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2005-11-22

突然シッラ泊

 20日は、前日とうって変わっていい天気となり、レッジョ・カラーブリアのルンゴマーレ(海岸通り)から見えるシチリアも美しい。
 きょうは、30分ほど列車に乗ってシッラ(Scilla)の町に行ってから、レッジョに戻り国立博物館を見学。次の宿泊地トロペーアに向かう……はずであった。

 ところがである。日曜日は列車の本数が減ることは知っていたが、こんなに少なくなるとは予想していなかった。さすがに南部である。
 しかも、である。数少ない運転列車である11時30分発ローマ行き急行が運休になってしまった。途中までバス代行ということで乗客は大混乱である。

シッラの南側の町

 こうして、シッラから戻ってトロペーアに行くのは不可能とわかり--それどころか、まっすぐトロペーアに行っても夕方になってしまうこともわかり、突然宿泊地をシッラに変更することにしたのであった。

 シッラのホテルの情報はわからないが、去年も日帰りで訪れたので、ある程度勝手は知っている。まあ、この町なら妻も気に入るのではないかと思ったわけだ。

 シッラには砂浜もあり、夏は海水浴客で大賑わいするそうだが、11月ともあって人影もまばらである。駅から荷物を抱えて(妻はゴロゴロと転がして)海岸まで出たが、ホテルが見つからない。
 そこで、いつもの手を使った。現地の人らしき家族連れとすれ違ったときに、「この近くにいいホテルはありますか?」

 教えてもらったホテルは、2人で110ユーロと高めだったが、実に広々として清潔。しかも、風呂はジャクジー付きであった。

 シッラはこぢんまりとしたいい町である。そして、去年のブログにも書いたが、岬を境にして2つの顔を持っている。
 とくに岬の向こう側の町は、山の斜面にびっしりと家が建っており、海岸沿いの家は船でそのまま海に出られるようになっている。
 町には、細い道と階段が連続し、ヴェネツィアと山岳都市と尾道がいっしょになったようなところだ。
 その中心部には、細い道に面した小さなレストランがいくつも建ち並んでいる。

シッラの北側の町

 さて、我々が夕方の散歩中、町並みと海とネコの写真を撮るのに夢中になっていたときである。
 小さなバールから20歳くらいの男が顔を出して、英語であいさつをするではないか。話をすると、同年代の仲間とよくここに来るのだという。
 おもしろそうなので「入っていいか」と聞くと、「もちろん」という。
 小さな店のなかでは、若い男が3、4人コーヒーをのんでおしゃべりをしていた。店主も同世代の仲間らしい。

 我々が、マルティーニ・ロッソを注文して飲んでいる短い時間にも、若い男が入れ替わり立ち代わりやってくる。しかも、みんな、革のコートを着込んだり、ちょっとだけヘアースタイルが変わっていたり、難しそうな顔をしたりしている。
「ここは、この町のワルのたまり場なのね!」と妻がうれしそうに言う。
 確かに本人たちはちょっとワルぶっているのかもしれないが、大都会のそれとは違って、どことなく愛想があってみんなかわいい。
「日本人かい。オレは日本に行ったことはないけど、香港なら行ったよ」と賢そうな顔をしたやつが言う。
「へえー、君は中国語が話せるの?」と私が言ったら、店の中は大爆笑になってしまった。まじめに聞いたつもりなのに……。

 やがて、彼が店を出ようとしたとき、ちょっと思いついて質問してみた。
「この近くにおいしいレストランはある?」
「レストランならばいくらでもあるよ……あ、そうだ、友だちの家の店がいいよ」

 店の外に出た彼のあとを追うと、細い道には「ワル」が10数人も集まっているではないか。彼は、そのうちの1人を引っ張ってきた。
「こいつの店は洞窟になっているんだ。店は小さいけれど、海産物は最高だよ!」
 連れてこられたのは、濃いグレーのキザなロングコートを着込んだ愛想のない若者である。彼は「港の真ん前の店です」と静かにいいながら、店の名刺を手渡してくれた。

