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2021-10-02

ニコジーアの丘上の出会い

2017年9月の旅の続き。
ニコジーア到着の翌日は、朝から狭い町をぶらぶら。
やはり、煙となんとかは高いところに登りたがるので、旧市街を経由して丘のてっぺんにある城砦跡へ。

ニコジーアの丘上

町の雰囲気を見る限り、丘の斜面にあるのが旧市街のようである。
いつのもイタリア町めぐりのように、ひらすら急坂を登る私たちであった。
坂の途中にはネコがいたり、こんなフィアット500も生息している。

ニコジーアの丘上で見たフィアット500

城砦からは町が一望できる。下の写真は、そこよりも少しくだったところで、こちらのほうが写真としては見栄えがする。
城砦はほとんどが崩れていて、ところどころに残る岩に往事の面影を残すのみである。
写真を撮っていたら、同じ宿に泊まっていたブラジル人男性2人とばったり。
「そりゃ、行くところは限られるから会うよね」

ニコジーアの丘上から見た中心部

そういえば、B&Bの兄さんがこんなことを言っていた。
「きょうは、あなたたち日本人のほか、ブラジル人、ドイツ人、オーストラリア人が泊まっているんだよ。なんてインターナショナルなんだ!」
観光地でもないシチリア内陸の田舎町では、画期的なことなのかもしれない。
ちなみに、私たち2人は、B&B開業以来はじめての日本人宿泊客なのだそうだ。

ニコジーアの丘上

城砦で写真を撮っているうちに、一天にわかにかき曇り、ぽつぽつと雨が降ってきた。
こりゃ大変だと、急坂を転がるように下り、バールに雨宿りをしたとたん土砂降りになった。
上の写真は、翌日の訪問で撮ったので晴れている。
道の左側にバールがあり、右のテラス席からは素晴らしい眺めが楽しめる。
奥に見える建造物は、「フェデリーコ2世の時計塔」と呼ばれているが、どこまでフェデリーコ2世と関係があるかは不明である。

ニコジーアの丘上のバール

時刻は11時過ぎだったが、5、6人いた客はみな当たり前のようにビールを飲んでいた。
顔見知りのメンバーがのんびりしているところに、いきなり東洋人の夫婦が飛び込んできてイタリア語でなにやら話すのだから、大いに興味をもたれて大歓迎された。
写真中央がマスターで、ちょっと英国のチャールズ皇太子に似ている。

ニコジーアの丘上のバール

客のおじさんの説明によると、カヴァリエーレ(騎士)の末裔なのだそうで、正装で撮った写真がバールの片隅に飾られていた。
「馬(カヴァッロ)を持っていないカヴァリエーレだよ」とおじさんは笑っていた。
さきの写真の3人のうち、左の男性は郵便配達中の郵便局職員。さすがに勤務中なのでビールは飲んでいなかった。
右端の男性は「象さん」と呼ばれていて、近くにある教会の鍵を持っているとのこと。

ニコジーアの教会

「もう時間が過ぎて閉めちゃったけれど、見ていかない?」
「喜んで!」
ということで、見せてくれたのがこの教会である。鄙には稀なといっては失礼だが、実に見事な内陣である。
柱にも美しい装飾がほどこしてあるのが珍しい。修復されて間がないのか、天井画もすばらしかった。

ニコジーアの教会

昼間からビールを飲んでご機嫌なわれわれ。
テラスに戻ると、また別のおじさんに「夕食はもう決めている?」と聞かれた。
「いや、まだ」と答えると、
「じゃあ、おれの親戚の店に行くといい。予約しておこうか?」
「お願いしま~す!」
さらには、アランチーノがおいしい店まで紹介してくれた。

ニコジーアのネコ

「いやあ、きょうの昼は楽しい出会いだったね」
その日の夜、予約してもらったレストランでそんなことを話していたときに、ふと思い出した。
「ビール代、払ってない!」

その翌日は午後に出発なので、午前中にまた丘の上までえっちらおっちら登って、バールを再訪した。
カウンターにいたお姉さんに、「きのうの御勘定を払うの忘れた」というと、
「いいのよ、あれはおごり。またビール飲んでいく?」
「喜んで!」
その日もテラス席でわいわいいいながら記念写真を撮り、またもや代金を受け取ってもらえずに帰って来た私たちであった。
コロナ禍でみんなどうしていただろう。元気でいるだろうか。

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

それはよいことだと思います。
私も入場料無料の教会では、よくお布施(これも適切かどうか 笑)をしてきます。

ちょうど20年前にシチリア旅をしたとき、修復されずに傷んだままの教会にいくつも遭遇して、ささやかながらもお賽銭(適切な言葉でしょうか?)を投じていたたのを思い出しました。

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  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
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