京阪の石山坂本線は、鉄道事業法ではなく軌道法に拠っている路線で、早い話が路面電車と同じ扱いである。だから、走っている車両も小型の2両編成で、一般の鉄道では見ないような急カーブが連続している。
関東でたとえると江ノ電に似ているが、江ノ電は戦後に軌道から普通鉄道に扱いが変更になっている。

坂本から京阪石山坂本線に乗って下車したのは三井寺駅。
上の写真のように、ここまでは専用軌道を走っていたが、ここからしばらくは路面電車のように道路との併用軌道となる。
この境目がなんとも言えない。
最初は三井寺まで行こうと思ったが、駅からの距離と連続する上り坂を目の前にして断念。
延暦寺で寺は満腹気味だったので、三井寺は次回への宿題とした。

三井寺駅近くのもう一つの観光スポットといえば、この琵琶湖疎水である。
琵琶湖の水を京都市内に引き込んでいるわけで、つい最近この疎水の様々な箇所が国宝や重要文化財に指定された。
観光船で京都市内まで行けるそうなので、ぜひ機会を見つけて乗ってみたい。
……と思って帰ってきてから価格表を見てビックリ。なんと片道1人1万2000円である。
それでも、国宝・重要文化財になったことで客は集まるんだろうなあ。

三井寺駅まで戻るのもつまらないので、びわ湖浜大津駅まで1駅分を歩くことにした。
大津市は琵琶湖の南岸から西岸にかけて細長い市域だが、伝統的な中心部はJR大津駅ではなくて、この石山坂本線が走る浜大津あたりだ。
そこで、行き当たりばったりで古い町並みがありそうな道を選んで歩くことにした。
上の写真は、趣深い商家の3連続。中央は豆屋だった。

三井寺駅から7、8分ほど歩いたところで行きあたったのが、アーケードの長等(ながら)商店街。
上の写真では、アーケードを突っ切った先に、寺の門が見えるというなかなか珍しい風景である。

さらにぶらぶら歩いたところで目に入ったのが、この由緒ありげな立派な店構え。
「元祖 阪本屋鮒寿司」という看板が出ている。そうそう、琵琶湖といえば鮒ずしである。
迷わず突入を決意した。

ご存じ鮒ずしは熟鮨(なれずし)の一種で、琵琶湖で獲れたニゴロブナを何年もかけて発酵させた食品である。
くせがあるのがたまらないが、これはダメという人も多い。店によって味に特徴があるそうで、それは発酵に利用されている菌が違うからだそうだ。
「地元の人でも鮒ずしは食べられない人が多いんですよ」とご主人。
「私は東京生まれなんですが納豆は苦手で、でも鮒ずしは好きなんです」とつまらないことを言ってしまった。
「ご自由に撮ってください」というご店主のお言葉に甘えて、店内をパーチパチ撮った。

自宅用ということで、卵の入っていないお手軽な値段の鮒ずし2000円也を購入した。
これだけあれば、日本酒が1升飲める。もちろん一度に飲むわけではないが……。
それにしても、最近は昔ほどニゴロブナが獲れないと聞いたことがあるが、その割にはまずまず手頃なお値段だった。
鮒ずしが苦手な人のためには、甘露煮なんかも売っていた。

ぶらぶら歩いているうちに方向感覚が失われてしまった。
線路が見えたから石山阪本線かと思ったら、京都の地下鉄線からはるばるやってくる京津(けいしん)線だった。
こちらも軌道法による路線だが車両は大きく、4両編成が路面を轟音をあげて走っていく様子はわくわくする。
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