長崎市内の2人乗りモノレール
長崎・立山町で丘の上から見つけたのはこれだった。
坂道・階段を昇るための2人乗り懸垂式モノレールである。
一昔前、いや二昔前の電話ボックスのような物体が、「モノレール」の車体である。
そりゃあ、年をとったらこの階段地獄を昇り降りするのは大儀だろう。そんな人のために、実験的(?)に長崎市内に3か所設けられている。
ここ立山町にあるものは2番目につくられたもので、路線延長が51.3m、最大勾配は32度。車体には「さくら号」と書かれていた。
路線は、こんなふうに道のカーブをなぞっている。
このレールが、丘の上から見えたのだった。
操作は乗る人が行う。ただし、これを動かすためのカードを持っているのは、地元の年配の人だけ。この日は、残念ながら乗っている人は見かけなかった。
と、これでおしまいでは申し訳ないので、2005年12月に別の路線で撮影した写真をお目にかけよう。
これは天神町にある2人乗りモノレール第1号、その名も「てんじん君」である。天神町が「てんじん君」ならば、立山町のは「たてやま君」にすればよかったのにと思うのだが、余人には推し量ることのできない事情があるに違いない。
上の写真をよーく見ると、人が乗っているのがわかるだろう。貴重なショットである。
そして、これが「てんじん君」の車内。乗り込むときは、手前のバーを上げ、動かすときはバーを下げるのだそうだ。
ドアもなくて危険だと思うかもしれないが、なにしろスピードは1分間に15m(!)。時速に直すと900mである。1時間走っても1km進まないのだから、当然歩くのよりもはるかに遅いから問題ないのである。
2人乗りのはずなのに椅子が1つしかないのも奇妙だと思ったが、私の明晰な頭脳は「もう一人分は立ち席に違いない」とひらめいた。そう思って上の写真をよく見ると、椅子の右に微妙なスペースがあることがわかる。
ちなみに、掲示には「乗車人員または積載荷物量 2人または150kg」と書いてあった。
さて、この乗り物の問題はといえば、まさにそのあまりの遅さだろう。もっとも、車輪をまわす普通のモノレールと違って、歯車を噛み合わせて進むのだから遅いのもしかたない。その分、坂でも逆走の危険は少ないわけだ、たぶん。
そして、この路線をつくるためには、ある程度の道幅がなくてはならないが、無数にある長崎の階段路地で、条件に合う道はそう多くない。結局、3路線がつくられているのだが、焼け石に水のように思えてならないのである。
製作は、福岡県にある嘉穂製作所。かつては炭鉱の巻き上げ機などをつくっていたそうだが、最近は全国各地でこうしたミニモノレールをつくっている。
じつは、私が宮田幸治さんと共著で2005年に出版した『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)の中で、このミニモノレールを取り上げた。そのときの取材は宮田さんに行ってもらったが、酔狂にも私も出版直後にここを訪れたのだった。
この本はかなりの名著だと思うのだが、その後、山海堂が倒産したので現在は絶版である。
どこかで再版してくれないかなあ。
(まだつづく)
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