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2015-05-09

平敷屋のぶらぶら歩きと「ハロー」

日焼け止めを忘れたまま、ハードな与勝諸島めぐりをしたもので、そのままホテルのあるコザに帰って一休みしようかと思ったが、ちょっと考え直した。
せっかくここまで来たのだから、見られるものは見てしまおうという貧乏根性が頭をもたげてきた。

すでに、狭い道の両側に赤瓦の家が並ぶ与那城の町は歩いているし、世界遺産にもなった勝連城にも登っている。
10年前のことで、与那城町、勝連町、具志川市、石川市が合併してうるま市が発足する直前である。
そのときのブログ記事はここ

そこで、今回は津堅(つけん)島への船か出ている平敷屋(へしきや)あたりをぶらぶらしようと考えた。
まったくの思いつきだが、港があるのだから、何かおもしろい発見があるかもしれないというわけである。

屋慶名バスターミナル

まずは、島めぐりのマイクロバスの終点であるJA与那城から、屋慶名(やげな)バスターミナルまで500mほど歩く。
JA与那城のすぐ前にもバス停はあるのだが、せっかくだから終点から乗りたいのだ。

バスターミナルに来て、ちょっとびっくり。
10年前はひっきりなしに出ていたバスなのだが、いまは1時間に3本程度。
広いバスだまりにも、3、4台のバスが停まっているだけだった。

平敷屋

平敷屋までは10分弱くらいだったか。
港はバス停からすぐかと思ったら、やけに遠い。
疲れている身に、さらに20分ほどの徒歩はつらい。行きは下りだからいいのだが、帰りが思いやられた。

ちょうど坂下にある小学校の下校時刻だったのか、子どもたちが三々五々坂道を登ってくる。
私は、不審者や変質者と思われないように注意しつつ、風景を撮るふりをして、こっそり子どもたちをファインダーの隅に入れて写真を撮ったのであった。

平敷屋港

平敷屋港は、漁港に隣接していて、いかにも沖縄のローカル港という好ましい雰囲気。
1日にフェリーが2便、高速船が2便就航しているようで、これならコザに泊まっても日帰りが可能だ。
写真の左に見えるのがフェリーで、その手前に見える小さな船が高速船である。

右側には小さな平屋の待合室が見える。
ちょうど、最終便の40分ほど前とあって、待合室には乗客と関係者と見える人たち4、5人ほどがいた。

しかし、その人たちのしゃべっていることが、まったくわからない。
ウチナーグチといっても、那覇弁や首里弁ならば、地元の人どうしの会話でも、何を話しているかくらいはわかることが多い。
だが、このことばはまた別物だった。語尾が不明瞭で、全体がもやもやとしていて、どこが単語の切れ目かもわからないというありさま。
まあ、こんな経験ができるから旅は楽しいのだ。

平敷屋港待合室

待合室のポスターを見ると、津堅島の民宿の宣伝もあって、見ていたら行きたくなってきた。
最近は、ニンジンの栽培が盛んなようで、キャロットアイランドという愛称があるのだそうだ。
もちろん、民宿ではとれたての魚がたらふく食べられるとのことで、やっぱり日帰りじゃなくて泊まりのほうがいいかもしれない。

平敷屋バス停への帰り道は、行きとは別の道を通ることにした。
まあ、別の道を選んでも、上り坂であることは間違いない。
──なんで、わざわざこんな苦しい旅をしなくちゃならないんだろう。
そう嘆きつつも、いい被写体を逃すまじと、ひいこらいいながら坂を登る私であった。

平敷屋

そして、この古い商店を撮ろうとしたときのことである。
道端でしゃがみこんでいた中学生らしき3人のうちの1人が声をかけてきた。
「ハロー」

──なんだ、こいつは。大人をからかっているのか!
と思ったが、温厚な性格の私はにっこり微笑んで、「こんにちは、いい建物だね」と答えたのである。

それだけのやりとりである。だが、なんかしっくりこないものがあった。
帰りのバスで考えたのだが、もしかするとあの子たちは、私のことを本気で日系米人とでも思ったのかもしれない。
──沖縄の人間でなさそうなのはすぐにわかるし、本土の人間にしては派手なシャツを着て、日焼けで真っ赤な顔をしている。そもそも、こんな町に歩いてやってきて、写真を撮るような酔狂な人間が、日本人にいるわけない。米軍にいる日系人じゃないのか。
そういう結論に基づいた結果が、あの「ハロー」だったのか?

そういえば、20年ほど前、インドに行ったときのこと、真っ黒に日焼けして、現地で買った派手なシャツを着て町を歩いていたら、道端で商売をしているインド人から「カトマンドゥ!」と声をかけられたことが二度ほどあったっけ。
「こいつら、何をいっているんだ?」と思いつつ「やあ」なんて返事をした私だったが、よく考えてみると、ほんとうにネパール人だと思われていたのかもしれない。
あそこには、日本人みたいな顔をした少数民族がいるからね。

そんなことを、ふと思い出した平敷屋の夕暮れであった。

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コメント

瑠璃さん、ご心配なく。
バリバリのプロだったら、旅行記をブログに書いてタダで見せることなどしないで、本にしてもらうのですが(笑)

たった3泊4日の旅行ですが、まだまだ話は続きます!

やっぱり、おもしろい!笑ってしまった😋
なにがやっぱりなのか、他の人にはさっぱり??かもしれないが・・

駄菓子さん、プロだったんですね。
写真が素晴らしいなどとコメントして、私 はずかしいです。

でも、温厚なお人柄とのこと(ご本人が言うから間違いない)
失礼をおゆるしくださいませ、ませ。

沖繩シリーズありがとうございます。
おかげさまで、今週は癒やされました。


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  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
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