フォトジェニックなバールの城砦
アオスタには9月11日から2泊。2日目は目いっぱい使えるので、まずはかねてから行きたかったバールの城砦(Forte di Bard/Fort de Bard)に。
Bardだからバルドと発音するのかと思っていたら、もう完璧にフランス語でバールと呼んでいた。
バールはトリノに向かう街道沿いにある。アオスタのバスターミナルから30分おきに出ているポン・サンマルタン(Pont Saint Martin)行きのバスで1時間10分ほど。
「ほら、あれだよ」
目の前に現れた見事な城砦を指さして、運転手はバスを停めた。
この城砦を知ったのは、1990年代にイタリアで買った「Bell'Italia」という旅雑誌であった。
この雑誌は、毎号イタリア各地の知られざる町や観光スポットをいくつか取り上げてくれるので、イタリアに行くたびに買っていた。
もっとも、最近はさすがにネタ切れのようで、今回はぱらぱらとめくってみて、あまり興味を引くスポットがなかったので、初めて買わずに帰ってしまった。
雑誌の特集を見る限り、かなりの高低差があるようで、頂上まで登るのはかなりの覚悟が必要だと思っていた。
ところが、である。
現地に行ってみると、なんと斜行エレベーター(簡単なケーブルカーのようなもの)ができているではないか!
入口にある案内所のおじさんによると、これを4本乗り継いでいくと頂上までいけるという。
心のなかでは登山を覚悟していたので、ちょっと拍子抜けである。
これが、斜行エレベーターから見たバールの村。
中世からあった集落とのことで、狭い道の両側に古めかしい建物が建っていた。
ちなみに、エレベーターは無料。頂上まで行って帰ってくるだけならば、一銭も、いや1ユーロもかからないのである。
これが城砦の上からの眺め。なかなかのものである。
左側に高速道路が見えるが、私たちの乗ったバスは、右の川沿いをくねくねとやってきた。
川の左側には鉄道の線路が見える。これが、トリノとアオスタを結ぶ路線である。
そして、黄色く見える建物が駅。
じゃあ、なんで列車で来なかったのかというと、その理由はのちほど。
駅名はバール・オーヌ(Bard-hone)。川の右側(この写真では見えないが)がバール、左側(この写真に写っている地域)がオーヌの町である。
この城砦であるが、もともとはこの小山の頂上に古くからあったものである。
ほかの地域の城砦と同様に、山の上にぽつんと建っていたらしい。
そこへの通路を整備して、通路に屋根を付け、さらに何百という部屋をつくったという。
サヴォイア王国の時代である。
1800年、この城がナポレオン軍の進軍を止めた……とかなんとか、そしてイタリア統一に力を尽くしたカブールも一時はここに幽閉(?)されていた……とかなんとか、金を払って見学した博物館にはそう書いてあった。
そして、19世紀にさらに手を加えて今のような形になったそうで、だから内側を見ると意外に近代的なのであった。
さて、城砦から下界に降りて、橋を渡ってオーヌの町をぶらぶら……と思ったところで難題が発生した。
実は、うまい具合にアオスタに戻る列車がやってくる時刻だったのである。
この区間は普通列車のみが1日に20往復ほどしているのだが、この駅に停まるのは、そのうちの半分以下。
その列車が、20分後と1時間後にやってくる。その次に停まるのは、3時間ほど先。
だが、1時間以内でオーヌの中心部まで行って戻ってくるのは少し厳しい。
列車に乗り遅れても、バスで帰ればいいのだが、またあのくねくね道を1時間以上かけるのはつらい。
ということで、軟弱にもそのまま鉄道駅に直行して、20分後の列車に乗ることにした。
ところが、駅に行ってまたびっくり。無人駅なのは当然だろうが、切符の自販機もなく、駅前には切符を売っていそうなバールすら1軒もない。
やむなく、やってきた列車に無券で乗ることにした。
でも、その前に城砦をバックに撮影。
列車は、城砦の真下をトンネルでくぐってやってくる。
「そうだったか」と私はしみじみ納得。
というのも、2年前にここを列車で通りかかったとき、城砦が見えるはずだと、懸命になって左右の車窓を眺めていたのである。
そのときは「おかしいなあ。なぜ見えないんだろう」と思っていたのだが、真上にあったんじゃあ、見えないはずである。
さて、問題の切符だが、乗車してすぐに車掌に言ったら、罰金なしで切符を切ってくれた。
どうやら、ほかの無人駅で乗った人もそうしているようで、ここではそれが当たり前のようである。
45分ほどでアオスタに帰り着いた。
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