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2008-07-04

居心地のよさそうな州都:トレント

 27日夕方、ヴェネト州のバッサーノ・デル・グラッパからローカル線で向かった先は、トレンティーノ アルト・アーディジェ州の州都であるトレント。州都といっても人口は10万人程度の都市である。

カステル・デル・ブオン・コンシリオから見た市内

 イタリアの町に来ていつも思うのは、中心部がずいぶん賑わっていても、意外と人口が少ないこと。トレントにしても、駅前から旧市街まで歩いていると、日本なら50万都市くらいのイメージである。

 そのことについて論じると長くなるので、詳しくは別の機会に譲るとして、私の乗った列車がトレントの駅に着いたとたん、土砂降りの雨が降ってきた。

 もっとも、前日の安ホテルでこりたので、トレントでは電話で数時間前にホテルを予約済み。雨の中で途方にくれることにならなったのは幸いである。ただ、当然のことながら、私の名前は正確には聞き取られていなかった。

ドゥオーモ前広場

 雨のおかげで翌日の朝は涼しかったものの、昼間は例によってかんかん照り。そのなかを、まずこの町の最大の見ものであるカステル・デル・ブオン・コンシリオ(コンシーリョ)に向かう。漢字にすると、「良導城」といったところか。

 幸か不幸か、城の一部が催し物の準備のために閉鎖中だった代わりに、残った部分の入場は無料になっていた。
 入ることのできたのが、城の古い部分、そして国宝(だと思う)の「12カ月の壁画」(正式な名前は知らないが)が描かれたトッレ・ディ・アークイラ(鷲の塔)なので、もうけた気分である。

ドゥオーモ前広場

 トッレ・ディ・アークイラには、1時間半ごとにグループをつくって見学する。各自、解説音声の入ったプレーヤーを配られるのだが、選べるのはイタリア語、ドイツ語、英語の3つ。「イングリッシュ?」と問われたが、「イタリアーノ!」と見栄を張って答えた。

 12か月の壁画は、市井の人びとの毎月の生活を、月ごとに塔の内側に描いたもので、ブリューゲルを思わせる素朴な農民画という感じで、非常に好感が持てた。

かなり幅広のポルティコ

 そうそう、このグループ約20人のほとんどが北ヨーロッパ系の顔をしていたなかで、ナップザックを背負った30代とおぼしき東南アジア系の男性がいた。
 ずっとお互いに気になっていたのだが、最後の土産売り場でようやく会話をかわすことができた。
 彼はマレーシア人で、勉強のために2か月ほどトレントにいるらしい。なんの勉強かは聞き逃したが、これまでイタリアを旅行していて少なくともマレーシア人の単独行動の人物と会ったのは初めてである。

 数分ではあったが、土産も買わずに土産物売り場で話し込み、最後にがっちりと握手をして別れた。
 やはり、アジア人どうしはどこか心が通じるところがある。背が高くて青い目ばかりの人間に囲まれていたせいかもしれないが。

 まあ、いずれにしても短い滞在だったが、トレントの印象はなかなかよかったといっておこう。居心地もよさそうである。もう少しスケジュールに余裕があったなら、そしてこんなに暑くなかったら、ゆっくり滞在してみたかった。
 車窓から遠ざかっていく町並みを見るうちに、私の脳裏に一つのフレーズが浮かんだ。
--帰れトレントへ

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

ヨーコさんは、ずいぶん大胆なことをするんですね(^^;;
一人無表情な人間がいると、やはりやりにくいのか。
私はけっしてイタリア語バッチリというわけではないのですが、このときにプレーヤーから流れてきた説明のイタリア語はとても、はっきりゆっくりしていて、とてもわかりやすかったのが印象的でした。
テレビニュースのイタリア語は、なんであんなに早口なんでしょうね。

>「イングリッシュ?」と問われたが、「イタリアーノ!」と見栄を張って答えた。
 スペインのアルヘシラスからの日帰りツアーで、モロッコのタンジェールを訪問したときの事を思い出していました。
「スペイン語」「アラビア語」「英語」「フランス語」からの選択で、私は迷わず「アラビア語」を選びました。
「アラビア語」を理解していたわけじゃなく、面白そうだったから。ガイドさんはかなり面白い説明をしていたようで、「アラビア語」グループは皆笑っていました。その中でただひとり、言葉を理解していない私は無表情。
3つ目のガイド先で、つまみ出される様に、「英語」グループに強制移動させられました。
その点、駄菓子さんはイタリア語バッチリ!な方なので、何の問題も無いですよね。

三個夏天さん、その青年は、ぱっと見たところフィリピン人かなと思いました。
まあ、フィリピンは多民族ですから、マレー系の人もいるはずでしょうが。
マレーシア人に間違えられるというのは貴重な存在ですね。

私は、日焼けが進むにつれて、中国人に声をかけられるようになりました。
かつて、インドで真っ黒に日焼けして、現地で買ったシャツを着ていたとき、日本人に声をかけたらびっくりされたことがあります。

ikeさん、さっそくのイカす反応ありがとうございます。トレントはシャレの宝庫になりそうですね。
(以下自粛)

「日曜はダメよ」は、テーマ音楽を聴けば誰でもわかる、かつてのギリシャ映画のつもりでした。主演したメリナ・メルクーリは、ギリシャ民主化の後、大臣様までになってしまいました。

でも……と思って、検索してみたらそんなタイトルのラジオ番組もあったんですね。さらにはテレビドラマも。

全然関係ないんですが、なぜかマレーシア人に間違えられることが多いんです。外国人に。しかもマレーシア人からも。なぜだろう
あ、たぶんトッレ・ディ・アークイラ行ってると思います、自信ないけど

トレントはドイツ語圏との境界の街だったと思います。
この界隈の方々は、外国人とみると、ドイツ語で話しかけてくる傾向があったような。
「それじゃ、全然聞きトレント」
と、日本語で言い返してみたいものです。

(手前の記事のコメント)
> タイトルは「日曜はダメよ」を念頭に置いたんですが、ちょっと苦しい?
その気配は感じてました。ラジオの番組でしたっけ。
毎週聞いてました。

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