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2006-10-15

ナポリの下町で興奮

 翌日に利用したタクシーの運転手が言っていたのだが、ナポリは食べるところに苦労しないという。
 これは、単にウマいという意味だけでなく、たとえ中途半端な時間でも、必ずどこかのピッツェリーアやトラットリーアが開いているということだそうだ。

 南部の田舎町だと、レストランは午後8時半にならないと開かないところも多いが、確かにナポリはそんなことはなかった。2年前に行った目当ての店こそ閉まっていたが、下町のピッツェリーアに午後4時に入ることができた。
 ピッツァとビールでほろ酔い気分になり、ナポリの下町を散歩しようというのだから、恐いものなしである。
 心配した店のお兄さんが、「ほら、歩くときは、ショルダーバッグは体の前に置かなくちゃ」とアドバイスしてくれた。

ナポリの下町

 中心部の路地は人でごったがえしている。田舎町を歩き回ってきた我々は、まるでおのぼりさん気分である。
 そして、お目当てのオレンジ入りのチョコレートを買おうと、路地を歩いていたときである。同行者の女性3人の目が、小さなお菓子屋に集中して歩みが止まってしまった。
「ほらっ、早く行かないと日が暮れちゃうよ」とせかしても、こればかりは無駄であった。

 すると、その店で買ったミッレフォッリェ(ミルフィーユ)をパクついている20代半ばとおぼしき知的な雰囲気の女性と目が合った。
「コレ、イチバン!」と彼女。
「は?」
 これが話のきっかけであった。彼女は日本語を勉強していて、つい最近まで、神奈川県の元住吉に3か月ほど住んでいたという。

 連れの男性はと見ると、真っ赤なTシャツにリュックをしょって、ニコンの新しいデジカメを不用心にぶらさげている格好は、いかにも秋葉原あたりにいそうな雰囲気である。
 彼の日本に対する関心--いやオタク度は大変なものであった。その会話をすべてここに記していたらキリがないほどである。
 とにかく自分も日本に行って、寿司と天ぷらと牛丼と豆腐料理となんとかとかんとかを食いたいと、興奮気味に語る。マンガもアニメももちろん買い込んできたいらしい。
 私たちが東京の駒込に住んでいると言うと、ぜひ新宿と渋谷と池袋と浅草と上野と秋葉原と恵比寿に行きたいと、目をひんむいてまくしたてる。

 こう書くと、まるで危険人物のようだが、実に心優しき楽しいやつではあった。
 義母が、「私は名古屋に住んどるのよ」と言うと、「名古屋も大阪も行きたい。広島もね。でもシンカンセンは高いからホンセンで。東北地方も行きたいなあ。そうそう富士山にも登らなくちゃ」と彼。「そんなんじゃ、1年あっても足りないね」と私たちは笑った。
 まあ、こんな調子で、ナポリの下町の狭い道で、30分間も興奮して語り合ってしまった我々である。
 しまいにその兄ちゃんは、道を歩いている人をつかまえて、「オレたちの写真を撮ってくれ」と言って、ニコンの新品デジカメで記念撮影までしてしまった。
 メールアドレスと住所を交換して別れたときには、すっかり日は暮れていた。

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

まだ頭の中はイタリアのままですのでご心配なく。
今回は、ちょっと色が赤みがかっていますね。
現地からはノートパソコンで書き込んでいたのですが、そこでの色の調整がうまくいきませんでした。
だいぶ使い古したので、液晶の色がちょっとへたってきたのかもしれません。

まだイタリアにいると思うことにしている(^_^;)駄菓子さん。こんにちは。
良い写真ですねえ。路地も良いし、逆光と影が良いなあ。私も良い写真撮りたくて、いろいろ試すのですが、なかなか技術が伴いません。構図も下手だし、露出が皆目…。駄菓子さんの写真、大好きです。
時に今回、いつものと比べて、色彩が違う様に感じるのですが、気のせいでしょうか?

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