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著書

  • 『ひたすら眺めていたシベリア鉄道』(私家版)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)

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2005-05-24

金沢・観光スポットからはずれて

 金沢の隠れた町歩きスポットは、野町周辺である。
 観光客は、兼六園やひがし茶屋街に足を向けるが、もう少しディープさを求めるならば、このあたりがいい。
 すでに、かなりの家が建て直されているが、どことなく昔ながらの雰囲気が残っている。
 そして、東京の下町に生まれ育った私にとって、ほどよいうらぶれ方が、なんとなく性に合う。一方的な思い込みかもしれないけど。

バスを待つ人

 昨年、金沢に来たときは、駅前のホテルに宿泊。夕食の場を探して、武蔵が辻、香林坊をさまよい歩き、犀川大橋(この橋も気に入っている)を渡って、とうとう野町まで歩いてしまった。
 一人で入れて、気取っていなくて、もちろん酒が飲めて、食べ物もそれなりにあって、高くなさそうで、落ち着けそうな店を探していたら、そうなってしまったのだ。
 で、ようやく入った店は、けっして、しゃれてはない、どちらかというと大衆飲み屋。でも、奥さんの笑顔が素敵で、家庭料理のうまさが印象的だった。
 カウンターに座り、ほかのお客さんとも打ち解けることができたのは、何よりの収穫であった。

 今回も、その店で夕食をとることに決め、夜の9時近くに、どきどきしながらのれんをくぐった。
 すると、素敵な笑顔は健在。店の中が少しきれいになったのに驚いた。

浅野川にかかる橋

 いろいろと話をしているうちに、こんな話題になった。
「この店には、金沢に路面電車を引こうという人が来たり、地元の野町を盛り上げようとして雑誌をつくっている人が来たりするんですよ」
「ふうーん」と思っていたら、やがてその当人たちが男2人連れでやってきた。
「あら、まさか、きょういらっしゃるとは! いま、ちょうど噂をしていたんですよ」
 
 あとは、ひたすら話が盛り上がるのみ。
 とくに印象に残ったのは、私よりも5歳ほど上と思われる男性のこの言葉。
「金沢の人間は、前田家に去勢されてしまったんだ。そうだろう。どこに行っても百万石の前田、前田。でも、あれは尾張からやってきた支配者じゃないか。それに引き換え、その前の一向一揆のことなんか、見向きもされやしない」
 なるほど、そりゃそうだ。
 これまでは、ちょっぴり気取っているように思えた金沢の町だったが、こんな人たちがいることを知って、だいぶ印象が変わってきたような気がする。
 そして、店を出たのは12時過ぎ。
 すでにバスはなく、駅前のホテルまでの道のりを、暑くなった頭を冷しながら、約30分かけてもどった私であった。

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