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2008-06-12

『私の日本地図』

 いまから何十年も前のこと、小学校高学年になった私は図書館に行くという楽しみを見つけた。
 そこで、世の中にはいろいろな本があることを知ったのだが、なかでも日本の地誌に属する本にはかなり興味を引かれた。もともと、遠くに出かけるのが好きだったからだろう。のちに、あちこちを旅行する素地が、このときに固められたのかもしれない。

 何冊かあったお気に入りのうちの一つが、この宮本常一の『私の日本地図』(同友館)である(右側)。
 とくに、全15巻のうち、第3巻「下北半島」が好きだったのだが、その理由は当時まだ現役で働いていた森林鉄道の写真が、ふんだんに載っていたという単純なものであった。

新版『私の日本地図』    旧版『私の日本地図』(箱入り)

 だから、ほかの巻はあまり真剣に読んでいなかったのだが、それでもこの日本中を歩き回っている宮本常一という人に興味を持ち、こんなことができたらいいなあと思っていたのである。しかも、文章がわかりやすく、学者っぽくないのが気に入った。
 その後、大学時代に「下北半島」だけは八重洲ブックセンターで入手したのだが、その他の巻は買わずじまいとなり、しまったと思ったときには絶版となっていた。

 折あるごとに神田神保町の古本屋街をはじめ、あちこちで探したのだが、1冊も目にすることがなかった。宮本常一全集にも入っていなかった。
 そんな幻のシリーズを古本屋街で見かけるようになったのは、ここ数年のことである。せっせと15冊取り揃えようとがんばり、ようやく7冊目まで揃ったところであった。

 なんと、新装なった『私の日本地図』(未來社)が新刊書として書店に並んでいるではないか(左側)。うれしいような、力が抜けたような、複雑な気分であった。
 まあ、それでもよく見ると、中身の印象は昔のままでありながら、印刷はきれいになっているし、表紙のセンスもいい。思わず、大枚2310円を払って買ってしまった私である。

 第一回配本は、宮本常一の出身地である「周防大島」。実にいい選択である。
 で、中身を読むと、やはり読みやすい。柳田国男のような堅苦しさがなく、おおらかである。しかも、徹底して現地を歩いて、ものを考えているのがいいんだなあ。今回は生まれ故郷だから当たり前だけど。

 それにしても、ほんの40年ほど前には、日本のどこにもこんな風景や生活があったのだ。そして、著者はそれがまもなく大きく変貌することに気づいている。でも、それを止めることができないこともわかっている。
 宮本常一のいいところは、それを声高に批判するでもなく、もちろん歓迎するでもなく、自分の見たことや聞いたこと、考えたことを淡々と、細部にいたるまで記録していることだろう。それが、このシリーズの大きな価値だと思うのだ。
 各ページに最低1枚は、著者の撮った写真がある。当時の人にとってはあまりにもありふれた風景ばかりなのだろうが、今となってはその1枚1枚が珠玉のようである。何の誇張もなく、派手な創作もない写真を見ながら、記録というものの大切さを感じるのであった。

(発行:未來社、著者:宮本常一、定価:2200円+税、初版発行:2008年3月31日、ISBN978-4-624-92494-2)

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コメント

なるほど、そう言われてみると、ときどき「えも言われぬ違和感」を覚えることもありますね。
ねちっこいというか、濃密というか……ikeさんの印象とはまったく違うかもしれませんが。

コンパクトカメラというのは間違いないでしょう。それに、あれだけ撮っているということは、やっぱりハーフサイズで1本72枚、バーシバシ撮って(荒木経惟調)いたのかもしれませんね。
それにしても、フィルムカメラであれだけ撮っているのですから、当時デジカメがあったら、とんでもない量の写真を残していたかなと思います。

宮本常一さんの本って、なぜか読んだことないです。
もしかして、自分が「東」の人間で、宮本さんが「西」の人だったからなのでは、とふと思いました。

それはさておき、宮本さんの写真スタイルはカッコイイ。おそらく、ハーフ版のコンパクトカメラを愛用されてたんでしょうね。

メルクルさん、恐縮です (^^;;
ぜひ、タイ米は炊いてください \(^o^)/
今回は、思いがあまって、ちょっとクソまじめに書いてしまったので(それでその程度かと言われそうですが……)、次からはもっとバカバカしいことを書きますね。

三個夏天さん、どうも。
いま読むと、ちょっと個人的な思い入れが強すぎたかなと (^^;;
ところで、第2回配本はいつになるのか、どこにも書いていないんですよね。
未來社のホームページを見ても書いてない。でも、イタリアっぽくていいかも。
周防大島は、私も行きたいぞ!
……というより、瀬戸内海の有人島に全部行きたい!

駄菓子さん

是非見てみたい・・タイ米は炊きたくなりました←すごい!できすぎるくらいの変換ミスなので あえて^^;

駄菓子さんの ブログは いつも 面白いものに 出会えるので楽しいにゃ~目が離せないわ♪ うふふ

うおお〜、これは買わねば(笑)
周防大島、いつか行ってみたいデス

写真がたくさんあったから!
読んだというより、見ていたのでした。

小学生のころに宮本常一なんてシブイすぎます!

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