コザに2泊したあとの最後の1泊は、那覇にするか名護にするか、最後まで迷っていた。
でも、よく考えると、最終日は那覇空港からの最終便なので、名護を夕方に出ても高速バスで十分に間に合う。じゃあ、なるべく田舎にとどまろうということで、名護をベースキャンプにして2日間をやんばる(山原)めぐりにあてることにした。
今回の記事は、肝心のやんばるめぐりを前に、個人的に気に入っている名護バスターミナルを紹介したい。

沖縄南インターバス停から名護行きの高速バスに乗ろうとすると、運転手が「名護行きですよ。いいですか」と心配そうに確認するではないか。ここから名護に行く観光客なんて、まずいないのだろう。出だしから気分が盛り上がってくる。
約1時間で名護のバスターミナル着。ここはもう3度目だが、いつ見てもいい雰囲気である。
──そういえば、10年前に来たときに1日3便のローカルバスに乗ったら、運転手と意気投合して、その晩に名護のカラオケスナックに連れていってもらったなあ。
なんていう楽しい思い出もよみがえってくるのであった。

名護のバスターミナルのどこがいいかというと、まず敷地が広くて停泊しているバスの数が多いこと。しかも、それが全部見渡せるから、乗り物ファンにとっては楽しくてたまらないのだ。
私は一応鉄道好きということになっているが、バスもけっして嫌いではない。とくに沖縄のバスは鉄道の代わりのようなもので、じつに楽しいのだ。
長距離を走る路線バスはあるし、琉球バス交通、沖縄バス、那覇バス、東陽バスの4社が入り乱れて、さまざまカラーのさまざまな形式が走っているのが魅力である。

名護のバスターミナルには、琉球バス交通と沖縄バスが乗り入れているが、その事務所がターミナル内にあって、学校の職員室みたいな雰囲気の部屋が乗客からも見えるのも興味深い。
前回までは気がつかなかったが、「がじまる食堂」という地味な食堂もあった。中を覗いてみると一昔前の社食のような様子は魅力的だったが、まだ腹が減っていないので、残念ながら入らずに終わってしまった。

バスターミナルに貼りだされた手書きの時刻表もまた味わい深い。
10年前の写真を見ると、路線名も手書きだったが、さすがにIT時代になって、そのくらいはパソコンから印刷するようになったのだろう。

これは売店の入口である。飲み物やらパンやらお菓子やらを売っているのだが、中は薄暗くて、なんとも怪しげな雰囲気である。
コカコーラのロゴが入った冷蔵庫に貼ってあるのは、地元の民謡研究会の発表会を知らせるポスターだ。

それにしても、店内のこの荷物の積み上げ方はなんなんだろうか。
荷物の向こう側から、おばちゃん2人の話し声が聞こえてきたところから推察するに、この荷物がおばちゃんたちのプライバシーを守る砦のようなものなのだろうと思う。
私が冷蔵庫から飲み物を取り出すと、荷物の向こう側からおばちゃんが出てきて、ちゃんとお金を受け取って、ちゃんとお釣りを出してくれた。当たり前だけどね。

事務所前は、いわば到着ホームのような設定である。名護バスターミナルに戻ってきたバスは、ここで客を降ろして、バス溜まりに向かう。
ここにコインロッカーがあるので、私は荷物をロッカーに入れて、やんばるの旅に出ることにした。ホテルで預かってもらうほうが費用もかからなくていいのだが、バスターミナルからホテルまで歩いてまた戻ってくるのは面倒なのだ。
それにしても、写真右端に見える「ドラム缶内で雑巾を洗うな!」という標語がおもしろい。
最後の!マークが、担当者のいらだちと怒りを端的に表現している。

さて、雑巾を洗ってはいけないドラム缶の近くでは、何匹かのネコがうろうろしていた。写真では2匹のネコが写っているのが見えるだろう。

さて、出発時間が近づいてきたので発車ホームに移動するのだが、その前にしつこくバス溜まりを撮影。
ここは、市の中心地から離れているので、周囲にあまり高い建物がない。だから、空がやけに広く見える。遠くの山並みもすがすがしいのだ。

乗り場は4つか5つに分かれていたが、それほど混雑するわけではないし、頻繁にバスが出るわけでもない。残念ながら、10年前、22年前に来たときよりも、本数は3割減くらいになってしまっていた。
そんなことを懐かしみながら、ぼんやりと北に行くバスを待つ私であった。

やがて、やってきたのは9時50分発の67系統辺土名(へんとな)行き。
辺土名は国頭村(くにがみそん)の中心地。村役場がある町である。
名護から辺土名まで約1時間。沖縄北西部の海岸に沿って走っていく。
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