雪残る雑司が谷界隈(3) 雑二ストアー
雑司が谷を散歩するときに、いつも気になるのが「雑二ストアー」である。
「ぞうにストアー」と読む。たぶん。
ちなみに、「ストア」ではない。看板を見るとわかるように、「ストアー」である。
雑司が谷二丁目にある小さな小さなアーケード街だ。
北側は一応弦巻通りに面しているのだが、南側はなんの変哲もない……というよりも、こんな路地になぜ? という場所が入口になっている。

十数年前、雑司が谷に引っ越してきたばかりのときに、この入口を見て深く心に残った。
この写真では、隣の家がなにやら真っ青だが、当時は板壁の家が建ち並ぶ路地に、忽然と現れた異質な商店街……というよりトンネルだった。
そして、その「トンネル」のなかには、何軒もの店がひしめきあっていたのである。

これは、ぜひカメラを持って写しに来なくては! と思っていたのだが、まもなくここが火事になったというニュースが入ってきた。
数日後に訪れたときには周囲がシートで覆われ、まだ焦げ臭さが残っており、もう再建されることはないだろうなと思った。

その後、私自身は駒込に引っ越して、雑司が谷を訪れる機会もほとんどなくなり、雑二ストアーのことはすっかり忘れていた。
たまたま、2、3年後に付近をぶらぶらと歩いていたところ、なんと昔の入口のままに、「雑二ストアー」と書かれた看板がかかっているではないか。

雑二ストアーは復活していたのである。
だが、営業している店はもう数えるほどで、かつての賑わいにはくらべようもなかった。
そして、今年の正月。雑二ストアーは健在であった。
営業していたのは、中央にある八百屋など3軒ほど。
なんとも魅力的な「小沢靴店」という看板もあった(3枚目の写真)が、もう店を閉めたようである。
(おわり)
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