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2011年9月の4件の記事

2011-09-24

那珂湊 平磯の町並み

7月に2回にわたって訪れたひたちなか市那珂湊。そのようやく最終回である。
ひたちなか海浜鉄道の終点・阿字ヶ浦から、蒸し暑い中を平磯まで延々約4kmも歩いたのは、前回書いた通りである。

その平磯の町並みが、なかなかいい雰囲気だった。
そこで、列車を待つ30分ほどの間、最後の力を振り絞って、小さな町歩きをしたのである。

海岸に下る道

これは、駅から町に向かう途中の下り坂。左に小さな神社が見える。
かなり疲労困憊していたが、こんな階段が見えたら登るしかない。

平磯を見渡す

これは、畏れ多くも神社の本殿に尻を向けて、海のほうを撮った写真である。
画面では見にくいかもしれないが、海が見えている。

平磯の古い家

階段を降りて、海岸に向かう坂道をくだっていくと、ところどころに板壁の古い家が見えてきた。
これもその一軒である。もっとも、妻面はトタンで覆われているが。

平磯の商店街

さらに海に向かっていくと、海岸線に沿って走る商店街に出た。
交差する道が、少しずれているのが味わい深いところである。

平磯の海岸近く

商店街はひっそりとはしていたが、今どきのシャッター商店街とは違って、元気に営業をしている店が多かったのは幸いである。

平磯地区は、かつては漁業で栄えた町だったという。
確かに、そんな時代の残り香が、あちこちに感じられる町並み、家並みであった。

2011-09-14

ひたちなか海浜鉄道・全線復旧の日

前回に続いて那珂湊の町歩きを書こうと思ったが、その前に、7月23日、ひたちなか海浜鉄道を再訪したときの話から。
今回は、まるで鉄道マニアのように、鉄道写真ばかりである。

23日は、地震で最後まで不通になっていた区間が復旧し、全線が開通した日であった。
当日は、国鉄色のディーゼルカーが走るということを確認しての訪問である。

中根付近の田んぼを行く2両編成

これで、仕事の写真も文句なし、と思ったのだが天気がいま一つ。
前回のような青空のもとで撮れればよかったのだが、まあそれはしかたがない。
まずは、中根付近の青々とした田んぼを行く2両編成を撮影した。
左に雑木林をちらりと入れたのがミソである。

ちなみに、全線開通の祝賀行事は翌週の30日にあったらしい。
23日当日は、那珂湊駅構内でささやかな飾りつけや物品販売があった。

阿字ヶ浦駅

そして、那珂湊を経由して、終点の阿字ヶ浦に。
この駅に列車が乗り入れたのは、震災の日から3カ月ぶりということになる。
もっとも、私にとっては、この駅に降りたのは30年ぶりである。

当日は1日乗り放題の乗車券を買ったのだが、そのまま阿字ヶ浦から那珂湊まで折り返すのもつまらない。
ということで、隣の磯崎駅まで歩くことにした。この区間は数百メートルだから、たいしたことはない。
ところが、途中から予想外の雨。
「東京はカンカン照りの快晴で暑い」という友人のツイッターを読みながら、じめじめした湿気と雨のなかを歩いた私である。

磯崎駅

この写真は磯崎駅に到着する下り列車。

ところで、この道中、家々を囲むブロック塀の最上部が、揃って壊れていることに気がついた。
一瞬、「なぜ、みんな揃ってブロック塀の工事しているんだろう?」と思ったが、当然ながらこれも地震の被害である。

ブロック塀全体が倒れることはなかったようだが、鉄筋の入っていない最上部の飾り部分が壊れてしまったのだ。

磯崎~平磯間にて

そして、磯崎駅に到着。
「ここまで来たら、もう一駅歩くか」と思ったのが大間違いだった。
ここは、駅間が4キロあまり。家並みも途切れて、周囲は田畑が広がる。
ときおり照りつける真夏の太陽のもと、平磯駅まで1時間近くかけて歩いたのであった。

ちなみに、高校時代に訪れた湊線の写真は こちら

2011-09-12

茨城県那珂湊 津波と海鮮丼

夏の思い出を語るには、まだまだ蒸し暑い今日このごろであるが、多忙でまとめることができなかった記事を、遅ればせながら公開したい。

まずは、7月17日の茨城県那珂湊(現ひたちなか市)。
仕事(一応)で、勝田から出ている第三セクター私鉄・ひたちなか海浜鉄道(旧・茨城交通湊線)に乗りに行ったときのことである。
某編集者から、旧国鉄色の車両を撮影することを依頼されていたのだが、当日はダイヤを確認せずに出るという初歩的なミス。目当ての車両はすべて、終日車庫の中に眠っていた。

