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2009-07-18

マルケ州の宝石: アスコリ・ピチェーノ

 今回のイタリア旅行の主な目的は二つ、リグーリア州とマルケ州だった。
 マルケ州というのは、イタリアを長靴に例えるとふくらはぎの上のあたり。恥ずかしながら、州都のアンコーナ以外、じっくりと腰を据えて滞在したことがなかったので、まずはアンコーナ以外の2大都市であるアスコリ・ピチェーノとウルビーノを訪ねることにした。

ポーポロ広場

 アスコリ・ピチェーノは、鉄道で行くとアドリア海沿岸のサン・ベネデット・デル・トロントからローカル線で40分ほどの山の中。トロント川とカステッラーノ川にはさまれた台地の上にある町で、人口は5万人強である。山の中をえっちらおっちらやってきて、そこに大きな町があるというのは、イタリアならではの感動だ。

ポーポロ広場
 
 この町にやってきてすぐに思った。「ここには2、3カ月滞在してもいいかな」と。
 雰囲気はペルージャやスポレートのようなウンブリアの町と似ているのだが、建物に使われている石の色が明るいからなのだろうか垢抜けた感じがする。町を歩く人も、どことなく上品で落ち着いているように見えたのであった。

アッリンゴ広場

 アスコリ・ピチェーノの素晴らしさは、この5枚ほどの写真ではとうてい表現できるものではない。
 フィレンツェやアッシージにあんなに観光客が押しかけるのなら、この町だってもっと人気が出てもおかしくはない。ただ、交通が不便というだけで、人が集まらないのは不幸だという人もいるかもしれないが、私にとっては幸せこの上ない気分であった。

ポンテ・ヌオーヴォ

 残念ながら1泊しかしなかったが、数日くらいは滞在してもいい町である。
 夕食は、リストランテ・デル・コルソという店にしたのだが、夕方に予約に行くと、50代なかばとおぼしき店の親父がいうには「うちは魚料理専門だけど、いい?」とのこと。こんな山の中で……と思ったが、海からだって1時間以内でたどり着けるのである。
 心を決めて予約した店では、実に素晴らしい魚料理と白ワインを堪能することができた。

オリーヴェ・アッラスコラーナ

 町の中心部自体は1、2時間もあればまわれる程度の大きさ。翌日も、朝からぶらぶらと歩きまわる私であった。
 そして、ようやく見つけたのが、アスコリ・ピチェーノ名物の「オリーヴェ・アッラスコラーナ(Olive all' ascolana--アスコリ風オリーブ)」。オリーブの実に挽き肉を詰めて、油で揚げた食べ物だ。ちょっともたれそうだなと思っていたが、1つ食べるとまたもう1つといった具合に、あとを引くスナックである。
 観光名所としては、とくにめぼしいところはないのだが、どこか心引かれる町。地味なマルケ州にあって、きらりと宝石のように光る町、それがアスコリ・ピチェーノなのであった。

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

アマレットさん、ごぶさたです!
そういえば、昔のニフティの伊組では、神無月さんが「アスコリ・ピチェーノはいい」と言っていたような記憶が……。
ウルビーノに行く日本人はまだ多いのですが、アスコリはあまり知られていませんよね。
そんな、飲んだくれ……もとい、素敵な体験をしたなんてうらやましい。
野郎一人が相手じゃ、そうはいきませんよね。

どうもです。アスコリ・ピチェーノには2005年の夏にアドリア海ドライブ旅行から回って1泊しました。建築家の同行者がイチオシというだけで、全く予備知識なく行ったのですが、予想を超える素敵な街でした。
(ここから先は、酒呑みじゃないと共感できないかもしれませんが)
全員飲んだくれのメンバーだったので、まずは広場に面したカフェの外の席を陣取り(Melettiの前だったけど、あそこの席だったかな?Melettiといえば、あそこの内装も建築家的には貴重なんだそうで、古めかしいバールカウンターとか、デコラティブな柱とか・・・)カンパリソーダとかスプマンテとかだらだら飲みながらぼんやり眺めた、だんだん暮れゆく夏の宵どきの美しさといったら!思わずみんな無口になってました。
その後、ホテルのレストランで食事してたら、金曜の夜というのもあってか、街の寄り合い所か?てな賑わいで、深夜過ぎても誰も帰らない。仕事が終わったカメさんたちも私たちのテーブルに集まって来て、皆で食後酒を飲みました。ちなみにそこから後は(私たちのことだからグラッパ1本以上飲んだんですが)料金ついていませんでした。
いわゆる「夢のような一夜」というやつですね。

POOh!さん、ごぶさたです。ニアミスでしたか。
現地ではカルトッチョといっていたんですが、よく調べるとこれは「包み揚げ」の意味なんですね。
やっぱり正しくは「オリーブ・アスコラーノ」みたいなので、本文も修正しておきます。
それにしても、あとをひくんだなあ、これが。
ビールもまたよし、地元のあっさりめの白ワインでもいいような。

野生のアニスのリキュール入りボンボン! 知っていれば買った。
アニスとかリクイリーツィア(リコリス)って、目がないんです (^^;;

今回はエミリア・ロマーニャとリグーリアがメインだったんですが、あまりリグーリアに期待していなかったので、「かねてから念願のマルケにも行ってみよう」というノリ。
だから、この2つの街だけなんです……。
でも、勝手がわかったので、次回はもっと掘り下げるぞ!

駄菓子さん、おかえりなさい&ただいまです。アスコリ、結構ニアミスだったかも。車で20分くらいのとこにはいたんですけど。

私がアスコリに行った理由はDuomoとPinacotecaのCrivelliを見に&フェデちゃんが100近くあった塔を壊しまくった街だから〜でした。このOlive Ascolane、カルトッチョとも言うんですね。普段はワインの私も、これ食べる時にはビールが欲しくなります!屋台で売ってるとは知らなかった。もひとつアスコリに行くと必ず寄るのがCaffe' Meletti、必ず買うのが1個食べると酒気帯び運転かも〜な、野生のアニスのリキュール入りボンボン。って、こういうの男の人(あえてオッサンとは言いません^_^;)は興味ないか?

ウルビーノも楽しみにしてまっす!
マチェラータとかセニガッリア(ここは食い気のみ!)とかイエージとか…今回はナシ?

ジョバさん、なんとか間にあいました!
急いでウルビーノもアップしますぜ。

この「カルトッチョ」を売っていたのは、アッリンゴ(Arringo)広場の南西端にある店先です。
ほかでは目にしなかったので、まずここを探すのがいいかと。
アスコリ・ピチェーノの形容詞形は、アルコリ・ピチェネーゼかと思ったら、アスコラーノでした (^^;;

アトムズさん、文中では「数日くらいは滞在してもいい」と書きましたが、やっぱりそれじゃ飽きるかもと思いなおしました (^^;;
このあたりは山に近いので冬はキビしいと思いますよ。雪も降るでしょうし。

やた〜〜!!マルケっ、アスコリ〜♪駄菓子さんラブ〜♪(笑)
アスコリピチェーノは私も行ったことなくて楽しみなんです。
それと、この名物オリーブ揚げもまだ食べたことなくて…クッ…(涙)
こんな屋台があるなんてシュテキ!私も探して食いついてきたいと思います。
片手にワインがあればモァ〜ベタ〜ですね。

 駄菓子さんの写真と紹介文で、是非行ってみたくなりました。マルケは不便で短い日数だとなかなか行けないのですが、ウルビーノと組で、行ってみようかな?でも、冬は避けた方が賢明でしょうか(^_^;)?

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