『ウルトラマン万葉集』
去年、鎌倉の古本屋で見つけた本。「ウルトラマン」と「万葉集」という奇妙な取り合わせのタイトルを見て、思わず手にとった。
ページを開くと、これはまた期待にたがわぬものであった。
内容は、「巻之壱 ウルトラQ」「巻之弐 ウルトラマン」「巻之参 ウルトラセブン」に分かれており、全放映作品ごとに、数首の歌が詠まれているのである。
たとえば、ウルトラマン 第27話「怪獣殿下(後編)」では、怪獣のゴモラがこう詠む。
ふと見れば 我が尾切られて 既になし
ここが最後か 大阪の城
さらに解説として、「ウルトラマンにまた尻尾の一撃をお見舞いしてやろうと思ったら、尻尾がねえんだよ。こりゃ驚いたねえ」。
この調子で、作者が登場人物、登場怪獣に成り代わって詠む500首。
何かにとりつかれたとしか思えない“怪”挙であり、“異”業である。
脚注には、各回の脚本、監督の名前と、簡単なストーリーがついているので、歌を味わう参考になる……わけないか。
短歌としてはけっしてウマくなく、下手なダジャレや無理のある本歌取り、古典文法の間違いもあるのだが、そんな細かいことはどうでもいいと思わせる、稀有な一冊である。
(発行:朝日ソノラマ、著者:椛沢雅哉、定価:1400円<税込>、初版発行:1993年3月30日、ISBN4-257-03351-7)
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