も健在だった。以前の塗装を復元したこの色はとってもいい感じ。

とさでん交通

はりまや橋交差点で信号待ちをしていたら、3車体低床車もやってきた。
賑わっているように見えるが、後免、伊野の末端部では利用者が減っているという話も聞く。末永く活躍してほしいものだ。

高知県立牧野植物園

さて、伊野からJRの特急を奮発して高知駅に戻ると、さらにタクシーを奮発してやってきたのが高知県立牧野植物園である。
現在放映されているNHKの朝ドラ「らんまん」のモデルになっている牧野富太郎博士ゆかりの植物園だ。ここを訪れた2022年5月には、すでに翌年の放映が決まっていて、あちこちにポスターが貼ってあった。
植物好きの妻のたっての希望でやってきたわけだが、広々としていてなかなか興味深い場所であった。今は観光客でごった返していることだろう。
図鑑好きだった小学生時代の私は、「牧野植物図鑑」を書店でよく目にしたものだった。繊細な図柄は、写真よりも植物のことがよくわかった。疑問だったのが、「牧野」が人の名前なのか、それとも「牧場や野原で見る植物」という意味なのか、それとも「小倉百人一首」のようなブランド名なのかということだった。人名だと知ったのは、20歳を過ぎてからのことである。

「たっすいがはいかん!」

植物園は山の上にあるので、歩いて行き来するのは不可能。帰りのバスを待っているときに見かけたのが、この看板だ。
「たっすいがはいかん!」は、キリンビールでも高知だけのキャッチコピーだそうだ。「たっすい」は、弱々しい、あっさりしているという意味の土佐弁だそうで、隣の徳島でも似たような意味で使われているようだ。
人気のキャッチコピーだそうで、どうやら裏の意味としては、アサヒスーパードライのようなあっさりしすぎているビールはダメ! という気持ちが込められているとかいないとか。高知はキリンラガーの売上が日本一だとも聞いた。

トヨタ・パブリカ

そして、高知市の中心部で見かけた懐かしのトヨタ・パブリカ。初日の夕食は、ここの正面にある店でとることにした。

2023-06-20

伊野の町で下車

名越屋沈下橋で1時間ほど滞在した帰りは、高知駅に戻る路線バスに乗車。でも、まっすぐ帰るのは芸がないので、伊野で下車した。
伊野は高知市内から路面電車に乗って何度か訪れたことはあるが、市内をゆっくり歩いたことがなかった。

土讃線

伊野には土讃線の駅があり、町外れには仁淀川を渡る橋がある。当日は連休とあって、河川敷はいろいろな行事で賑やかだったが、わざわざ列車写真を撮っている人はいなかった。半逆光だけど、まあまあ雰囲気のある写真になった。

伊野の町並み

伊野の中心部を歩いていると、そこそこ古い町並みが残っている。この商家は「ひまわり牛乳」の看板がいい。

伊野の町並み

これは白漆喰の立派な蔵造りの商家。前の写真もそうだが、裾部分の正方形のなまこ壁が目立つ。
ほかにも味わい深い家並みをいろいろと見ることができたが、とくに保存対象になっているわけではなさそうなので、いつまで残るのだろうか。

とさでん交通

そして、いつものようにとさでん交通の伊野終点へ。「いの」とひらがなで書かれた方向板は健在。
この駅舎は古そうに見えるが、実は比較的最近になって建て替えられたもの。最初に来たときは、もっと粗末な掘っ建て小屋だった。

JR伊野駅 width=

伊野から路面電車に乗って帰ってもよかったのだが時間がかかる。妻が行きたいところがあるというので土讃線を利用。
ぜいたくに特急に乗車した。もっとも、自由席特急券はたいした値段ではない。
伊野を出ると、次は終点高知駅である。

2023-06-18

高知市内から名越屋沈下橋へ

室戸、安芸、馬路村をめぐったあとは、高知市内で2泊。
いつも高知市というと、昼間の大半の時間は路面電車のとさでん(旧・土佐電鉄)で乗り歩いている時間がほとんどなので、今回は趣向を変えて郊外に沈下橋を見に行くことにした。
高知駅前から路線バスで向かったのは、仁淀川にかかる名越屋(なごや)沈下橋である。
伊野を経由して1時間ほど、高知市中心部から一番行きやすい橋だ。

名越屋沈下橋

沈下橋とは、川面よりあまり高くない位置に橋を架け、欄干をあえて設けていない橋のこと。
増水時には水面下に隠れて、水が引くと元通りになる。欄干がないために水の抵抗が少なく、上流から倒木が流れてきても引っかかりにくい。被害は少なくて済むというわけだ。

名越屋沈下橋

ただ、欄干がないということは、車や自転車で走っていて、ぼんやりしていると川に落ちてしまうことでもるあ。もちろん、歩行者も同じことで、暗くなってから酔っぱらって歩くのはかなり危うい。
道幅も狭く、車のすれ違いができないので、この写真のように反対側の車をやりすごしてから渡ることになる。

名越屋沈下橋

沈下橋は徳島県の吉野川でかなり昔に見たことがあって、あちらでは潜水橋と呼ばれていた。
いつのまにか、高知県では観光資源として有名になっているようで、ここも大勢の観光客で賑わっていた。インスタ映えもするしね。
最後の写真は、かなり歩いて遠景を撮ったもの。ここまで歩いてくる物好きは、ほかにいなかった。

2023-06-14

安田町の酒蔵と町並み

馬路村からの帰りのバスを安田町で途中下車。行きの車窓から、沿道に風格ある町並みが見えていたからだ。
安田町の海岸沿いまでくれば、室戸からのバス便もあるし、山側には土佐くろしお鉄道の駅もある。

