« マッサ・ヴェッキア--野道の散歩 | トップページ | 「タルクイニアの王」に集う人びと »

2011-07-12

タルクイニアの20世紀的ホテル

最終日に宿泊した、ローマ北方・タルクイニアのホテルの話である。
イタリア国内でホテルを探すときは、よくvenere.comを利用しているのだが、タルクイニアのホテルを選ぶときには少し迷った。
よさそうな宿泊施設が2つ見つかって、1つは3つ星ホテルで40ユーロという安さ。もう1つはゲストハウスなのだが、その3倍近くする。で、バスターミナルから遠い。

どちらか迷っていたところ、3つ星ホテルの利用者評価を見て興味をもった。
「清潔で手頃」として高評価をつけた人がいる一方で、「お粗末、設備が古すぎる」とゼロ評価に近い人がいる。これは一度見ておかなくてはならないと思って、そのホテルを選んだ。
タルクイニアのHotle Tarconte (ホテル・タルコンテ)である。

ホテル・タルコンテの客室

城壁のそばというので、バスターミナルから近いのかと思いきや、別の門だったのには参った。
雨の中、道に迷いながら石畳の上を荷物を引っ張っていくのは大変であった。
「ホテルの場所はすぐにわかった」という利用者の評価は間違っていると思ったが、その人は車で来たのだとわかった。確かに、ホテルは丘の斜面に建っていて、ふもとから見ればデカデカとした看板がよく見えるはずである。

古典的な電話

フロントやロビーは狭いけれども、確かに昔はこんなホテルばかりだったよなという感想。
フロントの奥には、宿泊者名簿らしきファイルが棚にぎっしりつまっていた。

で、客室はどうかというと、この写真のような感じ。
とても清潔である。
それにしても、20年以上前のイタリアを旅行した人ならば、懐かしく感じるものの数々である。
このクローゼットも電話も見覚えがある。

テレビ

テレビはもちろん薄型ではなく、中天高く据えつけられているのもよくあったっけ。
テーブルとイスも懐かしい感じ。
ホテル向けのお決まりの調度だったのか。

激しいデジャ・ビュに襲われる私。
重たい鎧戸をあけて、外の光を取り入れ、木のドアをギシギシと開けて浴室に向かう。

ここでもまた、デジャ・ビュに襲われた。

ホテルの室内

シャワー室は、カーテンで囲うだけの簡素なもの。カーテンの色が赤だというのは、ちょっと変わっているが。
洗面所には、小さな固形石けんが1つ。もちろん、シャンプーとかシャワージェルなんてものはない。
そういえば、昔はみんなこうだったっけ。

このときのイタリア旅行最後の夜を過ごすにはぴったりの、ノスタルジックなホテルであった。
もっとも、昔を知っているから懐かしく思うのであって、新しいしゃれたホテルしか知らない人にとっては、古くさくて不便なホテルにしか見えないだろう。
そのあたりが、確かに評価の分かれるところである。

110712e

venere.comによれば、40年来、同じ一家が経営しているのだそうだ。
わざわざそんなことを書くというのは、イタリアではかなり珍しいんだろうか。
確かに、家族経営ののどかさがあってよかったが、帰りにフロントにいたお母さん(といっても50代後半くらいのスマートで背筋のすっと通った人)が、笑顔をちっとも見せない人であった。

それだけならいいのだが、前日に私がカードで支払いを済ませているのに、宿泊費を請求する。
ポケットに控えがそのまま入っていたこともあり、すぐに、あちらの誤りであることがわかったのだが、謝罪するでもなく笑顔になることもない。

そんなあたりも、昔ながらのイタリアが楽しめるホテルであった。

« マッサ・ヴェッキア--野道の散歩 | トップページ | 「タルクイニアの王」に集う人びと »

イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

この客室に入ったとたん、ikeさんが喜びそうだなと直感しましたよ!

洗面台に石けんがひとつ、無造作に置かれている風景に、涙が出そうです。
とてもいい写真をたくさん、ありがとうございました。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« マッサ・ヴェッキア--野道の散歩 | トップページ | 「タルクイニアの王」に集う人びと »

著書

  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
無料ブログはココログ

.