ベッルーノの「固そうな氷」
25日の午後、マニアーゴ発の県都ポルデノーネ(Pordenone)行きのバスに乗車。きょうで、フリウリ ヴェネツィア・ジューリア州ともお別れである。
行き先はヴェネト州のベッルーノ(Belluno)。「山の小さなヴェネツィア」と呼ばれている町である。ちょっとした観光地なので、直行バスがあるかと思ったら……ない。
やはり、バスは州単位の運行がメインのようで、州をまたぐ移動にはバスの乗り換えや鉄道の利用が必要になってくる。
ポルデノーネで列車に乗り、さらにコネリャーノ(Conegliano)、ポンテ・デッレ・アルピ(Ponte delle Alpi)の2箇所で乗り換えて、ようやくベッルーノに着いた。
それにしても、いったいどこが「山のヴェネツィア」なのか。行く前から、かなり疑問ではあった。だって、運河がないヴェネツィアなんて……?
まあ、そんな疑問も現地に行って、ほんの少しわかったような気もした。
ポルティコのある狭い路地がくねくねと続いている様子が、運河を除くヴェネツィアを思わせないでもない。
でも、町の規模もずっと小さいし、ちょっと大げさではないのかなあと思いもした私であった。

ただ、町の中心にあるドゥオーモ前広場は堂々とした風格である。2つの長方形の広場が少しずれたようになって、1つの広場を形づくっているのだ。
広場を歩いていくにつれ、視界に入ってくる風景がダイナミックに変化していくのは見事というしかない。
上の写真では、その魅力の50分の1も伝わっていないのが残念である。
そしてベッルーノは、地図を見ると立派な丘上都市であることがわかる。となると、ちょっと離れた場所から遠景をとらなくてはならない。いや、「……いけない」わけじゃないんだけどね。
私は厳しい日射しの中を気の遠くなるほど歩いて、とうとう下の写真のようなポジションを発見したのであった。

もう一回、あの暑い中を歩いてくれと言われても断りたいなあ。
気温は優に35度を越えていたらしい。
さて、最後の写真は、新市街の中心部。いわば「広小路」といったところか。建物のフロントの線がカーブしているのが味わい深い。
人影が少ないのもあまりに暑いからである。テラスの日除けの下をよく見ると、人が座っているのがわかる。
私もここで夕方、食事前にマルティーニ・ロッソというベルモットを頼んだ。

すると、「ギアッツォは入れる?」と、店の若い女の子が尋ねる。
そうか! と私はここでもまた、四半世紀前に習った語学学校の教えを思い出した。
それによると、北部のほうでは「……ccio(ッチョ)」が「……zzo(ッツォ)」になるとのこと。
だから、氷を意味するギアッチョ(Ghiaccio)はギアッツォになるわけ。
若い女の子がそんな発音をしているのが楽しくて、腹の下から出てくる微笑みを懸命にこらえる私。にっこりと「Si!」と答えた。
ギアッツォとは、ずいぶん固そうな氷である。気のせいかベルモットになかなか溶けないようであった。
最近のコメント