« ひょっこりひょうたん丘上都市: カルピノーネ | トップページ | FIAT 500 (フィアット チンクエチェント) パーティーに遭遇! »

2012-09-14

イゼルニアで見たものあれこれ

イゼルニア(Isernia)は、モリーゼ州第2の都市にしてイゼルニア県の県都。といっても人口は2万人あまりの小さな町である。
町の東側に新市街や工業地帯があり、駅も新市街にある。
駅から西に向かって20分ほど歩くと旧市街の入口に達する。旧市街は丘の上に尾根づたいに細長くつらなっている。
この写真は、車窓から見たイゼルニアの遠景である。

イゼルニア遠景

実は、カルピノーネから列車でイゼルニアに到着したのは、午後2時ごろ。
だから、やたらに暑い上に、町は昼休みでほとんど店が営業していない。
かろうじて見つけたバールでパニーノを食べて、しばし公園の日陰で休憩をした。

この町では、とくに目をひく観光資源は少ないのだが、いろいろとおもしろいものを目にすることができた。
まずは、昔懐かしい料金表。駅構内のバールにあった。

バールの料金表

ボードの表面が布になっており、そこに溝が切ってあるので、そこにプラスチック製の数字や文字をはめこんでいくわけだ。
これなら、メニューの変更も値上げも簡単。インフレも恐くない。
昔はバールやトラットリーアの必需品だったが、最近ではめっきり見なくなった。

サーカスのポスター

次の写真は、町のあちこちに貼りだされていたポスター。
ショッキング・ピンクの地に、この顔だから、かなり存在感がある。
"MOIRA ORFEI la regina del circo"と書かれている。
「サーカスの女王 モイラ・オルフェイ」ということらしい。サーカスのお知らせであった。
名前と顔からして、ブラジル人か。

旧市街の入口

さらに西に向かってだらだらと坂を下っていくと、旧市街の入口らしき門があった。
時計塔を兼ねているようである。

それにしても、駅からずっと下り坂なのである。
すでに汗びっしょりになっているなか、帰りが思いやられた。

旧市街のちょうど中央部あたりにあったのが、下の写真の建物。
見るからに教会であるが、左右対称ではなくて右側に増築されているので、いかにもバランスが悪い。
似たような建築はスルモーナにもあったところを見ると、アブルッツォ・モリーゼの専売特許なのか。

教会改造の庁舎

もともとは教会だったものが、のちに市の庁舎として使われたらしい。
写真の右には、それらしき新しい建物がある。

そして注目は、この元教会の壁に取り付けられた "ALLE QUATTROMILA VITTIME DEL 10 SETTEMBER 1943" というプレート。
あとで調べてみると、1943年9月10日に連合軍の空襲があって、4000人の犠牲者が出たという。
こんな平和そうな田舎町でも、つい数十年前にはそんなことがあったのだ。

食料品店の店先

この写真は、食料品店の店先。
昼休みだから閉まっていたのだが、これでもかという貼り紙に感心した。
注目は、右上の「ニセモノはストップ! ロンガーノのパン」という貼り紙。
これまた調べてみると、ロンガーノ(Longano)というのはイゼルニアの南にある小さな村のことで、どうやらここのパンが有名らしい。
この店では、ニセブランドパンではなくて、本物のロンガーノのパンを扱っているというわけだ。

病院

そして、だらだらと坂を下っていったら、とうとう旧市街も突き抜けてしまった。
そこにあったのは、田舎町にしては大きめなショッピングモールと病院。
しばしショッピングモールで涼みながら、日本へのお土産を物色した。

で、この写真は病院なのだが、驚いたのが写真右下にある広告。
「Onoranze Funebri」というから、葬儀屋である。
もちろん、社名と電話番号も書いてある。
病院の前に葬儀社の広告とは、日本の感覚ではかなり驚くが、よく考えてみると便利ではないか。
私の父が死を目前にしたときは、家から遠い病院だったこともあり、どの葬儀社に相談すればよいのか迷ったものである。結局、病院の先生に尋ねることにしたが。

