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2015-08-30

ワインとハタに感動したマルサーラ

2014年9月の旅の続き。

エリチェからトラーパニに戻ったのが午後5時ごろ。
予定より少し遅くなったが、まだ日没まで時間があるので、トラーパニから20kmあまり南にあるマルサーラ(Marsala)に向かうことにした。
夕食もそこで食べてこようというたくらみである。

マルサーラ駅近くの踏切

マルサーラへは、バスよりも鉄道のほうが便利である。1時間に1本ほど出ているし、なにしろ速い。
しかも、バスは町の中心部に入ってこないのだ。
たいていの行き先にはバスを勧めるトラーパニの人たちも、マルサーラとその南にあるマザーラ・ディ・ヴァッロへは鉄道がいいという。

駅から中心部まで歩いて20分以上かかるのだが(長距離バス停からだともっとかかる)、夕方ということもあって、どんどんと人が増えてくる。
そして、広場と教会が連続する中心部にやってくると、上の写真のような賑わいとなっていた。
シチリアの西の果てなので、小さな田舎町かと思っていたら意外にも市街地は立派であった。

マルサーラ中心部

さて、マルサーラに来たら、まずマルサーラワイン(マルサーラ酒)を飲まなくてはならない。
……ならないわけじゃないけれど、飲みたいという気持ちがつのる。
そして、路地にあったワインバーで2種類のワインを2人で注文。
上品な甘みと高いアルコール度数で、すっかり気分がよくなった私たちである。

海岸に出て日没を拝み、集会を開いていたネコたちとたわむれたのちに、再び中心地に戻ると、さらに人出は多くなっていた。
といっても、9時20分ごろの最終電車に乗り遅れてはいけないので、ガイドブックを見ながら急いでレストランを探す。

マルサーラワイン

Touring Club Italianoのガイドブック「Guida Rapida d'Italia」で「安価なトラットリーア」とあるので選んだのが、「La Bottega di Carmine」(ラ・ボッテーガ・ディ・カルミネ)という店。
店に入ったのは7時半すぎだから、最終電車に乗るには、1時間ちょっとしか残り時間がない。

ところが入ってビックリ。内装は白で統一され、おしゃれな中庭があって、ピアノまで据え置かれているではないか。
「ホントにここが安い店なの!?」と心配になったが、いまさら出て行くのもみっともない。
もちろん、時間が早いのでほかに客はいないから、「これならなんとか電車に間に合うだろう」とほっとした私たちであった。

マルサーラ中心部

だが、10分以上たっても注文をとりにやってこない。
あせって厨房を覗きにいって、「最終電車に乗るから急いでね」と一人しかいない若いシェフに言うと、そこからさらに数分たったところで、ようやく一人の派手めの女性がワゴンを押してテーブルにやってきた。
ワゴンには、何種類もの魚がぎっしりと配置されて壮観である。

そして、さきほどのシェフがやってきた。
よく見ると、おしゃれな店にはあまり釣り合わない、いかにも下町の食堂の兄さんといった風貌と服装で親しみがもてる。
彼は、おもむろに魚の説明をはじめた。

「あの魚を並べるのに時間がかかったんだよ」時としてするどい勘を発揮する妻は、小さな声で私にそうつぶやいた。

ハタのグリル

兄さんはわかりやすいイタリア語で魚の説明をしたあとで、「もう1つ、チェルニアがありますよ。きょう、大きくていいのが入ったのでとってもおすすめ」
「チェルニア?」
「白身でおいしい魚ですよ!」
手元の辞書では見つからなかったが、なんとなく彼は信用できそうだったので、前菜は魚介の盛り合わせ、メインはチェルニアのグリルを注文することにした。

私たちは急いでワインを飲み、急いで前菜を食べ、急いでメインを食べた。
チェルニアのグリルは、野菜を下に敷き、まるで高級レストランの創作料理みたい。
肝心の味はというと、これまでイタリアで食べた魚のメイン料理のなかで最高でございました。上の写真は、おいしそうに写っていないけれど……。

大変に満足した旨をシェフの兄ちゃんに伝え、内容にくらべてとても安価な支払いを済ませて、私たちは早足で駅に向かった。
「最初からあの魚にするんだったら、ワゴンに並べてくれなくてもよかったのに。おかげで時間がなくなったよね」と妻は鋭い指摘をする。

トラーパニの宿に戻ると、真っ先にやったのはネットでチェルニア(Cernia)の意味を調べること。
それは……、日本語でハタだった。
うまいはずだ。
東京で同じものを食べたら、あの3倍近い値段をとられるかもしれない。

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

最近は飛行機の手荷物に液体が持ち込めないので、町なかでワインを飼わなくなってしまいました。預ける荷物にワインのボトルを入れるのは心配ですし。
結局、チェルニアの実物は見ませんでした。ワゴンに載ってこなかったので。厨房まで見に行けばよかったですね。

約14年前のシチリア旅では、マルサーラ酒を買っただけでさっと通り過ぎてしまったマルサーラでした。その時に買ったお酒はまだ温存してあります。

チェルニアはどのくらいのサイズだったのでしょう?

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  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
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