中国山地ローカル線乗り歩き 木次線(2) 木次~出雲横田
木次駅を出ると、乗客は10人以下に減っていた。
車窓はといえば、次の日登(ひのぼり)駅を発車すると、一転して山の中の風景に変わっていく。
私は、空いた先頭の座席に移って、子どものように前方を眺めていたのである。
トンネルを抜けたと思うとまたトンネル、そして橋、またトンネルの連続。
とうとう我慢できなくて、気に入った風景が前方に出現すると、恥をしのんで立ち上がって前方のガラスにかぶりつき、写真を撮ることにしたのである。
こんなとき、キハ120のようなワンマン仕様の車両は都合がいい。
運転台が片隅にあるので、運転台のない側に立てば、運転の邪魔になることなく前方の景色が、まるまる見えるのである。
上の写真は下久野駅。
ここから次の出雲八代までは、沿線に家屋もなく、並行する道路もなく、まさに深山幽谷を突っ切っていく。
見渡す限りの緑色の世界であった。
そして、そろそろ山の中の風景に飽きてきた12時31分、出雲三成(いずもみなり)駅に到着した。
ここは、上下の列車がすれ違いできる駅で、久しぶりに町らしき町を目にしたという印象である。
出雲三成駅で1988年に列車の窓から撮ったのが、この写真。ほぼ同じアングルのはずである。
上下の急行「ちどり」が交換する場面で、乗っていた広島行きが停車しているところに、松江方面行きの列車が入ってきたところ。向こう側のホームには、タブレットを持った駅長か助役が立っている。
いかにも味わいのある国鉄駅だったが、現在ではその上の写真のようにホームも短くなり、やけにさっぱりしてしまった印象である。
出雲三成駅の次が、この亀嵩(かめだけ)駅。
松本清張の小説『砂の器』では、重要な舞台となる駅だ。
私は、丹波哲郎、加藤剛、緒方拳、森田健作らが出演した映画を見ただけだが、やはり亀嵩駅は深く印象に残っている。
亀嵩駅では、ベレー帽をかぶった中年の男性が下車していった。
地元の人なのか、それとも『砂の器』の聖地めぐりをしている人なのか。
さきほどの日登駅では、60代くらいの夫婦が、地元の知り合いらしき人に出迎えられて降りている。
残りは5人ほどになった。
いったん人里に降りてきたと思われた線路だが、亀嵩駅を出ると再び深山幽谷となった。
しかも、線路の正面に山が立ちふさがり、その下をトンネルで抜けるという風景が何回か続いた。
そして、不思議なことに、トンネルの入口付近には、この写真のように白い煙のようなものが充満しているのである。
温かい水でも湧いているのか、あるいは木々のフィトンチッドが低い場所にたまっているのか。
いずれにしても、トンネルの入口だけに充満しているのが不思議だった。
周囲の景色もおどろおどろしく、妖怪の仕業のようにも思えてきた。
そして、12時51分に出雲横田駅に到着。
ここはかなり規模の大きな町であり、駅も立派である。
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