スラバヤでの怒濤の一夜
スラバヤの中央駅であるスラバヤ・グベン駅は、東側がローカル線、西側が長距離優等列車が発着するホームになっている。
ガイドブックによると、インドネシア国鉄では、大きくて重い荷物をもった乗客がスリや置き引きにあわないように、停車駅や出口を分けて保護してくれているのだそうだ。
その配慮はありがたいが、おかげでクラシックな駅舎の東口を撮影する時間がなくなってしまったのは残念である。
スラバヤについたのはもう夕方。東口からホテルまでは、荷物がなければ歩いていける距離だが、西口からだと大回りになるのでタクシーに乗って、できたばかりの近代的なホテルにたどり着いた。
翌日は朝9時15分の列車に乗らなくてはならないので、町をゆっくり見物する時間がないのがこれまた残念である。
それでも、ネットでおいしいという評判の鶏肉料理店を目指し、都心ではない方角に向かって夜のスラバヤに繰り出した。
大通りは、車とバイクが途切れることなく走り抜け、その音と排気ガスでくらくらしてくる。
「脇道を通って行こう。ちょっとした商店街があるようだし」
私の提案にしたがって脇道に入ってしばらく歩いたところで、一天にわかにかき曇り、音を立てて大粒の雨が降ってきた。
「しまった~! 油断して傘を持ってこなかった……」
だが、後の祭り、先のフェスタである。
たまたま大きな中華料理店があったので、その軒先でしばらく雨宿りをすることにした。
散歩時間を30分も無駄にしてしまったが、ほぼ雨がやんだところで行軍を再開。
「その角を左に曲がれば、賑やかな商店街があるはずだけど……」
確かに商店街らしきものはあった。
だが、日本のそれとはだいぶ趣が違って、なにより街灯が少なくて薄暗い。
歩道らしきところには店が張り出していて歩けないから、車道を歩くしかないが、車道の道幅はせいぜい3mほど。
一応舗装はされているが、ひび割れと穴ぼこだらけなので、さきほどのにわか雨であちこに水たまりができている。
しかも、そこをバイクと車がひっきりなしにガーガー通り抜けていくものだから、あれこれと注意を払わなくてはならず、緊張状態の連続。
写真にするとすっきりと見えるが、いやはや大変な道中だった。
30分ほど歩いてようやく広い道に出たと思ったら、やはり歩道があちこちで崩れていて、ただ歩くのも危ない。
時折雨が思い出したように降ってくるなか、車に気をつけながら、薄暗いなか、歩道と車道を行ったりしながら、ようやく目指す鶏肉料理の店にやってきた。
それは立派な店だったが、残念ながらメニューにビールがなかった。
確かに店の雰囲気からして、経営者は華人ではなくてイスラム教徒であることがうかがえた。
で、お味はというと、どの料理も味つけがとっても甘かった。
「この店が人気店ということは、地元の人にはこういう味が好まれるのか……」
帰りは、まずまずまともな歩道がある大通りを、とぼとぼと歩いてホテルに帰還。
ロビーで飲んだビールが全身にしみわたった夜であった。
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