バルレッタ、トラーニだらだら歩き
さあ、翌日はポテンツァに移動だ、と思いつつマテーラのホテルでテレビを見ると、なんとポテンツァは大雨の予報。急遽、行き先を晴の予報が出ているバーリに変更した。
翌日の昼前、バーリのホテルに荷物を置いて、近郊にある町をのんびり巡ることにした。候補はジョヴィナッツォ、モルフェッタ、ビシェッリェ、トラーニ、バルレッタ、ビトントの6都市である。
このうち、前の5つはアドリア海に面しており、バーリから順に数キロ~10キロおきに並んでいる、だんご5兄弟(中途半端に古い!)のような町である。イタリア鉄道線が、まるでだんごの串のように貫いているので便がいい。で、ビトントは私鉄が通っている。
かねてから狙いはつけていたものの、なにかにつけて後回しになっていたエリアである。
全部は無理だろうが、行けるところまで行こうと、もっとも遠いバルレッタ(Barletta)から順に巡ることにした。
バルレッタに着いたのは昼前。駅近くの新市街は人でごったがえしており、ずいぶん活気がある印象であった。思ったよりも大きな町である。
プーリアの地方都市というと、バーリ以南のこぢんまりとした町を連想してしまう自分を恥じる。
それにしても、とある1軒のバールの前に、100人近い学生がたむろしていたのは何なのか。今も不思議である。
旧市街にあるドゥオーモでは結婚式をやっていた。
中には入れそうもないので、そのまま城砦をぶらぶら。ところが、ここでも結婚式をやっていて、肝心な場所には入れずに断念。
「まあいいか。どうせついでの旅だし」
すでに、南イタリアの毒がかなりまわっていた私である。

次のトラーニ(Trani)に着いたのは、すでに昼休みの真っ最中。バルレッタとは一転して、静まり返った新市街をとぼとぼと、海に面したカッテドラーレまで歩いていった……はずなのだが、10月とは思えない暑さに頭がぼーっとしたためか、道を間違えてしまった。
「まあ、いいか。どうせヒマだし。それにしても、こんな雲一つないカンカン照りなのに、ホントにポテンツァは大雨なのかなあ」
おかげで、すぐ向こうに見えるカッテドラーレまで、ぐるりと湾を大回りしなくてはならなかった。
トラーニの湾にはボートがぎっしりと停泊して、あちこちにドイツ人観光客のグループがいる。1週間前に訪れたナポリ沖のプローチダ島のような雰囲気であった。
カッテドラーレは、なかなかの規模で立派。塔の下が通り抜けになっているのがおもしろい。装飾もほどほどで好感の持てる教会である。
で、教会の近くにはフェデリコ2世の城砦。幾何学的なカッチリした外観が印象的である。中はすっかり近代的に改装されており、エレベーターまで設置してある。
それはいいのだが、外に出て眺めを楽しもうと思ったのに、外に出るドアはすべて鍵がかかっていた。あらゆる可能性を探って、ほかに客が一人もない城砦を隅から隅まで巡ったのだが、無駄であった。
外に出られない城砦なんて、遅れのないイタリアの列車のようなものである。

さて、トラーニの旧市街から駅までは1キロ以上ある。だらだらと歩いていたら、1時間おきに出る列車に乗り遅れてしまった。
しまった、こんなしょぼい駅で1時間待つのかと落胆して駅前を見ると。バーリ行きと書かれたバスが停まっているではないか。
「おお、天の助けか地の救い。これはもうバーリに帰りなさいという神様と仏様の思し召しに違いない」
カンカン照りの中を歩き疲れた私は、都合よく解釈して、冷房完備のバスに乗車したのである。
バスは海沿いの道を快走し、ビシェッリェ、モルフェッタ、ジョヴィナッツォの中心部を通り抜けていった。
「うん、この3つの町も歩きたかったけど、バスの中から見られたからいいや。町はずれを通る列車じゃなくて、バスに乗ったからこそ、町の中心部が見られたんだな、やっぱり」
きょうもまた負け惜しみで終わる小旅行であった。
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