白河の町
仕事先でタクシーを呼んでもらい、「白河の駅まで」といったら、運転手は当然、新幹線の新白河まで行くものだと思っていたらしい。
よそから来て、在来線の白河駅まで行く人などいないのだろう。

私は、仕事先で「白河に来たら、ぜひ麺を食べていってください」と言われ、「麺マップ」なるものまでもらっていた。
昼にそばを食べたので、それならと、おやつ代わりにラーメンでも食べようと思い立ったのである。
白河は麺で町起こしをしているようだが、いかんせん列車は1時間に1本だし、クルマで来る人が多いようにも思えない。
たまに来るのは、私のような酔狂な人間だけなのだろう。
城下町だった市街地には、新しい家が建ち並んでいるが、それでも中心地には昔の栄華を偲ばせる建物が数軒ほど残り、食後の散歩を楽しむことができた。
連子格子の美しい木造の町屋、伊豆あたりでよく見かけるようなナマコ壁の土蔵のほか、ちょっとモダンな建物も見かけた。
いかにも静かで寂しげな町であるが、ちょうど小学生や中学生が下校する時刻になったらしく、子どもたちの歓声で町がちょっぴり賑わったのは救いである。

「町の南側にJR東日本の研修施設ができてね、中には本物の電車まで走っているそうですよ」とは、タクシーの運転手の話。
「東京からも青森からも、研修の人たちが大勢集まって、夕方の新白河駅はピッカピカの新人さんたちで大賑わいですよ」
「へえ、さぞかし町もうるおっているんでしょうね」
「いやいや、食事も施設の中にあるし、研修が終わるとJRのバスでまっすぐ駅に横付けするからね。まあ、たまに長期研修のベテランが金曜日の夜に飲みに出るくらいかな」
「ふうん」
数十分の散歩を終え、私は在来線で新白河駅に向かった。新幹線との待ち合わせの時間を利用して駅前に出たのだが、寒さとあまりの殺風景さに、散歩しようという気は起きなかった。
そして、たしかにJRのバスが次々にやってきた。ちょっと見ただけでも何百人もいただろうか。真っ黒なスーツの上に真っ黒なコートを着込んだ研修中の若者たちは、そのまま駅に吸い込まれていくのであった。
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