シンガポールの中華街 1989年
寒くなってくると思い出すのが暑い国を旅行したときのこと。
行ってみると、「もう暑いのは嫌だ」と思うのだが。
1989年3月、タイ、スリランカ、インド、ネパールを経てシンガポールにやってきた。
前もって聞いていたとおり、よくも悪くもきれいな町だったが、そんななかで心ひかれたのが昔ながらの中華街。上の写真のように、どこか絵のなかの世界のように見えた。
夕方になると人通りも多くなり、勤め帰りの人が次々と食堂に吸い込まれていく。
レストランというのではなく、まさしく食堂である。
広い間口はすべてドアが開け放され、通りから丸見えだ。店内には、まさに大衆食堂でよく見かける安っぽい4人用のテーブルが数えきれないほど不揃いに並び、そのテーブルの両側では満員の客がみないっしんに箸やスプーンを動かしている。
もちろん、私もぶらぶらと夕方の散歩をしたのち、客が少なくなったころを見計らって、その店で晩飯を食べた。
いわゆるチリソースの炒め物が、実にクリアで刺激的な味だったことを覚えている。
だが、時間がとまったような中華街も、まもなく姿を消すことは予備知識のない旅行者にも容易に想像できた。
周囲には近代的なビルが迫り、そうした新しい町との境界あたりでは活発に建築工事が行われている。
最後の写真にあるような、古い町並みには不似合いな歩道橋も建設中だった。
その後の情報によれば、古い中華街が取り壊されたのち、客寄せのために外見を真似た観光施設やショッピングセンターが建設されたという。
だが、地元の人にはあまり評判がよくないそうだ。まあ、そりゃそうだろうと思う。
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