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2017-08-07

廃線跡かと思っていたレールの上を……

朝の歩行者天国をぶらぶら散歩して、そろそろホテルに戻ろうとしたときのことである。
背後からかなり大きな警笛が聞こえてきた。
トラックやバスのクラクションにしては少し大きいし、なにより歩行者天国なのでそんな車が来るわけがない。

 

振り返ってみると、なんと道端を大きな列車がのろのろと進んでくるではないか。
これで前日からの疑問が氷解した。
廃線跡のレールだと思っていたのは、現役の鉄道線路だったのだ。

 

大通りの併用軌道を走るディーゼルカー

 

架線がないからディーゼルカーだということはわかるが、意外に新しい外観である。
なにより感動したのは、こんな大通りを路面電車ではない立派な鉄道車両が3両編成で走っていることである。

 

地元のインドネシア人にも珍しいのか、トップの写真の右側に見えるように、スマホで列車をバックに自撮りしている女性もいた。
2枚目は去っていく列車を後追いで撮ったものである。
写真の左にちらりと見える銅像は、独立戦争の英雄であり、23歳で亡くなったソロ出身のスラメット・リヤディ……という人であることを後で知った。

 

大通りの併用軌道を走るディーゼルカー

 

前日にはこの列車を見かけなかったので、日曜だけの運転なのかなと思って、ホテルのフロントの女性に聞いてみると、毎日2往復だか3往復だか走っているという。
ということは、平日の車とバイクの洪水のなかでも、同じように走っているというわけだ。
これにはちょっとビックリ。

 

だが、驚きはこれでは終わらなかった。
興奮と感激のうちにホテルのチェックアウトを終え、ロビーで一息ついていたときである。
ホテルの外から、再び警笛とも汽笛ともつかない大きな音が聞こえてきた。

 

「あれ、こんなに早く次の列車が来るのだろうか……」
そう思いつつも、カメラを手に持ってホテルを勢いよく飛び出した。
あまりに真剣な表情だったのだろう、ドアボーイのお兄さんが微笑みながら見送ってくれる。

 

ジャラダラ列車のお通り!

 

すると、なんと目の前を蒸気機関車が通り抜けていくではないか。
9時を過ぎて歩行者天国はすでに終わっていたので、行き交う車とバイクをかきわけて車道を横切り、脱兎のごとく列車を追いかけた。
血相を変えて車道を斜めに走っていく東アジア人を見て、車を運転していたインドネシア人たちは、なにごとかと思ったに違いない。

 

列車は安全を確認しながらのろのろと走るのだが、それでも人間が走るよりは速い。
斜め後ろ45度から撮影するのが精一杯であった。

 

1Cタンク型の蒸気機関車

 

あとで調べたところによると、この路線はソロ・パラパン駅隣の本線上にあるプルウォサリ駅から分岐して市内の併用軌道を走り、ソロの中心部近くにあるソロ・コタ駅を経由して郊外のウォノギリまで伸びるもので、休日はたまに貸し切りで蒸気列車が走るらしい。

 

機関車は、先台車が1軸、動輪が3軸の1C型タンク機関車。ナンバープレートには、C1218と記されていた。戦前に日本式の表記を取り入れたのかもしれない。

 

蒸気列車の最後尾

 

それにしても、普段から線路の上では数多の屋台が店を開いているのだから、列車が通るたびに大騒ぎで移動しているのだろう。そんな様子も見たかったが、めったに走らない特別列車を撮影できただけでも幸運だと喜ぼう。

 

次の写真は、道の上にある標識に注目。

 

「列車に注意」の看板

 

「Hati-Hati Kereta Api」と書かれている。「Hati」(ハティ)とは「心」のこと。「Hati Hati」と2つ並ぶと「注意」という意味になるそうだ。
「Kerata Api」(クレタ・アピ)は、インドネシアの車内放送で何度も耳にした。
「Kereta」は「車、車両」、「Api」は「火」。つまり、中国語の「火車」みたいな表現だ。日本語の「汽車」に当たる。現在では、一般に列車の意味で使われているようだ。
この看板にもっと早く気がついていたら、この線路が現役のものだとわかっただろうに。

 

サトウキビ運搬に活躍したコッペル

 

ところで、インドネシア人にはずいぶん鉄道好きが多いようで、駅では列車の撮影をしている人を見かけたし、町なかにも車両が保存されているのをよく見た。
この写真は、前夜ソロの市内を散歩したときに見かけた小型の保存蒸気機関車である。
広々とした構内のこの会社は、インドネシアのプランテーションの会社らしく、この機関車はおそらく製糖工場のサトウキビ運搬に使われたのだろう。

 

ナンバープレートの代わりに「BALETOERI」という名前(?)があったので、それを頼りにネットで調べてみたところ、どうやらドイツのコッペル社製の車両のようだ。
日本でも、土木工事によく使われた蒸気機関車である。そう思ってみると、煙突の形がコッペルっぽい。

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コメント

そうなんですよね。レールの上をしょっちゅう車が走っていくから、廃線であってもあまり錆が出ないんですよね。
そもそも、こんなおとぎの鉄道のような風景が残っているなんて、想像もしてしなかったもので。

専用軌道ならレールの錆具合で廃線かどうか区別がつきますが、併用軌道の場合は判別が難しいですね。

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  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
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  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
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