« サルデーニャのネコ | トップページ | プーリアの私鉄「南東鉄道」で目撃した「事件」 »

2009-01-20

からすみのカルパッチョ

 間があいてしまったが、しつこく昨年11月のイタリア旅行の話である。
 サルデーニャ島北西部の都市、サッサリに2泊したのだが、2泊ともレストランが当たりであった。
 2日目に行ったのは都心にある庶民的な店「カステッロ(Castello)」。

レストランの店内

 猛烈にウマいというわけではないが、値段もそこそこで雰囲気も上々。ピッツァもあるし、ここなら一人でも気楽に来られることだろう。

 前菜を選ぼうとして、メニューで目にとまったのが「ボッタルガ(からすみ)のカルパッチョ」。
 からすみはサルデーニャの名物であるが、一般的にはパスタの上に粉がかけられていたり、向こうが見えるほどの超薄切りで乗せられているのしか見たことがない。

「これなあに?」
 注文をとりにきた30代後半とおぼしき女性に尋ねると、彼女はていねいに説明してくれた。
「○★▼×(たぶんボラのことだと思う)の卵を■◇▲して(たぶん加工方法のことだと思う)、それから圧縮して、※■△して(以下不明)……」

 いや、からすみの作り方を聞いてるんじゃないんだけど……と言おうとしたが、これ以上話しても混乱しそうなので、ドゥオーモの舞台から飛び下りた気分で、それを頼むことにした。
 そして、出てきたのが下の写真の皿。

からすみのカルパッチョ

「なるほどね」と、妻は一人で納得したようだった。「生っぽくて、オリーブオイルがかけてあるからカルパッチョなのよ」
 それは、日本酒のつまみとしてもイケそうな一品であった。
 これを、私たちはサルデーニャ島の白ワインで唯一のDOCGである「ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ(Vermentino di Gallura)」でパクついたのである。
 このワイン、1杯飲んだだけでは、単なるさっぱりした白ワインという印象だが、飲めば飲むほど海の幸との取り合わせが抜群である。

ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ

 じつは、このワインのことは、マコメールからサッサリに来るときに利用したバスの運転手から聞いたものだ。
 数人の乗客しかいなかった急行バスの車内で、一番前に陣取った私たちに向かって、50代半ばくらいの運転手は、ひたすらしゃべり続けた。
 もちろん、「走行中は運転手に話しかけないように」という表示があるのだが……。
 そうか、運転手が話しかけるのはいいのか……。

 それにしても、音のうるさい旧型のバスのなかで、イタリア語を聞き取るのは疲れる作業である。この移動の1時間を休息に当てようと思っていた私はすっかり当てがはずれてしまった。
 それはいいのだが、会話をするときに、いちいちこちらの顔をみるのはやめてほしいものである。イタリアのバスや車でいつも感じるのだが、イタリア人の感性では、脇見運転をすることよりも、相手の顔を見ないで話すことのほうがはるかに避けるべき行為なのに違いない。

 彼によれば、息子が近くの町でシェフをしているのだとか。サッサリのおいしいレストランもよく知っていて、私たちに推薦してくれたというわけだ。

アルゲーロの赤ワイン

 次の写真は、1日目に行ったレストラン「ジャマラント(Giamaranto)」で飲んだワイン。白ワインのボトルを3人で空けたあと、赤ワインのハーフボトルで魚にも合うものと言って頼んだら、「カンノナウじゃないけれど」とニヤリとして持ってきてくれた品である。
 たぶん、「観光客はサルデーニャの赤ワインというと、中部でできるカンノナウしか知らないだろうけど、北西部でできるこっちのほうがウマいんだ」という意味が、あのニヤリに込められていたのだろう。たしかにウマかった。

 このレストランは、新市街の住宅地のまんなかにあって、「えっ、こんなところに」という立地なのだが、じつに洗練されていてよろしうございました。
 地元のちょっとおしゃれななじみ客に取り囲まれて、まったく場違いな私たちだったのだが、店の人のやさしく丁寧なサービスぶりにも好印象を持ったのであった。

090119e

 最後の写真は、2日目の店で食べたパスタ。サルデーニャの地方料理ということだが、すいとんにトマトソースとチーズをかけたような感じであった。

« サルデーニャのネコ | トップページ | プーリアの私鉄「南東鉄道」で目撃した「事件」 »

イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

ikeさん、鋭い指摘。
確かに微妙な画風です。
題材は、サッサリの町のお祭りで、ぼんぼりのお化けのようなものを山車のように移動していくようです。
店の人の知り合いが描いたんでしょうか。

どくとるくまさん、こんにちは。
なるほど、ドイツ人もそうですか。
とすると、イタリアだけじゃなくて欧米人共通なんですね。
そっぽ向いたままだと、失礼だと思うんでしょうか。
それとも、相手の反応を見ないと心配なのかな?

レストラン店内の巨大な絵画がいい感じです(画風が微妙で)。
こういう雰囲気の店は、当たりが多いという気がしてます。
たいした根拠はないんですが。

駄菓子さん、こんにちは。
イタリアシリーズ、いつも楽しみに見せて頂いています。

私の夫も運転して話しながらいつも私の顔を見るので、「顔は前!」「こっち見んでよろし!」というのが私の相槌代わりになっています。
ですので、これを読んで思わずにやりとしてしまいました。

minaさん、それが日本で食べるからすみと同程度の生具合でした。
でも、ほんのちょっと生臭かったかな。
そういえば、マグロのボッタルガもあるといいますね。
念のため、お土産で買ってきたボッタルガを冷蔵庫で確認したら、Bottarga di muggiaと書いてありました。
ボラって、muggiaっていうんですね……初めて知った (^^;;

メルクルさん、おめでとうございます。
イタリアでは、料理の言葉は難しいですね。
同じものでも地方によって呼び名が全然違いますし。毎回苦労してます。
さすがに、バスの運転手は両手離しはしていませんでした (^^;;

ボッタルガのカルパッチョは初めて聞きました。
普通のボッタルガよりも半生タイプなのでしょうか?

やっぱり、サルデニアへ行かねばと思いました。

シチリアで買ったカンパチのボッタルガは本当に美味しかったです。
マグロよりもずっとずっと。
サルデニアのは全てボラなのですか?

お早うございます

遅ればせながら 明けましておめでとうございます 今年もどうぞよろしく♪ 

朝食をすませてて よかった! 相変わらず 美味しいものを召し上がってますね~^^

やっぱり 普通の観光客じゃ こうは行きませんよね。。

言葉が理解できるからこそ こういった地元の人たちに近い物を食べれるんですよね~

そうそう 日本の交通安全協会の人が聞いたら 目をむいちゃうように 向こうの人って 運転してても 平気で後ろ向くし 両手離して しゃべりますね・・・しかも かなりのスピード出しながら(良くぞ 今回もご無事でw お帰りなさい♪) 

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« サルデーニャのネコ | トップページ | プーリアの私鉄「南東鉄道」で目撃した「事件」 »

著書

  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
無料ブログはココログ

.