どこか懐かしい町・上諏訪
新宿を発車した中央線の特急が高尾を過ぎると、その車窓は一変する。
奥武蔵の山と渓谷、甲府盆地を見渡すパノラマ、八ヶ岳や甲斐駒ヶ岳が見える雄大な風景、そしてその間に現れる小さな町々。ずっと見ていても飽きない車窓である。
ところが、小淵沢を過ぎて少しすると、突然東京の私鉄沿線のような雑然とした町が現れる。線路脇にぎっしりと立ち並ぶ民家、踏切が開くのを待つ人びと、賑わっているんだか寂れているんだかわからない商店街……。
そんな風景が現れたら、まもなく上諏訪駅である。
どう見たって「信州」のイメージからほど遠い車窓なのだが、以前から、この町にはいたく興味をそそられていた。
もちろん、温泉につかって諏訪湖や諏訪大社を訪ねるのもいいのだが、まずは駅前の商店街や民家をじっくりと見たかったのである。
そんな機会にようやく恵まれたのは6月上旬のこと。小海線沿線での仕事を終えると、高原の山荘に泊まることもせず、わざわざこの町にやってきた私である。もっとも、仕事といっても自腹取材の一人旅。そもそも取材というにもおこがましい旅だから、どこで泊まろうと誰に文句を言われる筋合いもない。

まあ、そんなことで初めて降りた上諏訪駅だが、最初の写真のように駅前がいい。こぢんまりとした駅構内を抜けると、狭苦しい駅前広場には客待ちのタクシーが並ぶ。そして、広場を越えると、これまた主要駅の駅前にしてはやけに狭い道が走っている。
何十年か前にはどこでも見ることのできた「正しい駅前」だ。

駅前通りを歩いていくと、魅力的な商家が次々に目の前に現れる。低層の家が建ち並ぶ商店街には、土蔵造り、看板建築あり、アールデコ調ありと楽しさいっぱいである。
町並みで有名なところとは違って、圧倒的に立派な建物があるわけではないが、まるで時間の止まったような、どこか懐かしい家並みにしばし魅了された私であった。
「降りてよかった」
ちなみに、写真の中でシャッターの閉まった店が多いのは、翌朝早くに写真を撮ったからである。なかには、本当に営業していない店もあるだろうが。
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Takeさん、真さん、こんにちは
和みとか癒しということばはあまり好きじゃないんですが、やっぱりこういう町並みを見るとほっとします。
隣の茅野駅前が今風になっていたのを見て、その違いが際立っていました。もっとも、これで地元の買い物客が集まる工夫はしなければいけないでしょうけど。
トップの写真の高い建物は、駅の裏側(諏訪湖側)にある温泉ホテルやビジネスホテルです。
投稿: 駄菓子 | 2007-06-29 03:28
大河ドラマ『風林火山』の影響で、諏訪にも行ってみたいなぁと思っていました。
地方都市がもっと元気になれば、美しい国が戻って来るのかもしれませんね。
そろそろ廃県置藩の改革したらどう?とか提案したくなります。
投稿: 真 | 2007-06-28 16:16
高さ10mの駅前は、妙に落ち着きます。
その高さを越えてはいけないのではないかと思わされます。
視線を合わせることができる店舗、僕らの子ども頃は小田原でもそうだったんですねれどね・・・。突然できた4階建てのデパートに興味を持ちながらも、それが当たり前の高さになり、あっという間にこじんまりしたビルの谷間のデパートになった日には・・・。
そして東京のモダンな青く光る反射板のガラス。僕ら庶民が入るのを拒むようになったとき、町と僕の間に確実な隙間ができてしまいました。
投稿: Take | 2007-06-28 10:42