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2008-04-09

彦根:琵琶湖の幸を堪能

 先週、仕事で関西へ行ったついでに、桜が七分咲きの京都に泊まってきた。
 金曜の夜は宿がとれたのだが、土曜日はどこも満室。やはり、花見目当ての客が多いのか。

 大阪、神戸は今年すでに泊まったので、今回は滋賀県内で宿を物色。まだ泊まったことのない町で、かつ東海道本線上にあるという条件で探した結果、彦根にホテルをとることができた。
 着いたときにはすでに日は沈んでいた。一休みしてから町を一周。鼻を懸命に利かせて晩飯の場所を探した。
 そして、見つけたのが海の幸、湖の幸を中心とした「大名」という寿司屋。

もろこ

 カウンターに座り、一通り酒とつまみを注文してから、気になったのが「もろこ」という札。
 聞くと、琵琶湖に昔からいる魚だという。ブラックバスやブルーギルが増えたために食われてしまい、数が少なくなってしまったという。そういえば、そんなニュースを聞いたっけ。

 昔はいくらでもとれたので捨てていたくらいだというが、今じゃ高級魚になって、京都の料亭なんかでは、べらぼうな値段がつくという。
 この5匹で1200円。ホントに小さな魚だが、焼いて塩をちょっびりつけて食べると、淡白な白身が驚くほど上品でウマかった。淡水魚の概念を変える一瞬であった。

「高級」鮒ずし

 そして、例によって次々と注文を繰り広げる私。
 やがて、店主や地元客とも打ち解けて、高校野球の滋賀県代表は昔にくらべて強くなっただの、琵琶湖の魚が減っただのと話題もつきない。

 そこで、さっきから気になっていたことを、思い切って尋ねてみた。
「ここは鮒ずしはあるの?」
「おお、あるよ!」
 店主は「得たり」とばかりに返事をする。「通好みで酸っぱいのと高級で食べやすいののどっちにする?」
「うーん、食べやすいほうにするかなあ」
 上の写真がそれである。これで3000円以上するが、清水の舞台から琵琶湖に飛び込む(ちょっと遠いか)つもりで注文した。
 ちなみに、酸っぱいほうは、その半額ほど。

 これが生まれて2回目の鮒ずし体験。しかも、今回は本場である。
「う、うまい!」
 妻には、「納豆が食べられなくて、なんで臭いチーズや鮒ずしが食べられるの?」とあきれられるが、欲望のおもむくままに食うとそうなるのだから、しかたがない。

鮒ずし「通好み」

「地元じゃ、鮒ずしが3切れもあれば、酒一升飲めるって言うんだよ」
 そうでしょう、そうでしょう。この発酵具合は、まさに酒の肴に最高である。
 品書きに載っていなかったのは、知らない旅行者が普通の寿司と間違えて注文するといけないからかもね。
 
 鮒ずしの残りが少なくなると、私の頭にある思いがよぎった。
「通好みの酸っぱいほうの鮒ずしも食いたい! でも、鮒ずしにそこまで金を使うのもなあ……」
 すると、店主はその考えを読み切ったかのように、
「これも一口どう?」と、私と常連のおじさんに、その通好みを2切れずつ出してくれた。
 それが下のほうの写真である。
 皿の下部に置かれた白色の塊は、けっして大根おろしではなく、かつては米だったものが乳酸発酵して酸っぱくなった物体である。もちろん、これも食う。
 ああ、今これを書いているだけで唾液が出てきて止まらない。
 至福のひとときであった。

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コメント

大名(大名寿司)は、ぜひ行ってみてください。店主が「とうとう、うちが最古参になっちゃったよ」と言っていました。
彦根城といえば「ひこにゃん」が話題になっていますが、東京での評判に対して、大阪ではイマイチなんだとか。「やっぱり大阪は太閤さんだからなあ」という話でした。
全国に散った近江商人の話も、なかなか示唆にとんでおりました。

中学生の頃、彦根に一泊して、当時彦根市長だった井伊直愛さん(直弼の孫にあたります)と、その奥さん、井伊文子さん(琉球国最後の王尚泰のひ孫にあたります)とお会いしたことがあります。
「家来」というか、職員さんに彦根城なんかも案内してもらいました。未だに江戸時代をやってる凄い街だなあと、不思議に思ったものです。

その後、彦根はまた行ってみたいと思いつつも素通りする街ですが、「大名」をめがけて、行ってみたくなりました。

P.S.
『国鉄の・・・』ですが、上野駅が泣けました。
ありがとう。凄くいい本です。

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著書

  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
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