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2009-05-26

駒込富士神社でロレンツォ・ディ・メディチを想う

 病み上がりのまま仕事が超多忙モードになってしまったので、なかなか外を出歩く時間もない。それでも、体力を回復する必要があるから、太陽の光を浴びながら近所の散歩ぐらいはしようと心がけている。

 今日は家から5分とかからないところにある駒込富士神社に行ってきた。
 駒込というと、六義園や旧古河庭園が有名だが、スケールはくらべものにならないものの、富士神社の境内もなかなか味がある。

駒込富士神社境内

 富士神社という名前からもわかるように、江戸時代の富士講と関係しているらしい。神社の本殿は急な階段の上に建っており、この小山を富士山に見立てているのだろう。
 そこまでは勘づいていたが、駒込に20年も住んでいた初めて知った事実もあった。

 かつてはこの富士神社は本郷にあったというのだ。だが、前田家の屋敷がつくられたために、現在の土地に移転したのだと現地の看板に書かれていた。
 前田家の屋敷といえば、いまの東大の構内である。以前から、あそこに本富士町という地名があることを不思議に思っていたのだが、これで合点がいった。

本殿への階段

 がらんとした境内では、小学生が野球をして遊んでいた。野球といっても、プラスチックのバットとゴムボールのようである。
 境内には大きな木が茂り、とても山手線内側の21世紀の風景には見えない。

 本殿への階段は非常に急で、子どもや年寄には見るからに危険である。
 こんなこんもりとした塚を誰がつくったのだろうと思っていたら、それの答えも書いてあった。
 古代の前方後円墳らしいというのである。へえー。
 確かに、板橋区あたりをうろうろしているうちに、あちこちに古墳の跡があることを知ったのだが、こんなところにもあったのだ。

階段の上からの眺め

 階段を降りると、さっきまで野球をやっていた子どもたちが、サッカーボールを持ち出しているではないか。
 なんという変わり身の早さ。
 彼らはあっというまに靴で地面にラインを描いて、ボールを蹴りはじめた。
 久しく、子どもたちがこんなに伸び伸びと遊んでいる風景は見たことがなかった。

 一緒になって遊びたいところであるが、彼らとは40歳ほども年が離れている。不審者と思われるのもなんだし、さすがにやめた。
 その代わり、偽インテリである私は、彼らに一片の詩を捧げることにした。他人のつくったもんだけどね。

駒込富士神社境内

 フィレンツェのメディチ家最盛期の当主であるロレンツォ・イル・マニーフィコ(大ロレンツォ)こと、ロレンツォ・ディ・メディチがつくった有名な「Il trionfo di Bacco e Arianna」(バッカス<バッコ>とアリアドネ<アリアンナ>の凱旋)という詩の冒頭である。

Quant'è bella giovinezza,
che si fugge tuttavia!
Chi vuol esser lieto, sia:
di doman non c'è certezza.

(以下、二邑亭駄菓子による21世紀日本語訳)
若いっていいね
でも、あっという間のことなのさ
楽しくやるのがいいよ、ね
明日のことなんかわかんないし

 大学時代のイタリア文学の授業で教わった詩である。まだまだ純情だった私のセンチメンタルな心を、いたく揺さぶったものだった。
 3行目あたりが、ちょっと意訳だけど許してね。
 ちなみに、一般的な訳は、ここここをご覧あれ。

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コメント

なるほど~、一本とられました!
昔は、東京都心でも狸穴や溜池なんて、味わい深い地名がたくさんありましたね。
溜池のほうは地下鉄の駅名や交差点の名前に残っていますが、狸穴はビルの名前にあるくらいなのかな。

うちの母が若かりしときに、狸穴にアルバイトに通っていたことがあるのだと。たぶん昭和20年代ですね。
「狸の穴と書いて、まみあなと読むのよ」とよく話してくれたので、たまたま小さいころから知っていましたが、今じゃ読める人も少ないかも。

こんにちは、駄菓子さん。

>でも、狸が出入りしていたら何になるんでしょうね。

そりゃあ、狸穴町でしょう(^^ゞ

なるほどね。
でも、狸が出入りしていたら何になるんでしょうね。

ところで、奈良や京都の古墳を掘れば、興味深いものがたくさん出てくるだろうけど、東京や埼玉の古墳には何が埋まっているのか?
掘ってみようという話をあまり聞かないけれど、なぜでしょうか。

古墳のあったところには、稲荷神社ができる、って中沢新一が言ってた気がする。古墳を狐が巣穴にして、ちょろちょろ出入りするからだ、とか何とか。

ま、掘ったら人骨が出て来て、ビックリした人が「他の人が掘らないように聖域にしちゃおう」と神社を建てるって分かる気がするけど。

アナーキストにして純情でセンチメンタルな偽インテリのikeさん、こんにちは。
最初この詩を読んだときには、ちょっと安っぽさを感じたのですが、今になってみるとシンプルでいいなあという気がします。

siaって、ここではessereの命令形ですよね。
あ、でもikeさんにとっては、もっと深い謎や疑問があるんでしょうね。

雨で散々な目にあっても、私をなじらないでくださいね。

づかどんさん、ごぶさた。
最近、飲み食い歩きはしていますか?

で、おほめの言葉ありがとうございます。
「青春はうるわし」ってくると、ちょっとこそばゆいですよね。

私は大人になった今も純情でセンチメンタルな偽インテリですが、やはり、この詩がとても好きです(ただし、siaの部分を除く。私には意味わからないので)。

「明日のことなんかわかんないし」というフレーズ、原文も訳もいいですね。
週末にバイクツーリングを予定していて、天気予報をずっと気にしてましたが(雨が降るらしい)、これ読んで、雨天決行に決めました。

]ご無沙汰してます。

口語体の訳も結構いいですね。

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著書

  • 辞書には載っていない⁉ 日本語[ペンネーム](青春出版社)
  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
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