それはそうと、駅からすでに2km近く歩いてしまっていた。
しかも、帰りはずっと登り坂である。そのうえ、お土産をしこたま買い込んでしまっていた。
重い。
暑い。
自分自身のあまりに計画性のない行動に茫然としつつ、もしやと思ってバス停を探したら……あった!
そう、病院というのは、どの町でも必ず市内バスが経由するのである。
しかも、南部では珍しく、時刻表とともに路線図が書かれていた。

それによると、30分に1本のバスがあと5分でやってくる。しかも、乗り換えなしに駅まで行ける。
バスの切符は、なんと病院内のバールで買うのだった。
私は病院の門をくぐり、ちょっと消毒薬臭い白衣の人びとにまじってパスの切符を買い、ほっとしたついでにコーヒーを注文したのであった。

« ひょっこりひょうたん丘上都市: カルピノーネ | トップページ | FIAT 500 (フィアット チンクエチェント) パーティーに遭遇! »

イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

最近は、バスの車内で切符を販売するところも増えてきましたね。
ただ、市内バスはそれでもタバッキかバールで買わないとダメところが大半かな。
運転手がいちいち切符を売っていたら時間がかかってしょうがないからでしょうか。そもそも信用乗車システムですし。

中長距離バスは、車内販売の会社も増えているような気がします。
リグーリアでは、車内料金のほうが2割ほど高かったのですが、急いでいるときは気楽ですね。

そうか、切符を一枚余計に買っておけばよかったのか!
今頃気付きました田舎でのリスク管理(¨;)
でも買う所がわかんなかったとか、時間なくてと必死で言うとなんとかなるのがイタリア(^_^;
走っている途中で止めて、待っているからあそこで買ってこいと言われたことが2度ほどあります。あと、ARPAの人は親切でタダにしてくれたことが2度ほどあります(^_^;

paceさん、こんにちは
細かいところまで目をつけましたね(笑)
でも、町なかでは70~80くらいでした。駅だから少し高いのかも。

そうそう、このすだれは、南部に行くと一般の家でもよく見ますよね。風通しがよくて、それでいて中が見えないメリットがあるのかな。

「PRIMA SCELTA」は、よく食料品店で見ます。
辞書を調べなくても、なんとなく通じるところがありますね。まさに「特選」と感じなのかな。
さっき小学館の辞書で調べたら、「最上の」「極上の」と出ていました。

駄菓子さん、こんばんは。

駅構内のバールの料金表・・・あ~っ!!カフェが90チェンテージミになってる~!!
大都会でもないのに~!! (すみません、細かいこと言って f^_^; )
2年前はバーリの駅構内では70チェンテージミでした。
だらりと長いすだれを無造作に束ねた食料品店の入り口にイタリアを感じてしまいます。
BACCALA PRIMA SCELTA って何でしょうか?
「売れ残りじゃなくって、真っ先にいいやつ選んできたバッカラだからね」ってことかなぁ?

このボード、見たところ使い古したものではなく、新しいものでした。
今回の旅では、もう1か所、どこか見たような気がします。
意外と、リバイバルで人気があるのかも。

そうそう、バスの切符は私も多めに買っておくようにしています。

昔懐かしい料金表ボード、私も懐かしく感じましたが、現在は殆ど見かけないのでしょうか?
こういうところに注視してくださる駄菓子さんの旅記は嬉しいです。
また、バスの切符を病院内のバールで買うって発想は無いですよね。
バスの乗り場が「この辺りで立っていれば止まってくれるからね。」と言われたことが何度か有ります。(ほんまにそうでした。)
一度そんなことがあってから、無駄になってもいいから、タバッキーでバスの切符を余分に1枚買っておくようになりました。田舎では。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« ひょっこりひょうたん丘上都市: カルピノーネ | トップページ | FIAT 500 (フィアット チンクエチェント) パーティーに遭遇! »

著書

  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
無料ブログはココログ

.