イタリア人の赤ん坊と東洋人との出会い: ペットラーノ
スルモーナをベースキャンプにした山岳都市・丘上都市めぐりの最終日。
行先は、スルモーナから10kmほど南にあるペットラーノ・スル・ジーツィオ(Pettorano sul Gizio)である。「ジーツィオ(川)の上にあるペットラーノ」といった意味で、周辺ではもちろんペットラーノだけで通じる。
3日連続で、スルモーナのバス乗り場で切符を購入。
「あら、毎日バスで町めぐりなのね! ペットラーノは近いのよ」なんて、切符売り場のお姉さんとも顔見知りになってしまった。
1日に8往復のバスがあるのだが、8時の次が11時半というのはちょっと不便だ。11時半のにすると、暑いさなかを田舎町で過ごすハメになるので、朝のバスにした。
着いてみると、確かに丘上都市ではあるが、それほど高度は高くない。
三方を山に囲まれて、一見、谷間の村のようでもある。
とはいえ、やはり上まで登ると眺めがいい。
丘の中腹には役所があり、その正面には小さな小さな広場があった。
下の写真で、正面の建物が役所である。立派に噴水があって、建物の壁面には日時計らしきものが描かれている。
左側に見えるバールに立ち寄り、腹ごしらえをしてから町歩きをはじめたのであった。
ペットラーノの人口は約1200人。
ほんとうに小さな町(村)なので、あっという間に1周できてしまう。
12時に出る帰りのバスまで、さてどうしようかと思いつつ、広場に戻ってきた。
町はずれの城砦が11時に開くと書いてあったので、それまで待っていたが、いっこうにその気配がない。
まあ、そんなことがあろうが、ここはイタリアだから腹も立たない。
イタリアを旅行するようになって、間違いなく私は気が長くなった。
ペットラーノには、中心の広場のほかに、町の入口にあたる場所に、もう一つ広場がある。
そこには小さな公園とベンチがあり、木陰でゆっくり休める。しかも、広場の近くに猫を何匹も飼っている家があって、ひっきりなしに猫が出入りしている。そんな猫とたわむれながら私は時間をつぶすのであった。
と、そこに通りかかったおじいさんと孫らしき二人連れ。
私とおじいさんは「ブォン・ジョルノ」とあいさつをしてすれちがったのだが、孫の反応がおかしかった。
私を凝視したまま、文字通り固まってしまったのだ。
おじいさんが名前を呼んでも、動こうとしない。それどころか後ずさりさえはじめる始末。
そんな様子をこっそりノーファインダーで撮ったのが上の写真である。
私もおじいさんも笑うしかなかった。
それまでの短い人生のうちで、おそらくはじめて東洋人を見たに違いない。
こんな赤ん坊が、普段見慣れている人間と、どこでどう区別しているのだろうか。
人間の能力というのは不思議なものである。
また一つ、旅で学んだ私であった。
じつは、帰りのバスまで、まだまだ時間を持て余した私は、このあと、付近を走る鉄道の廃線めぐりをしてしまった。それについての詳細は後日。
いずれにしても、またしても炎天下を歩きまわった私にとって、12時にやってきたバスは、エアコンもしっかり効いて、天国のようであった。
座席のグレーに対して、カーテンと把手の黄色が目に鮮やか。
このあたりの色彩感覚は、やはりイタリアである。
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