丘上の桃源郷エリチェでの不思議な再会
トラーパニをベースキャンプとして、出かけたのはエガディ諸島だけではない。
町の東側にあるエリチェにも行った。
海抜750mほどの素敵な丘上都市で、私にとっては2000年以来15年ぶりの訪問。妻は初訪問である。
15年前は、トラーパニ市内から遠回りをして、バスで1時間ほどかかった記憶がある。
しかも、直通バスは1時間に1本ほどで、時間帯によっては途中のヴァル・デリチェで乗り換える必要があった。
それが、トラーパニ市街地東端からのロープウェイができて、気軽に行けるようになった。
ロープウェイ乗り場は、新市街の中心部から3kmほど。路線バスの21、23番か、観光路線バスのA、Bに乗るといい。
ロープウェイはイタリア語でFunivia(フニヴィーア)だが、ここでは英語でCable Wayと記されていた。
さて、ロープウェイの所要時間は10分ほど。トップの写真のように眺めはいいのだが、太陽があたると搬器の中はまるで温室のよう。
脱水症状寸前でエリチェに着いた。
交通が便利になったこともあってか、15年前にくらべてエリチェの町には数多くの観光客で賑わっていた。
「地球の歩き方」にもエリチェが紹介されるくらいだから、日本人もずいぶん訪れているのだろう。
ちなみに、少なくとも2、3年前の版まではアクセントの位置を誤って「エリーチェ」と記されていたが、正しくは「エーリチェ」である。現在はどうなっているか知らない。
それはさておき、三角形をした市街地(というほど大きくないが)は、道が狭いこともあって、すぐに方向感覚を失ってしまうのが楽しい。
町の頂上近くからは、海と空の青が一体となった素晴らしいパノラマが眺められる。
それがこの写真なのだが、残念ながら水平線近くに灰色の雲が出てしまって、「一体」とはいえない感じ。
理想的な姿は、以前つくったホームページのエリチェ のトップに置いた写真を見ていただきたい。
「前に来たときはね、この近くのお城の前で、若い大道芸人がいてさ。観光客はめったに来ないんだけど、たぶんシチリアの兵隊の格好をして、商売道具を馬にひかせて、シチリア民謡に欠かせない口琴をビヨンビヨンと鳴らしていたんだ」
私が妻にそんなことを話していると、行く手からそのビヨンビヨンという音が聞こえてきた。
そして、見たことのある飾りをつけた馬の前で、40歳くらいのおじさんが観光客を相手に歌っていたのである。
「まさか! でも、年が違うよね」
一瞬そう思ったが、自分も年をとったことを忘れていた。
よく考えてみれば、前回が25歳ならば今じゃ40歳になっているのは当然である。
芸が一段落したところで話しかけてみた。
「15年前にここに来たことがあるんだけど、そのときに同じような馬を連れて、口琴を鳴らして歌を歌っていたのはあなた?」
「そうだよ! 兄弟!」
もちろん、私のことは覚えているわけはないのだが、再訪をとても喜んでくれた。そして、異様な盛り上がりのなか、妻に撮ってもらったのが上の写真である。
彼は、「チャララ、チャラララ、チャラララー」とゴッドファーザーのテーマを口ずさみながら、商売道具のハンチング帽を私にかぶせてくれた。
イタリアでの食い過ぎのためか、顔がむくみ気味なのが恥ずかしい。
その後、その場で彼の歌や芸を楽しんだのだが、声のよさと観客に対するあしらいのうまさを見て、「なるほど15年間これだけで食ってこられたわけだ」と納得した。
笑ったのは、イタリア人観光客からの「あんたはこのあたりの出身なのかい?」という質問に対してこう答えたときである。
「パレルモ」
そういって一呼吸おいたあと、「イタリアの首都の」
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