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2012-07-03

知られざる山岳都市: セチナーロ

スルモーナをベースキャンプにしての山岳都市めぐり。
2日目の行先はセチナーロ(Secinaro)に決めた。
スルモーナの北西40kmほどのところにある村(町)で、バスは1日4往復が走っている。

途中からバスはぐんぐんと高度を上げ、目もくらむような崖を抜けて高原に入る。
そこからは、近くの村を一つ一つ丁寧にめぐって、1時間ほどで終点セチナーロに到着。

セチナーロ遠景

帰りのバスは、50分後か3時間半後である。
だが、山岳都市に来たら頂上まで登らないと気が済まない。そして、山岳都市らしい遠景も写真に収めたい。50分は厳しいが、試してみようかと思った。

頂上までの往復に約15分。中心の広場に戻ってきて、村で1軒しかないバールでコーヒーを一杯。
店を出ると、昼メシ前の暇つぶしに集まっているイタリア名物・親爺軍団20人ほどにあいさつをしたところで捕まった。

「まあまあ、座れ」
「どこから来た? 日本か。一人か?」
「日本の映画を見たことがあるけれど、奥さんのいる旦那が、別の女を連れて旅行に出かけるというストーリーなんだ。あれは日本の文化なのか?」
などなど、和気あいあいの雰囲気のなかで、さまざまな難問奇問に答えているうちに、帰りのバスはもう3時間半後にしようと決めていた。

セチナーロ旧市街

ところで、ここセチナーロは、イタリアの一般のガイドブックにもまず載っていない村である。
そんな場所にやってきて、しかも予想よりも素晴らしい姿の山岳都市だったりすると、ちょっとうれしくなる。

なにしろ、最近は「イタリアの小さな村をめぐっている」といっても、昔ほど威張れなくなったからだ。
訪れた町の名を口にしたとたん、「ああ、TCIの『イタリアの美しい村』に選ばれたところですか」とか「BS日テレの『小さな村の物語 イタリア』でやっていたのを見ましたよ」などという反応が返ってくることがある。
世知辛いご時世になったものである。

もっとも、BS日テレの『小さな村の物語 イタリア』のプロデューサーとディレクターとは、ひょんなことで知り合い、意気投合している。けっして不倶戴天の敵ではないことを付け加えておこう。

セチナーロの頂上から見た中心部の広場

では、ここセチナーロをどうして知ったのかといえば、数年前にアブルッツォ州の州都ラクイラで購入した地元出版社の写真入りガイドである。
薄くて小さな本のあちこちに、山岳都市のカラー写真があった。
そのなかの一つがセチナーロだったわけだ。
ちなみに、セチナーロが、まだ『小さな村の物語 イタリア』で取り上げられていないことも前日に確認済である(しつこい)。

とまあ、能書きはこのくらいにしよう。
3時間半後のバスに決めた私は、坂をぐんぐん下り、遠景がうまく撮れる場所を探した。
途中から道路を外れ、刺すような真夏の日射しを浴びながら灌木を抜け、ガレ場を登り、ようやく見つけたのが、トップの写真の場所である。

「さて、これから3時間近くどうしよう」
写真を撮ったのち、しばし考えた。
(つづく)

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

セチナーロは、昼前に出て夕方に帰ってくるというバス便があったのでラッキー。
よくあるパターンは、田舎町を朝に出て、中心都市に昼に着き、夕方に戻ってくるというもの。
こうなると、田舎町に泊まるところがあればいいけれど、そうじゃないと行けなくなるんですよね。公共交通機関を使う限り。

パチェントロはいい町でしたが、期待値が高すぎたからかそれほどでなく。
しかし考え方も同じでびっくり。行きにくいところから先に片付けるっていう。但しぢぶんの場合は、もうこの先いつホイホイ歩き回ることができなくなってもいいように、という消極的理由ですが(^^;
この辺りは道が山に阻まれて行きにくいことこの上ないですよね。だからこその山岳都市とはいえ(笑)終わりなき旅で宿題がたまる一方。しかも既に行った場所すらわかんなくなってしまう始末。整理すればいいんでしょうけど、なかなか。

そうですか。このあたりは、まだまだ山岳都市があるので、きりがないですよね。
ここには書かなかったけれど、パチェントロに行きそびれました。スルモーナの町はずれから写真を撮ったけど。今回は、行きにくいところから先に片づけたもんで。
モリーゼは、実際に行ってみると、いろいろと宿題ができてしまいました~。

セチナーロ、ぢぶんも地図にマーカーしてあったんですけど、思っていた以上に美しい形ですねー。駄菓子さんに感謝。

しかし、恐ろしいほど嗜好が重なっています。今回の旅行記に載っていたアブルッツォとモリーゼの町は見事なまでに全部重複(笑)。おかげでまだ行ってない町もあるのに、もう行った気になってしまいました。もう行かなくていいかも。宿題ありすぎるし。

ちなみにクレメンテの羊まで一緒……あれ以来「もう頼まない、肉の盛り合わせ」とつぶやいています。

偉そうなことを書きましたが、もちろん「I borghi più belli d'Italia」は昔から参考にしていますよ~
「bandiera arancione」とはどう違うんですか?
どちらもTouring Club Italianoの推薦だし。
あとは、TCIやミシュランなんかの州別地図で、マーク付きの町とかをネットで調べるとか。
私の場合、バスや列車の車内で、常に周囲をきょろきょろしていることも重要。そんなことをやっているから、また次回への宿題がたまっていくわけです (^^;;

冒頭、気迫と根性で見つけたベストアングル、ステキですよ〜vv どこだろ?って調べたら自然公園の中に位置してるんですね〜この辺りはそら、山やま山だろうなぁ〜

>>TCIの『イタリアの美しい村』
うへえ〜コレってbandiera arancione の事?もろ参考にしてますアタシ(笑) あとI borghi più belli d'Italia とか(^^ゞ 思うに…ガイドで紹介されてる、されてない…じゃなく、自らが選んで行く場所がステキな所だったらそれでイイですよねvv Secinaro その名前覚えましたよ♪

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著書

  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
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