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2005-11-27

突然ソヴェラート泊

 セッラ・サン・ブルーノはさすが観光地である。ヴィーボ・ヴァレンティアなんかとは違って、私をきちんと観光客として扱ってくれた。これは、やっぱりうれしい。
 
 これまでの旅では、「吾輩を観光客扱いするなんて」と、まぎれもない観光客のくせに、偉そうに文句をいっていたのだが、今回はちょっと考えを変えさせられた。
 ちなみに、セッラ・サン・ブルーノでは団体のお参りでもあったのか、シーズンオフにしてはかなりの宿泊客があったことを付け加えておこう。

ソヴェラートの海岸

 さて、25日はゼネストのニュースを横目に見て、バスでカタンザーロ(カタンツァーロ/Catanzaro)に向かうはずだったが、またしても急遽予定を変更。その途上にあるイオニア海に面した町、ソヴェラート(Soverato)に宿泊することになった。

 そのいきさつを書きはじめると長くなるのだが、簡単にいうとこんなことである。
 セッラ・サン・ブルーノのホテルの甥と称する人間が、小切手の換金にカタンザーロに行くので、車に便乗しないかと言ってきたのである。
 まあ、バスは時間がかかるし、午前6時の次は午後1時半まで便がない。彼は友人の車を借りて行くということで、私もある程度の金(もちろんタクシーよりはずっと安い)を払うことで話がついたのである。
 だが、いざ途中まで乗ってみると、ガソリン代も出してほしいだの、車の調子が悪いから小切手を金に換えるまで整備代を建て替えてほしいだのと言い出す。私の頭には、15年ほど前に経験したタフなインド旅行がよみがえってきた。

 車が山道を抜けイオニア海沿いのソヴェラートの町に入ったとき、時間は午後1時半になっていた。
 車の調子が悪いので彼が整備屋に行き、私がレストランで昼食をとるということになった。だが、午後3時に迎えにくるという約束をすっぽかして、私はそばにいた女性警官に道を尋ね、15分ほど歩いて鉄道の駅に向かったのである。
「ガソリン代は、いまはダメ、あとで出す」と言ったきり。

 駅にたどりつくと、列車は出たばかり。バスの発車までも1時間以上あった。そこで、ふと思いなおして、「そうだ、この町で泊まろう」と思いついたのである。
 うさんくさい彼も、「カタンザーロじゃなくて、ソヴェラートのほうが泊まるのにずっといいのに」と言っていたし……。
 カタンザーロに泊まろうとしたのは、あくまでも近郊の町に行くためのベースキャンプとしてである。
 だが、あとで考えてみれば、大都会カタンザーロ(しかも、去年の経験から、かなりうっとうしい印象のある町)に泊まらずに、そこから列車で20~30分ほどのところにあるソヴェラートに泊まったのは正解であった。

ソヴェラート・スーペリオーレの教会

 そうと決まったら、まずは腹ごしらえである。駅のそばにあるバールに入り、テーブルに着席。
 そこは、年配のおじさんとおばさん、都合3人が元気よく立ち働いている店であった。食べ物も、パニーノだけでなく、うまいリゾットが用意されていた。
 で、例によって例の質問。
「この辺に、いいホテルはありますか?」

 店の客を巻き込んで、ああだこうだと議論の上、とりあえず中心の広場に行けばホテルがあるということになった。
 うまいリゾットを食べてコーヒーを飲んで帰ろうとすると、さっきから愛想よくしてくれる60代半ばと見えるおばちゃんが、小さな声で何か言う。
「え?」
「気をつけなよ。あそこにいる金髪の女には!」
「う、うん。わかった」
「それから、この店は日曜日も休みなしでやっているからね。これからもおいで」
「は、はい」と私。

 金を払って店を出ると、さっきから常連の1人のように会話に加わっていたその女--年は30代後半であろうか--もいっしょに店を出ようとする。
「行くところは決まった?」
 一見したところ、ごく普通の主婦に見えるのだが、私はおばちゃんの言いつけを守った。
 にっこり「ブォンジョルノ!」と言って、急ぎ足で歩きだしたのである。

ソヴェラートの教会

--いやあ、やっぱり大都市に近づいたら気をつけなくちゃね。それにしても、こんな年になって、なんでこんな冒険旅行(というほどたいした冒険じゃないけど)をしているんだろう……。

 一瞬、我と我が哲学を疑いそうになった私であった。
 中心部の広場まで歩いて約5分。ほどなく3つ星のホテルを探し当てた。1泊40ユーロ。カタンザーロの代わりのベースキャンプとして2泊することにした。

 海をちらりと望んだあと、山側に2キロほど歩いたところにあるソヴェラート・スーペリオーレ(上ソヴェラート)を往復したら、初冬の短い日はとっぷりと暮れていた。

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

こもさん、こんにちは
そう、怪しい人が連続して登場しましたが、その後はまたのんびりと旅を続けています。
南部の爪先のほうは、ここ2、3日いい天気が続いています。
とくに午前中は連日快晴!

leoさん、こんにちは
食事がついて50ユーロで高いとは……。
でも、ここ2日間はもっと安く暮らしました。
ただ、部屋に電話がないのはやっぱりつらい。
その反動で、ちょっと高級ホテルにいます。場所は、またブログをお楽しみに (^^;;

わおっ、怪しい人がいっぱい出てきますね。金髪の女性はもしかしてprostituta?それともマフィア関係のお人かジプシーか、、、

ローマじゃ豪雨でテベレ川が氾濫寸前らしいですけど、お天気は大丈夫ですか?

相変わらず、超マニアックな旅ですね。
先日私もお泊まり旅行をしたのですが、
3食付き、もちろんワインも飲み放題で
1泊50ユーロでした。
それでも友人のイタリア人は
”ちょっと高い!”と言っておりました。
恐るべしイタリア。
今度はどちらへ??

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著書

  • 辞書には載っていない⁉ 日本語[ペンネーム](青春出版社)
  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
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