船を引き上げる

 その3時間後、我々が行ったそのレストランは内装も実に品がよく、それだけで料理に対する期待がふくらんだ。店先でにこやかに迎えてくれたのは、Tシャツを着た若い男。さっきの「ワル」にちょっと似ていたような気がした。

 テーブルにつくと私はカードを示し、「さっき、あなたの兄弟らしき人が紹介してくれたんですよ」と言った。
 すると、彼はさらに笑顔となり「ボクですよ!」

 妻はわかっていたらしい。「やっぱりワル仲間の間では、愛想のある笑顔なんてしていたらいけないのね」と新しい発見でもしたように喜んでいた。

 料理はすべて、シッラの港であがった海産物。
 前菜は、イワシ、太刀魚、シラス、ムール貝、小エビ、タコなどをさまざまに料理した盛り合わせ。プリーモは、ウニスパゲッティにエビのフジッリ。セコンドは、油が全然しつこくなくて素材が新鮮なミックスフライ。エビを頭から食べられたなんて、イタリアでは驚きである。

 それにしても、店のBGMがずっとルーチョ・バッティスティというのも、大変なこだわりようであると思われた。
 こうして、大満足のうちにシッラの夜は更けていったのである。

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

Pentaさん、ごめんなさい!
まとめレスをして、Pentaさんへのレスを抜かしていました。
いま、日本に帰ってぼんやりと眺めていて気づきました。
この埋め合わせはいずれ……掲示板ではいっぺんに3つぐらいレス付けちゃいますのでお許しください。

まとめレスですみません。
>もあさん
おっかないのは、ミラノ、ローマ、ナポリという大都市でしょう。田舎町は大丈夫です。
まあ、ごつい顔をしている人に、ジロリとにらまれますが、そこで負けずにニコリと微笑んで「ブォン・ジョルノ」と言えば、相手のごつい顔が、驚くほどほころびます。
>こもさん
その後もハプニングばかりが連続しています。ほとんどがプラスですけどね--って、私がそう解釈しているだけかも。
バッティスティは聞き込むとなかなかいいですよ。まあアルバムによって、いろいろありますが。
>すずめさん
のぼりましたよ! しかも、突端には灯台があって「ミリタリーゾーン」と書かれているのですが、わけあって入れてもらえました。
それについて、帰ってからまとめ編として書きますね。

高い所好きのすずめとしては(馬鹿だから?鳥だから?)
岩の上の要塞みたいな建物が気になります。
ココには登れるんでしょーか!?
ぜひぜひ、ここから海と街を見下ろしたい気が……

駄菓子 さん、どもども。

毎日、旅行を満喫していますね。(笑)

僕もイタリア語が出来ないので、列車がストで運休とかバスで代行なんてなると、
もうどうしようもなくなってしまいます。

また、人の言うことが分からないので、後を付いていくなんて絶対出来ません、、、(苦笑)

一昨日、昨日と、関西地方は上段の写真のように晴天で遠くの山並みも
くっきり見えていたので、毎日こんな天気ならいいのにと思ってしまいました。

昨日は晩飯抜きですかい!
で、今日は大当たり。
やっぱり狙って行くとダメなんですね。
イタリアでは他力本願が正解ですね。

Lucio BattisutiのCD、持ってます。私、、、(-_-;)
こんなん聞くの私だけだと思ってたけど
ちょっと自信つきました。

ご無沙汰してます。でも、このBlogは頻繁に拝見してますよぉ。

いいところみたいですね。写真を見るだけでもいきたくなってしまう。こういう文章を読むと、簡単な会話程度でもいいからイタリア語を覚えないとなぁと、いつも思います。思うだけで、いまだに「トイレはどこですか?」くらいしか覚えられないのだけど。

ローマより南って1度もいったことがないし、どうも「おっかない」印象が強くて(ローマでさえ道行く人の目が危険な光を放ってましたし)、ついついトスカーナから上にばかり行ってしまいますが、やはり南も行ってみたいです。魚おいしそうだし。

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著書

  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
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