コインブラ大学の塔での興味深い体験
昨年秋に訪れたポルトガルの旅をもう少し。
コインブラは1泊だけだったが、そろそろ疲れがたまってきたので、朝はゆっくりすることにした。
ホテルのチェックアウトは12時というのはときにあるのだが、なんとこここでは朝食が7時から12時!
「12時といったら、もう昼飯じゃないか。さすがに客はほとんどいないだろう。メシも残っているかどうか……」
ところがビックリ。朝食会場は多くの人で賑わっていて、パンもおかずもたっぷり残っていた。
中級レベルのホテルなのだが、何種類も用意されていたパンはうまいし、ポルトガル名物のナタ(エッグタルト)もしっかりと用意されていて感激。
あなどりがたしポルトガル! である。
チェックアウトをしてホテルに荷物を預け、予約した列車が出る3時ごろまで、コインブラの町を散策することにした。
まずは、丘上都市の遠景を拝んだのち、その丘に登っていく。
大学は丘の頂上周辺にある。
そこに行くには徒歩やミニバスでもいいが、あえてぐるりと町を半周してエレベーターと斜行エレベーターで登頂。
世界遺産のコインブラ大学については、私がここで書くこともないのだが、外装はもちろん内部の至るところに大航海時代の富のすごさを見せつけるような華やかさであった。
よく知られているのは、門を入ったところにある、塔を従えた下の写真の建物であるが、よくよく見ると壁に「法学部」と記されている。
大学の建物は門の外にも数多くあったが、「文学部」「医学部」などと書かれた建物は、直方体の機能的なもの。やはり、法学部は別格なのだろうか。
豪華絢爛な図書館は予約が必要だという。入場券売り場では16時に来いといわれたのだが、それではポルト行きの列車に間に合わない。
やむなく、それは次回への宿題として(はたして再訪はあるのだろうか?)、せめてもの記念にと塔に登ることにした。
この写真にもちらりと写っているように、塔の下は7、8人が順番待ちをしている。
どうやら、内部が狭いために限られた人数しか入れないようで、担当の若い男性がトランシーバーで交信している。相手は塔の上にいる人らしい。
要するに、何人かが降りてくると、入れ代わりに何人かが登っていくというシステムのようである。
エレベーターはなく、すれ違いができない狭い階段があるだけなのだとわかった。
ここで仕切りをしているお兄さんもコインブラ大学の学生アルバイトなのだろうか。
客に合わせて、ポルトガル語、英語、フランス語、スペイン語を見事に使い分けている。
そこまでできるならイタリア語も話せるんだろうと英語で聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「スペイン語はポルトガル語に近いけど、イタリア語はだいぶ違うから難しい。むしろフランス語に近いですね」
ふーん、地元の人にとってはそんな印象なのかなと、いま一つ納得がいかないうちに、いよいよ順番がまわってきて、さあ登ろうとしたときのことである。いきなり、彼が私に向き直ってこう尋ねてくるではないか。
「You are not a ××?」
××がわからなくて聞き直したのだが、どうも聞き慣れない単語である。
聞き取れたのは、「……フォビア」という語尾だけであった。
そこで、私の疲れ切っていた脳ミソが久しぶりにフル回転した。
「確か、フォビアが語尾につくのは何かの精神的な症状を示すことばだったよな。しかも、塔が狭くて高いことを考えると、これは高所恐怖症か閉所恐怖症ではないかを尋ねているに違いない。だったら、病人でないことを宣言しなければ、30分近い待ち時間が水の泡だ」
私はにっこり微笑んで「ノー」と答えた。
それにしても、いざ登ろうというときに、わざわざそんなことを聞くのも不思議なものである。
否定疑問文につられて、うっかり「イエス」と答えたらどうなっただろうか。
もしかして、過去に神経症の人がいて、塔の中で問題を起こしたのだろうか。
今後は、よくある病名や症状くらいは、英語で言えるようにしておこうと思った体験であった。
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これまではずいぶん近いと思っていたのですが、今回行ってみてだいぶボキャボラリーや発音が違うなと感じました。
スペイン語とは近いのですが、イタリア語からはかなり離れているイメージです。
といっても、文法はほぼ同じなので、少し勉強すればわかりそうですが。
投稿: 駄菓子 | 2019-03-02 16:55
リスボンのアパレル店で妻がイタリア語で質問したところ、「分からない、ごめんなさい」という反応であったことを思い出します。
イタリア語とスペイン語はかなり近い感がありますが、ポルトガル語となると距離感があるのでしょうか。
投稿: nebbiolo | 2019-01-15 11:01