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2014-10-28

飯とワインのピエモンテ早足三都めぐり

トリノ・リンゴット駅では、運よく1時間に1本のジェノバ行き快速列車に間に合い……と思ったら、当の列車が15分遅れてやってきた。
それにしても、隣駅のトリノ・ポルタ・ヌオーヴァ駅始発の列車である。どうやったら、15分遅れるのか、実に不思議である。

アスティ

まあ、とにもかくにも、アスティ(Asti)までノンストップで30分。午後1時に到着した。自動車博物館で時間を食ってしまったので、大急ぎの小旅行になりそうなのだが、腹が減ってはどうにもならないので、まずはアスティ市内のトラットリーアで昼飯である。

ここで本日初のワイン。2人で500ccのカラフェである。ここまで来たのだから、バルベーラ・ダスティ。日本で飲むとどこか酸味が強い印象があったが、やはり本場で飲むのはコクがあってうまいものである。

パスタが不思議な食感で、悪く言えばぼそぼそしているが、よく言えば良質な冷し中華の麺に近い、なんか懐かしい感じ。
これが、Tajarin(タヤリン)という卵黄入りのパスタだということを知ったのは、この次に行ったアルバ(Alba)の町でのことである。

アスティ

アスティからアルバまでは、かつては鉄道の路線があったが、現在は1時間に1本のバスが走っている。
例によって、のんびり町めぐりをしていたものだから、最後は走ってバスターミナルへ。
ところが、どこを見てもアルバ行きのバスは見当たらない。時刻表を見てもそんなバスはない。その辺で待っているイタリア人に聞いてもわからない。

懸命に探した結果、アルバ行きのバスはバスターミナルの中ではなくて、なぜかその入口にあるバールの前から出るのであった。
気がついたときには、すでにバスは出たあと。やむなく、もう一度、町の中心地に戻ってワインを飲むしかなかった。

アスティ

下の写真は、アルバへ行くバスの車窓から。廃線となった線路である。
奥にニエーヴェ(Nieve)駅跡が見えるが、この町が「イタリアの美しい町」の1つ。
郊外には一面にぶどう畑が広がり、丘上にはこぢんまりとした上品な町並みが見える。
「次にトリノに来たときはここも訪れなくては」と、また宿題を増やしてしまった。

線路跡

アルバへは所要1時間弱。
アルバは、アスティよりも一回り小さな町だが、夕方近くなって人が町に繰り出して、ちょうどいい感じの賑わいである。
食料品店の前には、上の写真のような黒トリュフが売られていた。
私たちが珍しそうに見ていると、そばにいたおじさんが話しかけてくる。
「黒トリュフはアルバ産じゃないんだ。アルバは白トリュフ。出てくるのは10月になってからだよ」

こういうおせっかいなおじさんがいるから、イタリアは楽しいのである。
おかげで、また一つウンチクを仕入れたので、日本に帰ってイタリアレストランに行ったら、知ったかぶりをして話してやろうと心に決めた。

アルバ

町めぐりの時間は1時間しかなかったが、小さなアルバの旧市街はなんとか歩きまわることができた。
そして、ここまで来たら飲まないわけにはいかないということで、ドルチェット・ダルバとバルベーラ・ダルバをそれぞれグラスで飲む私たち。
おかげで、また駅まで走るハメになってしまったのである。

アルバ

アルバからは列車でブラ(Bra)へ。所要は25分ほど。着いたときには、もう初秋の日は暮れかかっていた。
ブラは、スローフード発祥の地ということで世界的にも知られるようになったが、アルバよりもさらに一回り小さな町である。

「トリノ行きの終電まであと1時間。これを逃したら今日は帰れないぞ」
妻に念を押して、旧市街まで早足で歩く。
なぜか、料理学校の先生と学生らしい日本人15人ほどの団体と出会ったものの、このままあっさりと駅に戻ってこの日の小旅行が終わるはずであった。あの人たちと会わなければ。

アルバ

町の中心部の小さな交差点には、大勢の人が店の外で食事をしていた。
そんな様子を写真で何枚も撮っている妻を見て、「そろそろいい加減にしたら……」と思っていると、なにやらこちらを見る視線がある。
東洋人の女性が2人。目が合ってからのうなずき方で、日本人とわかった。

それが、アルバに住む書道家のHさんと、自動車のデザイナーをしていたイタリア人の旦那、そしてたまたまその日にお二人とばったり会ったというWさんであった。
あいさつをして一瞬で意気投合。「時間がないんです」と言いつつ、楽しそうな雰囲気に抗うことができず、ワインをまたしても飲んだ私たちであった。

わずかな時間だったけど、私たちはブラとピエモンテのよさとイタリアに住む面倒くささを知り、3人は我々のこれまでのタフなイタリア旅行の様子に驚いた。
わずか15分ほどだったが、この日の小旅行の終わりにふさわしい楽しいひとときだった。

後ろ髪を引かれつつ、再会を約して、その場をあとにした。
そして最後は、やはり小走りで駅まで戻ることになったのである。

「ピエモンテもいいね。このあたりにはまた来たい」と妻。
「どこがよかったの?」
「そうねえ、来たい順番は、ブラ、アルバ、アスティかな」
「滞在時間が短い順じゃないか!」

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