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2005-11-30

カタンザーロの「本トンスオラヤ」

 なぜカタンザーロ(カタンツァーロ)に泊まろうと思ったか--結果的にソヴェラートに泊まることになったのだが--カタンザーロの北10キロほどの山の上にある丘上都市ティリオーロ(Tiriolo)に行こうとしたからだ。

 ティリオーロへのバスは、カタンザーロのバスターミナルから1日4便出ていることは知っていた。早朝1便、昼間2便、夕方1便である。だが、正確な時間がわからない。
 以前は、運行するカラーブリア鉄道のホームページに全路線の時刻表が出ていたのだが、ダイヤ改正となった以後は更新されずにアクセスできない状態なのである。

丘上の大都会カタンザーロ

 というわけで、何時に出るかわからないので、早めにソヴェラートを出てカタンザーロに向かうことにした。ソヴェラートの宿には2泊するので、もちろん大荷物は置いたままである。

 バスターミナルに着いたのは、午前10時半ごろ。時刻表を見ると、午後の第1便が13時30分とわかり、切符を買ってから町をぶらぶらすることにした。
 カタンザーロの町歩きは前回(去年)もたっぷりやったので、今回の最大の目標は前回乗り損ねたケーブルカーに乗ることである。町の観光地図を穴のあくほど見つめて、乗り場を捜し当てることができた。

 ケーブルカーは、山の下にあるイタリア鉄道(旧イタリア国鉄)のカタンザーロ駅から、山の上にある都心を結ぶためのものだ。
 真新しい設備のケーブルカーは、これまでのケーブルカーの常識をくつがえすものであった。2両の車両が中間地点ですれ違うところは、日本のほとんどのケーブルカーと同じなのだが、日本ならば上り下りとも仲良く横にずれてすれ違うところ。ここでは、片方の線路が直線で、もう片方が曲線という不思議なすれ違いかたをしていた。

 また、拙著『全国フシギ乗り物ツアー』で、「ケーブルカーで途中駅を作るときは、中間点から上下対称に作られなければならないと書いた。そうしないと、片方が駅に停まっているときに、もう片方が駅でもないところで待っていなければならないからだ。
 だが、まさにカタンザーロではそうなっていた。つまり、上りの車両が中間駅に停まっている間、下りの車両は中途半端なところで待たされるのである。

 とまあ、こうした趣味的な話はさておいて……。
 このケーブルカーで、もっと大きな発見があった。
 ガラガラのケーブルカーで、私の前で発車を待っていた青年である。サングラスをかけて、イマ風を気取った感じ。ジャンパーには、日の丸にJAPANの文字、そしてなぜかオリンピックの五輪が縫いつけられている。
 そこまではいいのだが、何よりも不思議なのが、背中に書かれた文字である。写真でわかるように、左から読むと「本トンスオラヤ」、右から読んでも「ヤラオスント本」……どう考えても意味がわからない。

「本トンスオラヤ」

 本当ならば、「おお、あたしゃ日本人なんだよ。いいジャンパーを着ているね」とでも声をかけたいところなのだが……。
 「これはどういう意味?」と聞かれたら困るよなあ。絶対に聞かれるに違いない。そのときにどう答えるべきか。「意味がない」「むちゃくちゃ」なんて言って、純情な青少年の心を傷つけてもいけないし。
 「これを着ている人はハンサムです」っていう意味だよってウソ言って、あとでバレてもいけないし。

 なんか、彼ももじもじしていて、私を気にしているようだったが、中国人か日本人かもわからないので、話しかけることができなかったのだろう。
 向かい合わせのケーブルカーの席で、なんとも気まずいひとときを過ごしたのであった。

 ちなみに、これはポーズをとってもらったような写真だが、そうではない。発車待ちでぶらぶらしているときに隠し撮ったものなのである。

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コメント

似たようなカタカナの間違いかなと思ったけれど、やっぱり想像つきませんよね。
カラブレーゼは、確かに愛想のいい人とない人の落差が激しい感じがしますね。
素朴で、外国人(とくに東洋人)慣れしていない印象はあります。私の母方の先祖である東北人に似てるかな?
きょうは、ロークリで最終バスに乗り遅れて、やむなくタクシーに乗りました。
もちろん田舎だからメーターなしなんですが、これがいいおじさんで、30ユーロを覚悟していたら、なんと11ユーロ(12ユーロのところ、友だち価格で1ユーロおまけ)。
こんなんだったら、必死にバスの時刻を探さなくて、このおじさんを半日でも借り切ればよかった。

 「本トンスオラヤ」。うぅ〜む。一文字か二文字を何かに入れ替えたとしても、この謎はとけませんな。昔から香港なんかでは、一文字間違えた笑える日本語Tシャツが売られてましたけどね。
 いつかイタリアで見かけたオニイチャン、頸の後ろに入れてたタトゥー、「違」。シャンリィさんと、「誰かと口論するときとかに『違〜う!』とか言って、あれ見せるのかね」と大笑いしたことが。あれも教えてやんない方が親切だったと思いましょう。
 それにしても足の向くまま気の向くまま、怪しげなカラブレーゼにもめげず、順調に旅を続けてらっしゃるようで、何よりです。カラブレーゼって、素朴でいい人も多いけど、プリエーゼより「油断ならん」イメージが。
 丘上都市で、バスめがけて転がる…じゃない、走る駄菓子さんを想像しつつ、楽しみに報告をお待ちしてます。

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著書

  • 辞書には載っていない⁉ 日本語[ペンネーム](青春出版社)
  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
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