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2006-10-22

プローチダ島で昼飲み

 10月1日午前11時少し前、ナポリ空港にて、とうとうツアコンお役御免の時が来た。
「うれしそうな顔をしているよ」と妻に冷やかされて、はじめて頬がゆるんでいるのがわかった。

 ともかくも重責を果たし、あと1週間あまりは自由気ままな一人旅である。
 ふらふらと道を横切り、店のショーウィンドウを覗き込むのも自由。バスの車窓から興味深いものを見つけて、いきなり下車するのも自由。
 でも、これまで8日間のツアコン根性が身についてしまったので、そのたびに「あれ、こんなことをしていていいんだっけ」と自問自答して、なんだか落ち着かない。
--そうか、何十年も勤めた会社を定年退職したサラリーマンが、毎日落ち着かない気分で過ごすというのは、こういう気持ちなんだろうな。
 と、くだらないことを思いながらナポリの町を歩く私なのであった。

バーコリ(たぶん)の岬を回り込むフェリー

 さて、ナポリにはもう一泊する予定。そこで午後からは、ナポリの西にあるポッツオーリ(Pozzuoli)に向かい、沖合に浮かぶプローチダ(Procida)島に渡ることにした。
 カプリ島にもイスキア島にも行ったことがないのに、プローチダ島というのがヘソ曲がりだと言われそうだ。でも、日帰り(しかも午後から)では、カプリやイスキアはちょっと難しいところである。

 イタリア鉄道のポッツオーリ駅を降り、かんかん照りの中を20分ほど歩くと港に着いた。港は、カプリやイスキアに向かう大型船に乗るのだろう、ドイツ人やアメリカ人の団体であふれていた。
 幸いにもプローチダ島行きのフェリーは30分後に出るとのこと。切符売り場のお姉さんは、「あそこに止まっている一番小さい船よ」と教えてくれる。見るとそれは、瀬戸内海の小島に向かうフェリーを思い出させた。
--おお、こうじゃなくっちゃ。
 ヘソ曲がり趣味にはぴったりの乗り物である。

 プローチダというと、私は数年前に観た映画を思い出す。
 というと、誰もが「Il Postino(イル・ポスティーノ)」だろうと思うだろうが、そうではない。もっとも、これはけっしてヘソ曲がりが理由だからではなく、なぜか見る機会がないまま今日に至っているのである。

 私が思い出すのは、2002年のイタリア映画祭で観た「Non è giusto(ノネ・ジュスト)」(邦題:そんなのヘン)である。
 大人の世界を見つめる子どもの目というのがテーマの映画で、その舞台となったのがナポリの市内とプローチダ島なのである。
 港近くに建ち並ぶ、カラフルだけどちょっと薄汚れた建物、こぢんまりとした海水浴場などなど、私の目にはしみじみとして親しみやすそうな島に映った。
 しかし、それまでまだ南イタリアに行ったことのなかった妻は一言。
「汚い島ねえ」
 ナポリの中心部にくらべればずっとましだよ、と私は反論しようと思ったが、賢明にもそれを口に出すことはしなかった。

 その映画で、主人公の子どもたちが乗ってくるのが、たしかこの小型のフェリーだったと記憶している。

 実際に観たプローチダの港、マリーナ・グランデ(Marina Grande)に面した家々は、大半がレストランやバールとなっており、建物はやっぱり薄汚れてはいたが、映画よりもずっときれいだった。
 港付近は団体客で賑わっていたが、みな港の近くをうろうろしているだけで帰っていくのを見ると、どうやらカプリやイスキアの帰りに立ち寄っただけに違いない。

コッリチェッラ地区の港

 脇道を入り、島の中心部に向かう坂道を登っていくと、もう人影はまばら。
 地図も持って来ない、いいかげんな訪問だったが、とりあえず丘の頂上にあるという修道院を目指す私。あまりの暑さに、歩きはじめたことを後悔しかけたころ、上の写真のような風景が目に入ってきた。やはり、苦労はするものである。

 こちら側はCorricella(コッリチェッラ)地区というらしく、この港に面した場所にも、レストランが建ち並んでいた。例の「イル・ポスティーノ」は、こちら側を舞台にして撮影されたらしい。
 レストランの客層は、いかにも海遊び、船遊びをしていますというイタリア人が中心のようであった。こんなところで、ショルダーバッグを持って散歩する東洋人はどうも居心地が悪く、ちょっと写真を撮っただけで引き返すことにした。
 マリーナ・グランデ(Marina Grande)のテラスでちょっと早めの夕食。飲み物付きで12ユーロのMenu turistico(メヌー・トゥーリスティコ=ツーリストメニュー、つまり定食)は、海の幸たっぷりで十分なウマさだった。
 中ジョッキのビールを飲んだあと、気分がよくなって、ワインをおかわりした私。

「デザートか食後酒はいかが?」
 中学生とおぼしき手伝いのお姉ちゃんが尋ねる。
「じゃ、アマーロをお願い」
 彼女はキャッと笑いながら、店に戻っていく。
 そんなに変だったかなあ。
 昼間っからよく飲む東洋人だとあきれたのかもしれない。

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コメント

魚のとれる港があって、車の通らない狭い道もたくさんあるから、ネコもいるのかもしれませんが、なぜか一匹も出会いませんでした。
着いたのが真っ昼間で、日没の前に帰ってしまいましたから、夜行性のネコは昼寝の最中だったのかも。

 駄菓子さん本来のフットワークが甦り、旅行記からも生き生きした表情がにじみ出ている様ですね(^_^;)。
 プローチダ島は行ったことありませんが、何かの雑誌で猫がたくさんいる島の様なことを読んだことがあるのですが、あれはプローチダ島ではなかたのかな?猫はいませんでしたか?ちょっと興味あったんですけど。

>あまりの暑さに、歩きはじめたことを後悔しかけたころ、上の写真
>のような風景が目に入ってきた。やはり、苦労はするものである。

 やっぱり、素晴らしい景色を見たり良い写真を撮ったりするには努力や苦労が必要と言うことですよね。
 

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