しかたがないので、締切り前に再訪することにして、あっさりと仕事は終了。
ぶらぶらと町歩きをすることに決めた。高校生のとき以来だから、30数年ぶりである。

那珂湊駅

これが那珂湊駅。駅舎はたぶん当時のままだろう。
この真っ青な空を見ると、当日の暑さを思い出す。

まず、駅前の食堂で冷し中華を注文。
おばちゃんが一人でやっていた。なかなかウマい。
店内には、ひたちなか海浜鉄道の写真が所狭しと貼ってあった。

第三セクター化されてからは、地域の人の知恵や力を借りて、いろいろなイベントをやっているそうだ。

木造商家「あさ川 那珂湊店」

駅前を走る県道を渡り、古い町がありそうな場所をうろうろ。
まず目に入ったのが、この立派な木造商家。和菓子屋であった。
看板には、「銘菓の老舗 水戸 あさ川 那珂湊店」とあった。

那珂湊

ぽつりぽつりと古い家があるものの、空き地も多くて、いま一つ活気が感じられないのが寂しいところである。
真夏の太陽を浴びて、あとの楽しみは「那珂湊おさかな市場」で刺身を食べること。
ひたすら漁港に向かって歩いていった。

那珂湊漁港近く

港に近づくと、釣りをしている人の姿も見えて、のんびりした感じ。
と思ったが、海岸近くの地面はこうだった。津波のせいか、舗装した部分がぼろぼろになっていたのである。
漁港の建物は写真左奥にある。そこに行くと、駐車場の柱に「津波はこの高さまで来ました」という手書きの貼り紙があった。最大の津波の高さは4メートル以上に及んだと聞く。
それでも、那珂湊地区で人的被害がないというのは幸いであった。

漁港近くにある「おさかな市場」でも大きな被害を受けたそうだが、すでに営業を再開していた。
まだまだ賑わっているというわけではなかったが、人も集まりはじめていたようだ。
私は、市場と町の復興を願って……なんていう照れくさいことは思いも寄らず、ただひたすら腹が減ったので海鮮丼を食べたのであった。

中根駅

最後の写真は、那珂湊の隣の無人駅、中根駅である。
このときはまだ、震災の影響でひたちなか海浜鉄道の一部区間が運休していた。
全線の運転が再開されたのは、その1週間後である。
その日に私は再訪することになる。

2011-09-11

日暮里・諏方神社 露店と里神楽

8月28、29日に日暮里の諏方(すわ)神社で祭礼があった。
13世紀に信州の諏訪神社から勧請されたものだそうだが、昔からの慣例で諏方神社と表記されている。
家から歩いて行ける距離なので、所用のあとで妻と露店めぐりをした。

諏方神社の露店

最初のうちは、「祭りの露店など、別に珍しくもないだろう」と思っていたが、神社に通じる狭い道を歩いていくうちに、だんだんと気分が高揚してきた。
いつもは静かな道の片側にずらりと露店が並び、人でごったがえしているのだ。

諏方神社の露店

だが、それは単なる導入部に過ぎなかった。
諏方神社の境内には、露店がそれこそ所狭しと並んでいて、露店をめぐる道は迷路のように枝分かれしているではないか。
そこには、食い物屋や金魚すくいだけでなく、射的や輪投げまである。
上の写真が射的の露店。子どもよりも、お父さんのほうが真剣な表情だ。

諏方神社の露店

そして、これが輪投げ。
神社というと、この近辺では坂を下った先にある根津神社が有名だが、あちらの祭りで見た露店よりも、どこか猥雑な感じがしてよろしい。
ふだん見る神社の様子も、朱塗りの大きな建物が並ぶ根津神社とくらべて、ずっとこぢんまりとしており、どこか古代の神社の姿を残しているように見える。そして、その分だけ、プリミティブな力を感じるのだ。

諏方神社の露店

さして広くない境内に、よくもこれだけの露店が入ったものだと驚いた。
この写真は、一心不乱にあんず飴をつくるおばちゃん。
「街の風物詩」と自分で書いているところがおかしい。
そういうことって、見る立場の人間が使う表現のような気がするが。

奉納演芸

そろそろ帰ろうかと思っていたら、テケテケテケテケ、スットントンと太鼓の音が聞こえた。
神楽殿で奉納演芸がはじまったのである。
狐の面を付けた演者と、ひょっとこに似た面の演者とのユーモラスな掛け合いである。

バックの帳を見ると、「松本源之助」と記されている。
家に帰って検索したら、あった。
松本源之助社中は、国の重要無形民俗文化財で、松本氏は江戸里神楽土師流家元。今の源之助氏は四代目のようである。
プロフィールと芸歴がなかなかユニークである。
海外公演も各地でやっているようだが、スペインのセビリア万博日本館のオープニングセレモニーに出たというのが目を引く。スペイン人の反応を見たかった。

さて、今年の日暮里諏方神社の祭りは、3年に一度の本祭だったそうだが、本社みこしの渡御は自粛だとか。自粛して震災の復興が進むのなら話は別だが、こういうときこそ景気よく神事をしたほうがいいのではないかと思う。

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著書

  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
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