安田町の町並み

この右側の道の突き当たりが堤防になっていて、その向こうは海。海沿いの町というわけである。
バスの車内からこの風景を見て驚いた。たまたま1980年にここにやってきて、撮った写真と同じ風景だったからだ。撮影場所もほとんど覚えていなかったが、ひと目でわかった。当時は土佐くろしお鉄道の開通前。森林鉄道の跡を探りにバスでやってきたが、結局何の発見もなく帰るしかなかった。当時は、森林鉄道の情報などまったくなかった時代だったのだ。

南酒造場

この通りには、立派な家が何軒も建ち並んでいた。これは、南酒造の醸造場。
さきほどの建物もそうだが、白壁、水切り瓦、出し桁、板壁が組み合わさって、味わい深い。

南酒造場

工場の正面にある南酒造の店舗。中に入ると、素敵なお姉様がいろいろと丁寧に教えてくれたのだった。
四合瓶2本をはじめ、いろいろ買い込んだ私たちである。これから旅は長いというのに、先が思いやられる。

土佐くろしお鉄道

ここまでは、土佐くろしお鉄道の列車と高知南部交通のバスにお世話になった。それぞれ昼間でも1時間に1本くらいは運行されているので、そこそこ便利に使えるのがうれしい。これは田野駅。

2023-06-13

馬路村のトロッコとインクライン

かつて馬路村に走っていた森林鉄道は、魚梁瀬(やなせ)地区から馬路村中心部を経由して奈半利(なはり)川と安田川沿いに海岸まで木材を運んでいた。

森林鉄道風列車

現在、魚梁瀬地区では当時の車両を復元して走らせているが、残念ながら今回は時間がなくていけなかった。
路線バスは安芸~馬路が4往復あるが、魚梁瀬まで行くのはそのうちの2本。公共交通機関を利用するとなると、現地で宿泊しないとならない。

森林鉄道風列車

その代わりといってはなんだが、馬路地区にも森林鉄道の雰囲気を再現して観光客を乗せている。
機関車からしていかにも遊戯鉄道で、1周500mくらいの短い路線だが、そこそこ周囲はいい雰囲気である。
途中、こんな鉱山のバッテリートロッコのような機関車が保存(?)されていた。

森林鉄道風列車

本当は土曜休日しか運行しないらしくてがっかりしていたが、さすがに大型連休は谷間の平日も運転していた。
われわれはいい大人だけど貸切で乗車。そのあとにやってきた子ども連れを乗せた列車を、沿線から撮影した。

インクライン

もう一つ、ここには興味深い乗り物がある。「インクライン」だ。ケーブルカーというよりも、斜行エレベーターに近い。ダムなんかでは工事用につくられているけれど、実際に客が乗れるのは数少ない。関東地方では宮ヶ瀬ダムのインクラインに乗ったことがある。
ケーブルカーだと2つの車両を釣瓶のようにして上下させるが、エレベーターだとケーブルの一方に車両(かご)が、もう一方に重りをつないで上下させる。

インクライン

ここのインクラインは、なんと水を重りの代わりにしているのがユニークだ。頂上まで行くと水をタンクに積み込んで、その重みで下っていく。で、下に着くと水を抜いて軽くするわけだ。電気をほとんど使わずエコな乗り物である。
もちろん、ブレーキをかけながらゆっくり進むので急坂だけど安全。同行の親子連れ4人も歓声をあげていた。

2023-06-12

森林鉄道の残り香を求めて馬路村へ

多忙で間が開いてしまったけれども、2022年5月の四国旅行の話。
安芸市内に泊まって、翌日は室戸岬に向かおうと思っていたけれども、海岸風景はもう前日に見たので、急遽行き先を山の中の馬路村に変更。
私にとっては森林鉄道の残り香を求める旅に、妻にとってはゆずの香りを求める旅となった。

馬路村へのバス

安芸駅前から1日4往復。小型バス「ポンチョ」で1時間ほどの行程である。
市街地を出るとほかに客はいなくなり、途中の町から途中の村まで乗り合わせた老婦人が同乗しただけだった。

森林鉄道の鉄橋

徐々に道幅も川幅も狭くなっていき、河原に大きな石がごろごろ。車窓を眺めていると、過去の魚梁瀬森林鉄道のものとおぼしき鉄橋が見えた。

馬路村の中心部

ようやく馬路村に到着。川沿いの開けたところに村の中心部があった。村特産のゆずの加工工場もこの一角にある。

馬路橋バス停

ゆず工場を見学して土産物も買い込み、森林鉄道の線路跡があるという案内をあてにぶらぶら歩いていくと、村の入口にある馬路橋に戻った。
高知南部交通のバス停が味わい深い。

森林鉄道跡

そして、馬路橋のたもとには森林鉄道の線路がそのまま残されていた。
ここを小さな運材列車が走っているときに来てみたかった。対岸には観光案内所の建物があって、線路跡を眺めながらコーヒーを飲むことができる。

2023-06-01

安芸市内の渋い町並み

最初の宿泊地の安芸市内にも、水切り瓦のある味わい深い家があちこちに残っていた。
朝の散歩に、裏通りぶらぶら。

安芸市内町並み

商家だろうか、白漆喰が美しいだけでなく水切り瓦がまるで装飾のようについている。よく見ると、裏にも立派な蔵造りの建物がある。

安芸市内町並み

前夜に鰹のたたきを食べた店の近く。夜の賑わいがうそのように静まり返っていた。

安芸市内町並み

この町だけでも限りなく写真を撮ったのだが、きりがないのでこれくらいに。

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著書

  • ローカル鉄道と路線バスでめぐる
    果てしなきイタリア旅 (草思社)
  • 辞書には載っていない⁉ 日本語[ペンネーム](青春出版社)
  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
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