セビーリャからウエルバへの鉄路今昔
いよいよ、旅のメインイベントの1つ、スペインからポルトガルへのちょっと変わった国境越えである。
この日の目的地は、ボルトガル南部にあるファロ(Faro)の町。
現在は、セビーリャからの直行バスが、日に何本か所要2時間半で走っているのだが、それじゃおもしろくない。
1981年に利用したコースをたどっていくことにした。
まずは、セビーリャ・サンタ・フスタ駅を10時に発車するウエルバ(Huelva)行きに乗車。
ウエルバまでは1時間半の旅である。
この区間は1日に3本しか走っていないので(ほかにマドリード発ウエルバ行きが2本あるようだ)、満員になったら大変と、日本にいるうちからネットで予約しておいた。
だが、乗ってみたら車内はがらがら。6両ほどの編成の各車両に2、3人ずつが乗っているだけだった。
また、AVE(高速列車)と違って、乗車前の荷物検査もない。
気抜けして、車窓のアンダルシアの風景をぼんやり見つめる私であった。
もちろん、下の写真は、1981年に乗ったときのものである。
1981年当時は、おんぼろなレールバスのような車両で、2倍くらいの時間がかかったように思う。
列車は速くなったしエアコンが効いて快適ではあるのだが、あの、行けども行けども続く乾いた大地を眺めながら、暑苦しい車内で過ごしたけだるい時間が懐かしい。
実は、終点のウエルバ駅は、つい最近になって新装オープンしたばかり。
500mほどセビーリャ寄りに移転して開業したことを、日本出発直前に知った。1日に5本くらいしか発着しないのに、ずいぶんな投資である。
しかも、町の中心から離れてしまったので、列車を降りた乗客の何人かは、がらんとしたタクシー乗り場で茫然とする始末。
バスターミナルへは歩いて30分近くかかるので、重い荷物を抱えた私たちはひたすら待つしかなかった。
上の写真が、1981年当時のウエルバ駅。
手前のホームに停まっているのは、スペインが誇る高速客車「タルゴ」。
マドリード方面からやってきたのだろう。自動で軌間変換する機能がついている車両なので、もしかするとさらにフランスに乗り入れていたのかもしれない。
当時はずいぶんな利用客がいたんだなあと感慨深い。
そのときは、ここからさらに西にあるポルトガル国境のアヤモンテまで、ローカル線に乗り換えて向かった。
だが、その路線はすでに廃止されている。
だから、ここでバスに乗り換えなくてはならないのである。
ウエルバ駅から乗ったタクシーの運転手に、「バスターミナルまで。その途中で、ウエルバの旧駅を見たい」と伝えて、昔撮った写真を見せると、「おお、この駅は6カ月前まで使われていたんだよ!」と興味を示してくれた。
1981年は、駅の構内で乗り換えただけなので、こんな立派な駅舎だとは思わなかった。
ただし、もう営業をやめているので、カギがかかって入れない。しかも、周囲は2メートルほどのコンクリートの瓶がめぐらしてある。
ぐるりと駅の横にまわり込むと、足場代わりになりそうな50センチほどの鉄の棒が立てかけてあるのを見つけた。
周囲には人もいないし、これは決行するしかない!
助走をつけてその棒に足を乗せ、その勢いで塀の上に手をかけ、懸命にふんばって塀の上に登ることができた。
そうして撮ったのが、上の写真である。昔の写真とは、高さこそ違うが、近いアングルである。
「思い出の写真は撮れた?」
駅前で待っていてくれた運転手が、にこやかに迎えてくれた。
アヤモンテ行きのバスは13時発。
しばらく、バスターミナル前の軽食堂で、腹ごしらえをして待つことにした。
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