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2010年11月の2件の記事

2010-11-21

晩秋の廃線跡----西武安比奈線

週末に、図らずも廃線ウォークをすることになった。
行き先は、西武新宿線南大塚駅から分岐していた安比奈線である。
埼玉県の川越市内にある貨物線の廃線跡で、1960年代のなかばまで、入間川の砂利を採取するために運行されていた。
東京からも近く、マニアにはよく知られた存在だが、恥ずかしながら私は初めての訪問であった。

安比奈線廃線跡

実は、仕事の鉄道雑誌のコラムで使うために、写真が1枚必要だった。
しかも、モノクロページである。
そのためだけに、年末進行の忙しいなか、電車賃と時間をかけてやってきたわけだ。

安比奈線廃線跡

もっとも、仕事が気になって落ち着かなかったのは最初のうちだけ。
貨物線跡ということであまり期待していなかったが、思いがけない雰囲気のよさに徐々に引き込まれて行った。
30年ほど前、九州や東北の山の中まで森林鉄道の跡を追っていった私は、近ごろの廃線ブームに対しては斜に構えていたのだが、ここは悪くない。

安比奈線廃線跡

この路線のメインイベントは、雑木林を突っ切る区間である。
ただし、立入禁止になっているので、よい子は柵の外から撮ることになっている。
黄色く色づいた葉を、晩秋の夕日が鮮やかに照らし出していた。

2010-11-14

日本国、飯田橋、ラグタイム

東京の飯田橋にラグタイムという喫茶店がある。
定員はカウンターを含めて20名ほど。
1986年に、30歳で脱サラをしたマスターがはじめた店だ。

最近は、安いカフェが雨後の筍のごとく開店して、個人経営の喫茶店はなかなか大変だと思うのだが、マスターは「金がない、金がない」と言いつつ、ひょうひょうとコーヒーをいれている。

カフェ・ラグタイム店内

私は、当時の仕事場が近くにあったこともあり、今でもわざわざ地下鉄に乗って、週に2、3回顔を出している。
そんなヒマ人が常連に何人もいるのは、マスターの人柄なのかもしれない。

喫茶店のマスターというと、個性的な人が多く、職人肌でとっつきにくいという印象があるが、ここのマスターは正反対である。
よくも悪くも人畜無害、どんな人にもへらへらと調子よく話を合わせることができる。
だから、どんな客も気後れすることなく、安心して店を再訪できるのだろう。

さて、今年の秋もまだ浅いころ。
この店に台湾の若い女性が訪れたという。
ただでさえ入りにくい、間口が狭くて半地下の店に、よくぞ入店したとは思う。
台湾の日本料理店で働いていた日本人の同僚に、飯田橋でランチのおいしい店を教えてもらい、そこで食事をした帰り道、たまたま目に入ったのだそうだ。

カフェ・ラグタイム

落ち着いた店内、BGMのモダンジャズ、まあまあおいしいコーヒー、そしてマスターの人畜無害ぶりに感心したのだろう、いろいろと話をして最後には一緒に記念写真を撮ったのだとか。
かわいい女の子だったらしいが、そこで「僕が東京を案内しましょう」とか「今度、台湾に行ったら連絡しますね」なんて言わないところが、このマスターの美点でもあり弱点でもある。

それはさておき、そんな出来事も記憶から消えかかった先日、台湾から1通の手紙が届いたそうだ。
その封書の宛名書きにはこう書かれていたという。
「日本国 飯田橋 ラグタイム」

これだけで、たった10坪ほどの小さな喫茶店に国際郵便が届くのだから、日本の郵便事業はたいしたものである。
手紙には記念写真が同封されていたそうだ。

中国語繁字体で書かれた手紙には、簡単なお礼のことばが書かれていたらしい。
もったいぶって見せてくれなかったけど。

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著書

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  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
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  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
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