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2008-07-20

トリエステの路面電車兼ケーブルカー

 トリエステには、鉄道ファン必見の不思議な乗り物がある。それは、市の中心部オーベルダン広場と、背後の丘の上にあるヴィッラ・オピチーナ(Villa Opicina)を結ぶ路面電車だ。
「路面電車なんてちっとも珍しくない」という声がありそうだが、早まってはいけない。途中の一部区間で、その路面電車がケーブルカーに早変わりするのである。
 次の2枚の写真は、1985年に撮ったものだ。

トリエステの路面電車
1. オーベルダン広場から路面電車がやってきた。左で待機するのは後押し用の車両。

  ↓
急坂を登る車両
2. 後ろに後押しの車両を連結して、ケーブルカー区間を登る!

 前回は写真を撮っただけで、電車に乗る時間がなかった。今回はその23年ぶりのリベンジということで、5キロあまりの全線をしっかりと乗るつもりで、オーベルダン広場にやってきたのである。
 始発となる停留所には、乗客のものらしい自転車を前面に積み込んだ(据えつけた)電車が待っていた。

自転車を積んだ路面電車

 車内は、地元の人たちだけでなく、英語を話す観光客も乗り込んでおり、ほぼ座席は満員となっていた。ヴィッラ・オピチーナに高級ホテルがあることもあって、この路面電車は観光客に人気が高いのだそうだ。電車は20分おきに運転されている。

 さて、オーベルダン広場を発車して約2分。いよいよケーブルカー区間にやってきた。
 そこでビックリ。
 そこに待っていたのは、23年前に見たクラシックな黄色い車両ではなく、下の写真のような面妖な機械(?)であった。

後押し用(?)の車両

 まあ、それでも働きは同じようなのだろう。電車がスイッチバックしてその「機械」と連結。いよいよケーブルカー区間だ! と思ったら、事態は意外な方向に展開した。

 運転手はどこか指令所と連絡をとっているのだが、いつまでたっても発車しない。
 それどころか、10分ほどたったら、「オーベルダン広場に戻ります」と言って、反対側の運転台に向かっていってしまった。
 近くにいた地元の人にわけを聞いたのだが、よくわからなかった。故障なのか……。

 ヴィッラ・オピチーナにはバス便もあるというのだが、なにしろこれを目的にやってきたのである。このままで引き下がるわけにはいかない。

--うーん、ひとまずバスに乗っていくとするか。現地で昼飯を食べ終えたころには動いているだろう。
 例によって楽天的思考で、オーベルダン広場に掲げられていたバス乗り場案内図を便りに、ヴィッラ・オピチーナという行き先を掲げたバスに乗車した私である。
「片道くらいはバスでもいいか。違う車窓が楽しめるし」と負け惜しみで思ったのだが、それが大きな間違いの第一歩であった。
 確かに行き先はヴィッラ・オピチーナであったが、私が乗った系統は、信じられないほど大回りをしていく路線だったのだ。

ヴィッラ・オピチーナを走る路面電車

 まあ、その話は次回にするとして、なんとか曲がりなりにもヴィッラ・オピチーナに到着し、めでたく復路はこの電車に乗って帰ってくることができた。
 ケーブルカー区間の最大勾配は260パーミル(1000m走って260m上がる勾配)で、一般の路面電車の車両がそこを走るのだから、乗客はつんのめりそうになる。ケーブルカーでない自力走行区間でも最大80パーミルだから、箱根登山鉄道並みである。
 そして、路面電車が走るとは思えない林のなかを、右に左にカーブしながら下りていくのがまた、不思議な体験であった。

 まあ、乗ることができたのはいいのだが、バスで大回りしている間に時間を費やしてしまい、途中区間(とくにケーブルカー区間)の走行写真が、ほとんど撮れなかったのは不覚である。また宿題ができてしまった。次にここにやってくるのは何年先のことだろうか。

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コメント

豪快でしょ。
電車のほうは、23年前とまったく変わっていなかったのが感激でした。
ところで、イタリア御得意の合体攻撃って……何かありましたっけ。
鉛筆の端に消しゴムをつけたり、プリンタにファクスやコピー機能をつけたり……はどちらも日本か。

うわ〜、すご〜い
イタリア御得意の合体攻撃がここでも発揮!
と、うすい反応ですいません。知識がないもんで
でもすごく感動しているんですよ(笑)

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