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2005-11-25

トロペーアの玉ねぎ

 22日は、トロペーアからラメーツィア・テルメ(Lamezia Terme)に向かう。
 テルメに行くといっても、温泉に入りに行くわけではない。ラメーツィア・テルメの空港から妻が日本に帰るのである。
 妻が先に帰るからといって、私を非難する人がいるが(たとえば私の母)、それは誤りである。ふだんからダイビングのために休暇をたっぷりと取っている妻が悪いのである。

旧市街の突き当たり

 さて、それはさておき、トロペーア駅発は昼12時過ぎ。ホテルに荷物を預けて、午前中の散歩をすることにした。
 ストロンボリが見える展望台には、朝10時前というのに、近所のおやじたちが三々五々集まってきて、なにやら議論をしている。
 きょうはドイツ人がいないなと思ったら、昼前になってミニバスでどっと展望台に乗り付けてきた。

 狭い旧市街を、ぶらぶらと歩いていると、土産物屋の店先にある玉ねぎ(Cipolla/チポッラ)が目に入った。
 トロペーア産の紫色をした玉ねぎといえばイタリアでも有名らしいが、私たちにとっては、きのうの食事が初体験。はじめて口にして、その甘みに驚いたばかりである。
 もっとも、ミックスサラダに入っていた玉ねぎは、妻に大半を奪われてしまったが……。

 そんないわくつきの玉ねぎだが、その店にあったのは小玉ねぎ(Cipollina/チポッリーナ)で、ニンニクのような形をしているのが珍しかった。
 私たちが写真を撮っていると、近くでおしゃべりをしていた歯っ欠けの70代半ばと思われる親父さんがやってきて、店先のオレンジをちぎって「食べろ」と勧めてくれる。
 まあ、客寄せのパターンなのだが、旅の最終日にあたる妻にとっては、土産物を買うにはいいきっかけであった。

 すでに前日の夕方には、カラーブリア版「養命酒」である「リクイリーツィア(Liquirizia)」と地元のグラッパ、ジャム、乾燥ポルチーニ、乾燥トマト、唐辛子のたっぷり入った調味料を買い込んでいた。
 そして、結局この店では、チーズその他(あまり詳しく書くと、税関の手前、問題がありそうなので省略---ただし、さすがに野菜や果物、生ものは買っていない)。

 狭い店のなかで、親父といっしょに応対してくれたのは、25歳くらいのハンサムな男。愛想もよくて、日本に来たらモテそうである。
「どこから来たの? へえー、日本か。大きい国だよね」
「は?」
 もしかして、「グランデ」という形容詞を、「大きい」ではなく「偉大な」という意味で使ったのかとも思い、私はどう答えていいか、一瞬躊躇してしまった。
--でも、「偉大な国だよね」とは言わないだろうなあ。

 と思っていたら、歯っ欠けの親父さんが助け船を出してくれた。
「大きいのは中国(チーナ)だ」

トロペーア産の小玉ねぎ
 
 ハンサムな彼は、単に中国と日本の区別がつかなかったのである。もっとも、それだけなら、よくある話だが……。
「日本はいま夏なのかい、冬なのかい」と尋ねる。
「もうすぐ冬だよ。日本の北は北イタリアと同じくらい寒いし、日本の南は南イタリアの気温と同じくらいだよ」
 彼は、日本とイタリアが同じ北半球にあるのを、初めて知ったのであろう。

 あとは、「ジャッポーネ、ジャッポーネ(日本、日本)」と節をつけて、つぶやいている。でも、そこから歌が進まないところを見ると、日本についての情報がそれ以上ないに違いないと私はにらんだ。

「かなり勉強をサポっていたね、あいつは」
「愛想だけはいいのにねえ」
「ハンサムだけど、観光客相手の商売は大丈夫かなあ」
「息子がそんなじゃ、まだまだ親父さんは店を任せられないわねえ」

 土産物を抱えて、私たちは小さな土産物屋の行く末を、勝手に心配していたのであった。

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

こもさん、それならばトロペーアの玉ねぎは最高ですよ。
最近は、これに目をつけているイタリアレストランも多いとか。
うちの妻など、玉ねぎだけのサラダを注文するほどでしたし、ピッツァに乗せてあったのもウマかった!

ヨーロッパの世界地図って日本が一番端になるから、仕方ないかもしれませんね。

玉葱美味しそう、、

私、玉葱好きなんです。玉葱のサラダも好きだけど玉葱のフライとか天ぷらも。揚げ物をする時は必ず自分用に作るんです。

そうなんです。
しかも、最近は南イタリアの小さな町にも、中国人の洋品店ができているので、旅行者の少ない町は、東洋人=中国人と見られているみたい。
しかも、大きな荷物を持っているし……。
どの店も同じような装飾で、同じような品揃えなので、どこかに元締めがいるんでしょうね。

「どこから来たの?」
「日本から」
「ふーん。日本って中国のどこにあるの?」
「………」
てな会話したことあります(笑)

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