静かな柴又帝釈天参道と「ママの店」のこと
新型コロナのおかげで、海外旅行どころか国内ものんびり旅ができない今日このごろ。仕事の進行と空模様と相談しつつ、都内をぶらぶらとめぐっている。
先日は、やぼ用で葛飾区役所に行ったついでに、久しぶりに柴又帝釈天を訪ねてみた。
この偽芸術的写真は、いまから約四半世紀前に撮ったものである。
モノクロフィルムを使っていた最後の時期だ。
デジタル写真を安直にモノクロ化したのとは、やはり違う。
それにてしも、いくら平日とはいえ、普段なら観光客で混雑している境内も参道も閑散としている。
寅さん映画がはじまる以前は、新年や庚申の日を除いて平日は人も少なかったが、ここまで人がいない帝釈天ははじめてである。
参道の店も半分以上が閉まっている。
どうやら開いているらしい「川千屋」を撮ろうと構えたら、いい感じに自転車がファインダーを横切っていったのでパチリ。
実は、この柴又帝釈天参道は、2018年に国の重要文化的景観に指定された。
景観の維持には、地元の人たちの並々ならぬ努力があるそうな。
おかげで、私が子どものころに見た風景と同じ……いや電線もなくなっているので、昔よりも味わい深い風景として残されているわけだ。
この写真の左奥にあるのが有名な団子屋「高木屋本舗」。向かいの店舗が茶店というか喫茶室になっていて団子が食べられるのだが、コロナの影響で閉まっていた。せめて土産として買っていきたかったが、当日はそのあとに行くところがあったので断念した。
さて、その「高木屋本舗」の向こうに車が見えるが、そこが柴又街道である。
金町と小岩を結ぶ道で、さらに南へ行徳方面に向かっている。交通量も多く、バスも頻繁に走っている道だ。
ところが、この付近では片側一車線しかないため、昔からとくに朝夕の混雑がひどい。
そうした道路混雑を解消するために、この柴又街道を拡幅する計画が東京都から出てきたという。もし実施されるとなると、参道と交差する部分で、古い建物の取り壊しが避けられない。
たとえば、この写真の「だるまや」も引っかかってくるだろう。
反対の声が多いと聞くが、はたしてどうなることやら。
梅雨間近なじめじめした空気のなか、柴又駅からぶらぶらと、昔住んでいた高砂に向かった。
高砂駅に向かう道の途中で見かけたのが、この廃墟のような建物。看板を見ると、「ママの店」と書かれているではないか。
半世紀前の記憶が、突如として脳の無意識の領域からよみがえってきた。
母がこの店名をよく口にしていたっけ。家からは歩いて15分ほどかかったが、当時は近所にスーパーもなかったので、ここまで買い物に来ていたものだった。もちろん私も、営業していた当時の賑やかな様子を覚えている。
子どものころから何度か引っ越しをしているが、昔住んでいた町の近くを歩いていると、こうした瞬間がときどき訪れるのである。
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