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2012-07-14

もう羊の顔も見たくない: スルモーナ

スルモーナで特筆すべきは、メシが安くてウマかったことである。
行った店に共通するのは、最上級にウマいというわけではないのだが、コストパフォーマンスに優れているという点だ。
では、スルモーナの町で私がどんな夕食をとったのか、誰も期待はしていないだろうが、ざっとお目にかけることにしよう。

Cesidioの外観

もっともコストパフォーマンスがいいと評判なのが、旧市街の路地を入った小さな広場にある、この「Cesidio」(チェジーディオ)。写真でわかるように、古い邸宅の1階をレストランにしたもので、家族経営でやっているようだ。
私が来店した9時ごろには、小さな庭で7、8組の客が食事をしていた。
私は店内を選択。店の中もなかなかの雰囲気である。

Cesidioの店内

では料理はどうかというと、できのいい家庭料理という感じ。メニューも平凡なものが並んでいた。
ただ、40代後半に見えるマダムの、ごく自然でありながら色っぽい笑顔と、値段が驚くほど安いのが魅力である。前菜、パスタ、肉と食べてワインを飲んでデザート、コーヒーまでとって30ユーロ台であった。
なるほど、TCIのガイドブックの評価にしては珍しく、「コストパフォーマンスがいい」と書かれるわけである。

ワインバーの食事

食べすぎたので、翌日はオウィディウス通りをはさんで、Cesidioとは反対側に見つけた古めかしいワインバーに行ってみた。「La Cantina di Biffi」(ラ・カンティーナ・ディ・ビッフィ)という店で、ワインの小売りもしているらしい。1953年創業というプレートが光っている。

白と赤の地元のワインをグラスで飲みたい。食べるものもある? と尋ねたら、「ワンプレートに盛りつけましょう」といって、写真のようなものを持ってきてくれた。
この量なら満腹の翌日の夕食にもぴったりである!
店で働く4人の若い男性は、みな気がいいやつらで、「日本は地震と津波が大変だったよね」といろいろと心配してくれていた。
結局、ワインは3杯飲んだ。

さて、問題の3日目の夜。
前日に書いたブログをチェックしていたら、日本の知人ジョバさんから書き込みがあった。
「名物の羊は食べましたか?」
危うく食べ損なうところであった。アブルッツォとくれば羊肉は欠かせない。地元の人にとってはヒツジ品である。
しかも、羊肉嫌いな妻と食事をすると、なかなか羊にありつけない。一人旅の今がチャンスだと思ったわけだ。そこで、さっそくその晩は、やはり安くてウマいと評判の「Clemente」(クレメンテ)へ向かった。

Clementeの店内

店内は想像以上にリッチな雰囲気。
「メインで羊が食べたいんだけど、ほかは何がいい?」
太った店主に尋ねると、「当店の自慢の盛り合わせがお勧め! それと羊でいいですね?」
そこで、OKと言えばよかったのだが、ここまでパスタをほとんど食べていないことを思い出した。
「アブルッツォ名物のキタッラも食べたい! でも、量が多すぎるかな?」
「じゃあ、それは半分にしましょう」
こうして、晩餐がはじまった。

Clementeの前菜

これがご自慢の前菜。簀の子のような、鮨を載せる台のようなものに、盛りつけられているところが興味深い。
「これで12ユーロだと、ちょっと高いかな。でも、腹にたまらないから羊の前にはいいかも」
その見通しは甘かった。このあとに野菜やらキコノやらの温かい前菜が、どっと2皿も運ばれてきてびっくり。
だが、それはこれから起こる悲劇の序章でしかなかった。

ちょうどそのとき、斜向かいに座っていたイギリス人だかドイツ人だかの夫婦に、羊の皿が運ばれてきた。
横目で観察するに、その量の多さに旦那が驚いているようである。私はパスタを追加したことを悔やみはじめた。

結局、前菜は平らげたものの、半分にしたはずのパスタはちょっと残した。
「羊に備えなくちゃならないから」と店主に言ったら、斜向かいの旦那にウケてしまった。
旦那は、羊をかなり残したようである。「肉をしゃぶるとウマいのに」と店主にいわれていたが、もうこれ以上食えないというジェスチャーをしていた。

羊肉のグリル

そして、これが私のところにやってきた羊肉のグリルである。もう、このときすでに私は腹8分目を越えて、満腹中枢が電気信号を送りはじめていた。
私としては、日本でよく見るような、骨にかわいく肉がついたものが、多くて5切れほど載ってくるのかと想像していたが、まったく違っていた。
写真だと小さな皿に見えるが、実物はかなり大きい。そして、厚く切られた羊肉には脂分がたっぷりのっており、はたして全部で何切れあるのか、数える気力もない。しかも、付け合わせがフライドポテトである。

しかし、ここは日本男児である。最後の力を振り絞って、8割方は食べた。
半分ほどまでは、店主のアドバイスに従って骨もしゃぶった。だが、それが限界であった。フライドポテトもだいぶ残した。
もう動くこともできない。息を吸うのもつらかった。

「羊さん、ごめんなさい。私が悪かったよ。もう食べたいなんて言いません。しばらくは……」
デザートは断ったが、食後酒は頼んでみた。
食後酒はイタリア語でディジェスティーヴォ。消化薬という意味もあるからだ。
私のせめてもの抵抗であったが、そう簡単にあの大量の羊肉が消化されるはずはなかった。

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コメント

なあんだ。ジョバさんも一人で食べていたのかと思いましたよ。
でも、スカンノで食べたのは、ジューシーで繊細な感じだったんですよね。
そういうのを期待したのですが、とってもオイリーでがっつりしていました。
3、4切れだったら、これはこれで楽しく食べられたはずですが(笑)

羊を薦めてしまった張本人デス(笑)
いや…スゴイ量ですねvv でも…美味しそう〜〜!羨ましい〜〜!と、あくまで傍観者の目で楽しませてもらいましたが(笑)、前菜、パスタの後にコレは相当キツかったでしょうね…合掌…

私も同じくらいの量を食べますが、それは同行してる友人とシェアしてのこと。マナーとしてどうかと思うけど、食べれませんもん!!若い頃はペロリ!だったのになぁ〜(TOT)//

苦しくてツライ思い出となってしまったかもしれないけど、良くも悪くもコレで駄菓子さんにもアブルッツォの羊が鮮明に刻印されたことでしょう♪なんてったって「ヒツジ品」ですから(笑)

好物なのに、あの臭いが苦手というのは難しいですね。
この店の羊は、脂分が多かったこともあってか、新鮮そうではありましたが、羊特有の臭いはしていましたよ。
スルモーナじゃなくて、もう少し田舎の町にいけばいいかも。
いずれにしても、アブルッツォのヒツジ品なので、ぜひ次回はどうぞ。

羊、食べたいです。ちゃんとした羊、久しく食べてません。
実は私、羊は好物なのですが、あの臭いのが苦手であるため、鮮度が良くないのは避けています。結果、ずっと食べられないという状況になってしまうわけです。

ヒツジ品であるほどの名物なのだとしたら、次回は是非ともアブルッツォに行きたいと思いますが、しかし、メインの手間で倒れてしまっては何にもなりません。
前菜の時間差攻撃情報、大変に参考になりました。


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