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2012-08-02

アブルッツォとモリーゼを結ぶ鉄道代行バス(上)

4泊もしたスルモーナを離れ、いよいよモリーゼ州へ南下する山越えである。
前回書いたように、ここは昨年12月まで鉄道が走っていたのだが、廃線になってしまった。
代行バスを調べてみるのだが、地元のバス会社のホームページを見ても出てこない。
「こりゃあ、いったん海岸に出てから南下して、もう一度山に入らないといけないか」
4日間そう思っていたが、出発の前夜にひらめいた。
「イタリア鉄道(国鉄)のホームページを見てみるか」

スルモーナ駅

ありました。
鉄道の時刻表には列車の時刻しか出ていない、という固定観念が邪魔をしていた。
鉄道の代行バスもイタリア鉄道が運営しているから、ホームページの時刻表にバスの時刻が出ていたのだった。もっとも、手元にあった紙の時刻表には路線図すら出ていなかったが。

鉄道のスルモーナ駅は、中心部から2km以上も離れているから、タクシーを呼んで移動。
だが、乗った代行バスは、今来た道を戻って、町の中心部を抜けていくではないか。
損したと思ったが、鉄道代行バスだから駅があった場所にしか停まらない。幸か不幸か、町の中心部はスッーと通過していくだけであった。
イタリアらしいのからしくないのか、なんとも融通の効かないやり方である。そんな不便なバスのためか、乗客は数人しかいなかった。

ペットラーノ遠景

このときの目的地は、モリーゼ州のイゼルニア(Isernia)だが、バスは途中のカステル・ディ・サングロ(Castel di Sangro)で乗り換えとなるとのこと。

バスは前日訪れたペットラーノの脇を通過すると、大きなカーブをいくつも描いて一気に高度をかせいでいった。上の写真が、車窓から見たペットラーノの眺めである。

カステル・ディ・サングロ駅跡

車窓には、もっぱらアブルッツォの高原が広がり、たまに小さな町が現れる。
やがて、廃線となった鉄道が山をぐっと大回りして、途中から道路と並行するのが見えた。

とそのときである。廃線跡だと思っていたところに、何やら小さな車両がずいぶんなスピードで走っていくのが見えた。
「保線工事用の車両じゃないか!」
これで、前日、廃線跡のはずなのにレールが錆びていなかった理由がわかった。たまに車両を走らせて維持管理しているのだ。
それにしても、もたもたと廃線歩きをしていたときに、あの車両が猛スピードでやってきたらどうなっていたことか……。

カステル・ディ・サングロ駅跡

とまあ、物思いにふけっているうちに、カステル・ディ・サングロの終点に着いた。スルモーナから約1時間の行程である。
そこは旧鉄道駅近くの小さな広場だった。
3枚目の写真が、線路に残された廃車体。4枚目の写真が、駅跡の写真である。

次のバスの発車まで20分あるというので、のんびりと写真を撮って駅舎の中を覗くと、そこは古めかしいバールになっていた。
そして、古めかしいバールに似合う、古めかしい親爺が二人座っていて、昼間からビールを飲んでいるではないか。

カステル・ディ・サングロの親爺

コーヒーを注文した私は、「ここにはもう列車は来ないんですか?」などとわかりきった質問をしながら、親爺たちと打ち解ける努力をしつつ、古めかしい内装の写真などを撮るのであった。

最後に、親爺二人に向かって、写真を撮ってよいか尋ねた。
向こう側に座っている親爺さんは、ずっとにこやかな表情のまま「ああ、いいよ」。
こちら側の無表情な親爺さんは、「カメラが壊れるぞ」と一言。ニコリともせずにカメラに収まった。
後ろに見えるサッカーゲームが懐かしい。
(つづく)

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コメント

あと、小さな町なのにバス会社が違うと停留所が違っていたり。
あ、それは日本でもあるか。

>鉄道代行バスだから駅があった場所にしか停まらない。
この運行思想は、私も理解に苦しみます。結局はタクシーに乗らざるを得ないわけですね。
一方で、運行会社が違うと、鉄道駅近くを平気で素通りしますし。

次はイゼルニアですか。写真が楽しみです。

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  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
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