時刻表が売り切れ!?
レッジョ・カラーブリアに到着したのが11月18日深夜。
翌日、さっそく鉄道の時刻表を買おうと、妻とともに駅の売店に向かった。
ちなみにイタリアでは、時刻表は本屋には置かれていない。
駅や街角にある雑誌売場か売店(キオスコ)でないと買えないのである。
「時刻表ちょうだいな!」
「売り切れだよ!」
「え? なんで」
「12月11日にダイヤ改正があるから、そのときに新しいのが出るよ」
出るよって、それまでに使う時刻表がほしいのに……。駅の案内所に行っても「12月11日まで待て」という。
町中の売店で聞いても、「ダイヤ改正までない」という。
私は一気に腰の力が抜けてしまった。
気まぐれな旅がモットーの私である。時刻表がなくて、どうやって旅行をすればいいのか。
鉄道にはあまり興味のない妻も、「ダイヤ改正まで、みんなどうするのかしらねえ」と不思議がっている。
もっとも、これまで何度もイタリアには来たが、いまだかつて時刻表を持って旅行しているイタリア人は見たことがない。
その代わり、大きな駅の案内所には、目的地までの列車と時刻を尋ねる人で、いつも行列ができているのだ。
つまり、イタリア人は自分の目的地にまっすぐ着けば十分なのだろう。
時刻表がないために、私がどれだけ心細い思いをしているのか、彼らには想像がつかないに違いない。
さて、前にも書いたように、その日は思い立ってシチリアに渡り、タオルミーナに行った日である。
念のため、シチリアの玄関口メッシーナの売店で尋ねたが、やはり同じ答えが返ってくるだけ。
時刻表が手元にないもんだから、列車にも乗り遅れ、バスでタオルミーナに着いたのは午後のかなり遅くなってからであった。
--こりゃ、先が思いやられるなあ、と思いながら、丘の上にあるタオルミーナの円形劇場を眺め、メインストリートを歩いていたときである。
1軒のこぎれいな雑誌屋を見つけた。私の脳味噌は、一瞬のうちに次のことを考えた。
--この店ならば、古い時刻表が売れ残っているかもしれない。なぜならば、丘の下には駅があるため、時刻表の需要もあり、ほどほどの数を仕入れているからだ。かつ、この観光地では鉄道の利用者はそれほど多くないから、売れ行きはよくないはずである。
案の定、2冊売れ残っていた。
「12月10日までの古いやつだけどいいのかい」
「はい、はい、はい」
私は、胸のつかえと肩の荷が、同時に降りたような気がした。
「この店にはあると直感したんだよね」
自慢げに私は妻に言った。
「よかったね。何軒も当たってみるもんだね」と彼女。
喜んではくれたが、どうも私の直感の素晴らしさは認めてくれなかったようであった。
« バールは最良の情報源 | トップページ | 山岳都市を走る車 »
「イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事
- 夕暮れのロッサーノ・カラブロ(2024.08.26)
- ビザンティンの残り香 丘上の町ロッサーノ・カラブロ(2024.08.25)
- 800体のしゃれこうべが眠る平和な保養地オートラント(2024.05.12)
- 尖塔そびえる静かな田舎町ソレート(2024.04.30)
- 陽光ふりそそぐガッリーポリ(2024.04.29)
「鉄道、乗り物」カテゴリの記事
- 夕暮れのロッサーノ・カラブロ(2024.08.26)
- 800体のしゃれこうべが眠る平和な保養地オートラント(2024.05.12)
- 尖塔そびえる静かな田舎町ソレート(2024.04.30)
- 陽光ふりそそぐガッリーポリ(2024.04.29)
- 明るく近代的に変身したバーリ駅(2024.02.13)
でしょう!?
北イタリアあたりのドイツ系の人たちは買っていそうな気が……単なる思い込みですが。
私も、学生時代は大きな時刻表を持って旅行していましたっけ。(遠い目……)
さすがに重く感じられるようになったので、いつしか小さな時刻表になりました。
投稿: 駄菓子 | 2006-01-30 20:27
確かに、
旅行していたときは必ず
時刻表を携えていたような気がしますが、
こっちに来てからは買ったことがないかも。。。
少しはイタリア人化してきたかな。
投稿: leo | 2006-01-30 00:22