冬の磐越東線の車窓
立春が過ぎて、ほんの少しだけ春が近づいてきたと思われる今日このごろ。
忘れないうちに、冬の復習をしたい。
まずは、仕事帰りに磐越東線に乗ったときの話から。
磐越東線の東端にあたるいわきに泊まり、郡山行きに乗車したのは1月13日のこと。
現在、郡山まで全線直通する列車は1日5本しかない。8時41分の列車を逃すと、次は13時13分になってしまう。
もっとも、郡山に行くだけならば高速バスが走っているので問題はないのだが、高速道路や国道から離れて走る磐越東線の車窓が楽しみなのだ。
3つ目の小川郷を出ると、江田、川前と、駅の近くにまばらに人家があるだけで、あとは夏井川の美しい渓谷美が延々と続いていく。
江田駅の近くには背戸峨廊(せとがろう)という見事な渓谷があることを、今から40年以上も前に「秘境の旅」をつづった本で知った。
ずっと行ってみたいと思っているのだが、まだ実現していない。最近は訪れる人も少ないのか、駅前の商店もやっていないようだった。
夏井駅には9時18分ごろに到着。対向列車と交換のために2、3分停車したのちに発車。
ぼんやりと窓の外を眺めていると、冬枯れの景色のなかに大きな木が目に入った。
そのそばを、犬の散歩をしている老婦人が通りすぎていった。
それにしても、かつてはここに蒸気機関車D60が牽引する客車が走っていたのだ。
雑誌では見たことがあるけれど、実際に自分の目で見てみたかった。
同じ鉄路を、今は2両編成のキハ110が走る。この車両は、おとなしい外観にシックな塗装が特徴。
なによりも、走りが軽快なのが気にいっている。
次の小野新町(おのにいまち)から郡山までは、比較的人口の多い町を走るので、1日に14本と約3倍の本数となる。
さらに、船引からはかなりの客が乗り込み、車内は超満員となった。
休日だというのに高校生くらいの乗客が多く、しかもみんな私服。
なにがあるのかと思っていたら、彼らの会話が耳に入ってきてわかった。
センター試験の日だったのだ。
選択する科目数によっては、午後からの試験となるようだ。はるか昔となった受験生時代を思い出して、思わず激励してあげたくなった。
そして、郡山には10時20分着。所要時間は約1時間40分だから、意外に早いという印象だ。
離れたホームには、会津若松からやってきた電車が、正面と床下にどっさりと雪を抱えて停まっていた。
その電車に乗りたい衝動をなんとか抑えて、駅の改札を出た。
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