フィレンツェの安下宿巡礼
フィレンツェ滞在中に、どうしても巡礼しなければならない場所が一つあった。それは、かの迷作「駄菓子のイタリア無駄話」の舞台となった安下宿である。
安下宿は、旧市街の中心部近く、ドゥオーモの北にある。住所は、Via degli Alfani(アルファーニ通り)36。ロンドンのベーカー街221bほど有名ではないが、私にとって青春の1ページが刻まれた建物である。そして、そこの4階に私の部屋があった。
まあ、8年前の訪問で、世話になったおばさんはもう隠居したことがわかっていたから、今回は建物の外から拝むだけにした。そして、ここでも、妻にくどくどと昔話をした私である。
当時は、長期滞在の人にしか部屋を貸していなかったが、最近では一般の旅行者にも部屋を提供しているとのこと。インターネットにホームページがあるのには驚いた。
建物の外には、1つ星のホテルを示すプレートが打ちつけてある。もし、フィレンツェに行って、ほかに何もすることがなくなったら(そんなことはあるはずないが)、ぜひ訪ねていただきたい。場所は、ダヴィデ像のあるアカデミア美術館の東。中心部に近いわりには、普段着の町の人の生活が見られるはずだ。
さて、昔を思い出してしみじみと歩いていると、コンサートツアーのポスターが目に入った。イタリアの歌手のポスターは、シンプルだけどなかなかいい写真を使っているのが多い。この女性歌手は、1980年代なかばにデビューしたフィオレッラ・マンノイア。知っている名前があると、ちょっとうれしくなる。
「おお、元気にやっているじゃないか」なんて、まるで昔の顔見知りみたい。
もっとも、イタリアの歌手は、息の長い人が多い。ミーナ、アドリアーノ・チェレンターノ、マッシモ・ラニエーリなんていう大御所が、まだ第一線で活躍している。ミーナなんて、1959年に「月影のナポリ」(すごい邦題……)でデビューしたし、「2万4000回のキッス」で有名になったチェレンターノはさらにその前から歌っているから驚きである。
日本にたとえれば、美空ひばりや三田明あたりが、若者にまじっていまでも元気に歌っているようなものかな、なんて考えた。
だが、ホテルでイタリアのテレビを見ていて気がついた。歌番組がほとんどないのだ。代わりによく目にしたのは、視聴者参加の一攫千金番組や、何やら騒がしいだけの番組。これにはちょっとがっかりした。
昔のことばかり言うのは老化のはじまりだというが、以前はもっといい歌の番組があった。もっとも、よく考えてみれば、日本だって同じようなものである。
そうそう、日本と同じといえば、ニュース番組で、へそだしルックの是非を取り上げていたっけ。しかも、ミラノでインタビューを受けているへそ出しの女の子のしゃべり方(もちろんイタリア語)が、まるで今どきの渋谷のコギャル(死語?)とそっくりなのには笑ってしまった。
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