バハレイヤのシャンゼリゼと砂漠の冷凍魚 2001年
2001年エジプトの旅
カイロから路線バスで砂漠を4時間あまり、オアシスの町バハレイヤにやってきた。
町の中心地がこの写真である。
殺風景な通りに見えるが、商店が建ち並んでいる。
暑い日射しを避けるため、ちょっと引っ込んだつくりになっているのだ。
もちろん、食堂もあれば果物屋も喫茶店も薬屋もある。
ここが、このオアシス随一の、いや唯一の繁華街なのだ。
町外れにある「ホットスプリングホテル」のオーナーであるドイツ人のペーターは、笑いながら「ここは、バハレイヤのシャンゼリゼなんだ」と教えてくれた。
ちなみに、彼の奥さんは日本人である。
町の人気者の彼がここを歩くと、10メートル進むごとに人に呼び止められ、そのたびに話好きのエジプト人に10分以上つかまってしまう。
バハレイヤのシャンゼリゼには、昔ながらの商店もあれば、この写真のように最近になってつくられたような店もある。
画面中央、赤い文字で書かれた看板がかかっている店は、大衆的な食堂である。
町にやってきてすぐ、このあたりをぶらぶらしていたら、中年の男性に1枚の紙を手渡された。
ざら紙に何やらアラビア語が書かれたチラシのようなもので、魚の絵が描いてある。
招かれるまま薄暗い小さな店に入ると、がらんとした店内に大きな箱が1つ置いてある。
彼がそのふたを開けた。
見ると、冷凍された魚がぎっしりと詰まっているではないか。
新装開店の魚屋だったのだ。
「砂漠のまんまんなかで魚屋かあ!」
最初は驚いたが、よく考えてみれば、いい商売になるかもしれない。
ちょっとしたベンチャービジネスなんだろう。

翌日、車で町めぐりをしてくれるというペーターにそのことを話すと、彼は非常な興味を示す。
結局、行きがけに店に立ち寄ることになった。
で、その店の近くに車を停めたのだが、それからが大変だった。
店までは30メートルほどしかないのだが、例によって次々にエジプト人につかまる。
店に着くまで30分ほどもかかっただろうか。時速60メートルである。
さすがの私もただ茫然とするばかりだったが、奥さんは「いつもこうなのよ」と平然としていた。
契約は、どうやら即決であったらしい。
「ホテルのメニューに魚が加わるぞ」とペーターは喜んでいた。
もちろん、決まってからも、彼らが長々と世間話をしていたのは言うまでもない。
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