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2023-10-30

ボルツァーノの賑わい(上)

ボルツァーノを県都とするボルツァーノ自治県は、ドイツ語では南チロル、イタリア語ではアルトアディジェ(アディジェ川上流の意味)と呼ばれている。
その昔チロル伯が治めていたチロル伯領は、現在のオーストリアとイタリアにまたがる地域であり、その後ハプスブルグ家の支配下に入り、さらにオーストリア領となった。
第一次世界大戦後、オーストリアとの戦いでイタリアはトレンティーノを含む南チロルを領土とした。だが、トレンティーノが以前からイタリア系の住民が大半を占めている一方で、アルトアディジェにはドイツ語を話すドイツ系の人びとがほとんどだったことから、のちのちまで禍根を残すことになる。

ボルツァーノ駅

その後の経緯を書くと膨大な分量になるので省略するが、興味のある方はぜひ調べていただきたい。
イタリア支配に不満をもつ人びとによって、1970年代までは爆弾事件もあったりして不穏な状況が続いたが、紆余曲折を経てボルツァーノ県に大幅な自治が認められた。
現在では、トレンティーノ-アルトアディジェの州として機能は有名無実となり、トレンティーノ自治県とボルツァーノ自治県それぞれが行政を行っている。

ワルター広場

ボルツァーノ自治県ではドイツ語を母語とする人が現在7割を占めており、イタリアにありながらドイツ語も公用語になっている。
だから、1枚目の写真のように、駅名もなにもかも二言語併記となっている。

上の写真は町の中心部にあるヴァルター広場とボルツァーノのドゥオーモ(大聖堂)。広場の名前は中世ドイツの詩人にちなんでおり、広場の中央にはその銅像も立っている。

考古学博物館

ボルツァーノに午後に到着して、まず訪れたのは県立考古学博物館である。ここには、1991年にアルプスの氷の中でミイラ状態で見つかった「アイスマン」をガラス越しに見ることができる。「エツィ」の愛称を持つ彼は、5300年前にこのあたりに住んでいた人間だということは、当時日本でもメディアで紹介された。
閉館時間に近かったので、幸いなことに待ち時間もなく入ることができた。エツィのミイラは撮影禁止だが、この復元像は撮影できる。

ボルツァーノ旧市街

前回のボルツァーノ訪問当時は日本語による情報もほとんどなく、町をぶらぶらして近郊のメラーノとヴィピテーノ、カルダーロを訪れるだけで終わってしまったが、今回はきちんと下調べをしての訪問だ。

ボルツァーノ旧市街

それにしても、どこかうら寂しい雰囲気のあった15年前とは大違い。週末にかかっていたこともあり、市内は観光客で大賑わいだった。
その観光客のほとんどがドイツ系の人たち。町にはドイツ語があふれていた。

ボルツァーノ旧市街

実は15年前に訪れたときは、バールに入るのも道を聞くのも、ちょっと気が引けていた。ドイツ語はほとんどわからないし、南チロルの歴史を多少でも知ってしまうと、軟弱なアジア人観光客がイタリア語で話しかけたら嫌な顔をされるのではないかと危惧したからである。なにしろ、相手は体格のいいゲルマン民族だ。けんかをしたら勝ち目はない……かも。

フランチェスコ会修道院

もちろんそんな心配は杞憂に終わったのだが、それでもあとになって調べてみると、ボルツァーノで見そびれたり、周辺の町で行きそびれたところが山ほどあることを知り、今回は満を持して3泊4日で訪ねることにしたのである。
ドロミーティ山塊にも行きたかったのだが、今回の旅にはイタリアの各地をまわってアフターコロナの様子を探るという使命もあったので、ボルツァーノだけで時間をとるわけにはいかない。ドロミーティ方面は、また次回以降への宿題である。

ドメニコ会教会

最後の写真は、ドメニコ会教会のサンジョバンニ礼拝堂。立派な外観のドゥオーモに気をとられていて、こんな素敵なフレスコのある教会がその近くにあることを危うく見逃すところだった。外観があまりにもシンプルすぎる教会なので、内部がこうなっているとは気がつかない。

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